●遭難した特級操縦士 続き
お土産が増えすぎたのがきつかったが、やっとのことで街らしき入口まで来た。門の前には鉄の帽子に鉄の服を着て槍を手に持ってる人間がいる。
この惑星も人なんだ。手が10本とか出てないし普通だ。しかし、重くないのかな、あのファションは、流行なのかな?実は力持ちなのかもしれない……なんにせよ、やっと話が出来る事が嬉しい。
近くに来ると驚愕していて威嚇の為に槍を向けてくる。
「なっなんだお前は、黒い鎧で何の用事で来た」
モニターに恐怖と出てる、確かに武器を持ってるから怪しまれるか、鎧って何だろ?アーマーの略称かな。やっと会話が出来る。
「旅の途中でここに寄りました。駄目でしょうか」
「通行書を出せ」
「通行書?ないですね。どうしたらいいですか」
「持ってないのなら作って貰うぞ、こっちに来い、変な荷車は端に寄せて置いとけ」
「分かりました、ちょっと待っててください」
端に寄せてサバイバルバッグを入れトレーラーにシールドをかけて呼ばれた部屋に向かう。
「武器を壁に置いてここに座れ」
マルチ武器だけで良いかな、外して置く。木の丸椅子なのだがこのユニットでは小さいが座るしかない。ギシギシと音がして壊れそうだ。
「名前は?」
「タク《岸 卓也》ヤ・キシ」
「なっ何騎士だと。何処の所属だ」
飛び上がる位の速さで立ち上がった。
「?所属はないですが、強いて言えばハルトミオン艦所属です」
知っているのかな?無理だろうけど……
「ハルトミオンカン?聞いたことないぞ、そんな国」
「国ではなくハルトミオン艦です」
「?知らんぞ、まぁいい」
あっ放置した。座ってしまったし何だろうこの微妙なやり取りは。
「そこの水晶に手を乗せろ」
乗せると青く光りだす。
「犯罪は犯していないみたいだな」
横目で確認していた。何かの儀式か?判別してるようだけど、モニターにも水晶としか出てこないので分からない。光るのはどういうシステムなのだろう?
「歳はいくつだ」
困った質問だな……約250だとはわかるが細かくは数えていない、仕方ない育てた体でするか。
「21です」
「顔を見せろ」
ボディアーマーの頭だけ収納する
「あれ、兜は何処に置いた?老けた顔だな、本当に21か」
ほっとけ、どうせユニットだ!もう、丁寧に言う必要ないな。
「仕事は騎士か?商人?剣士?」
これも困る質問だな。操縦士といってもここの文化では船はなさそうだし。いや、あるのかな?今は分らん。
三つの内容から戦闘用ユニットに適用されるのは剣士でいいか。キシは解らない。商人は間違いなくないな。
「剣士」
「これがお前の証明書だ、なくすなよ」
「分った」
頭のアーマーを展開する。
「うお、いつの間に被った、まぁいい、銀貨1枚な」
「銀貨?」
「おいおい、お金ないのか。困ったものだ何か売るものあるのなら今回はそれでも良いぞ
」
「肉とかは良いのか?」
「いいぞ、持っているんだな」
「ああ、さっきのトレーラーに乗せてる」
「トレーラー?」
「こっちで言う荷車か」
「あ~あれか、見せてもらうぞ」
剣を背中に装備して入口に連れて行く。
「こんなものでいいか分からないが食べられるそうだ」
袋を開けていくとその男が固まっていた。周囲の人も腰を抜かしたり逃げ出す人までいる。ちょっとした騒動になっていた。
「どうしたんだ?」
「どうしたもこうしたも無いだろう!これ全部お前が退治したのか。嘘だろガセ猪がいるじゃないか、それとガセサーペントが7匹!ブラックベアーにオークが5体だと、一人では絶対無理だ。ガセの森に入ってたのか……他に仲間は?」
「私一人だが?もしかして売れないのか?」
「いや、逆だ、欲しい奴らは大勢いる。一人で狩ったのか……信じられない。まっ、良いお金にはなるぞ」
「何処へ行けば売れるのだ、良かったら案内してくれるか?」
「個個に商店に売れば高値になるが面倒ならギルドが平均の価格で買ってくれる。どっちにする」
「……面倒だからギルドというところでお願いする」
「なら、近くだから行こう」
「迷惑かけるな。よろしくお願いするよ」
トレーラーを引いていく。この惑星の人はこのユニットより頭2つ分は小さいのでかなり目立っている上にトレーラーを引いているのでほぼ全員こっちを見ている。
少し歩いた建物に男が入っていった。そして連れだって男と女が出てきた。トレーラーを止めてさっき入れたものを並べる。
「おいおいおい、嘘かと思ったらすごいな、本当だよ久々の獲物ばかりだ。これ一人で狩るとはすごいなお前」
周りはさっきの騒ぎと同じになっている。
「で、こんなものを買って貰えるのか?」
「買う!いや買わしてくれ。皆の食事と装備が贅沢になるぞ。おい計算するから裏に持って来てくれ」
「ああ、分かったが先にこの人に銀貨1枚渡して貰えるか?」
「わかった、おいトネーア渡してやってくれ」
「はい」
「トネーアさんゴメンね、助かります」
「いえいえ、良いですよ。黒の方」
走って建物の中に入っていく。トレーラーを移動していくと門番が言ってくる
「俺はここまでで帰るぞ」
「ありがとう」
建物の裏は倉庫みたいで人が沢山集まっていた。皆が驚愕と喜びと興味で興奮して叫んでいた。
倉庫に並べていくと「おお、すごい」とかいろいろ見たり触ったりしている。トレーラーを一時保管してもらい建物の中で待たされた。椅子に座ってるとここでもやはり目立っていた。
「すげーフルプレートだとよ、どこかのお貴族様か」
「大きいな、化け物が入っているんじゃないか」
「大きな剣だな切れるのか?それより先に振れるのか」
大体そんな話をしている。しかし、文化はやはり低レベルだな。建物は煉瓦みたいだし服装も大した物は来ていない。
辺りを見ていたら騒ぎが起こった。
「おい。治癒魔法師はいないか」
4人組の男女が女性を一人担いでくる。女性のお腹から血が流れだしていた。15か16歳かな、かなり若い。久しぶりに少女をみた、艦内には大人の女性ユニットだけだったから……
「いないのか、誰か助けてくれ」
周りの動きはなく遠巻きに眺めているだけだった。
「お願いだ、誰か……誰か助けてくれ!死んでしまうよ……」
叫んでる男が涙を流しながら叫んでいる。
バッグを担いで近寄っていく。
「俺が見てみるが良いか?」
「助けてくれ、お願いだ。小鬼に切られて死にそうなんだ」
ボディアーマーに触りながら必死の形相で頼んできた。
「了解、そこの長椅子に寝かしてくれ」
サバイバルナイフで服を斬り傷口を出す。剣か何かで少し斜めに横切りされてるみたいだ。
「君と彼女、奇麗な水と布を用意して」
バッグから治療用の装備を出す。麻酔の薬をピストル型注射器にセットする。傷の周りに打ち込む。部分麻酔をして小型強力殺菌灯で水を奇麗にして血と汚れを除けていく。内臓は腸にキズがあると場所と深さをモニターで教えてくれる。傷口にも殺菌灯を当て次に細胞促進のライトを腸の傷だけに当てるとどんどんとふさがって完治する。血がまだ出てるので殺菌灯で布と傷に当てる。
「彼女手伝いお願い、傷口の下から押し上げて」
「は、はい」
私は上から押して傷口を元あった場所に戻し合わせてホッチキスで固定していく。細胞促進のライトを傷口にゆっくり当て完治させていき、ホッチキスの針を除きもう一度ライトで治しまた傷口が開かないようにテープを張る。
ピストルの薬を抗生物質に変えて腕に打ち込み終了。本人も痛みが消えたようで安らかに眠っていた。
「激しい運動などしないで安静にして5日後にこのテープを剥がしてください。それとこの粒を1日2個飲ませてあげてくださいね、食べ物は栄養のある柔らかいのが良いでしょう」
薬を10個分けてあげる。何が起こったか分からず呆けていた。
「分かりましたか」
「ハッ、有難うございます。本当にありがとう」
「じゃ私も用事が来たので行きます。お大事に」
カウンターの向こうでさっきの男とトネーアさんが呆然と見ていた。
「あの、治療費はいくらでしょう?」
「いや、たいした事はしてないからいいよ」
「お名前だけでも」
「本当に良いですから彼女を静かな所で早く寝かせてあげてください」
カウンターに近寄って。
「お待たせしました」
「良いのかい?」
「傷は塞ぎましたからもう大丈夫でしょう。こっちも進めましょう」
「なら、こっちの部屋に来てくれ」
カウンターから入って奥の部屋へ案内される。
「すごいな君は、医者なのかい?」
「えっ、違いますよ。知識はありますが医者じゃないです。もしかして治したら罰があるのですか」
「いや、そんな物聞いたことない。むしろ感謝されるんじゃないかな、さっきの子のように」
「だったらよかったです」
「今日は驚きばかりだよ。あ、名乗ってなかったな、俺はここの冒険者ギルド長のイシュカ・ベウァシスという、よろしくな。こっちはトアーネ・ベウァシスだ」
「親子だったのですね。私はタクヤ・キシです」
「ほう、騎士様だったのか」
「?タクヤで良いですよ」
「じゃそうさせてもらう。でタクヤ、これが今日の買取分だ、受け取ってくれ」
「金貨26枚ですよ。内訳要りますか?」
「トアーネさん、いらないです。信用してます」
高いのか安いのか理解不能だし、流通のお金も理解できていない。こんな時聞いても仕方ない。
「即決か、すごい。いつもは高くしろとか言われるんだがな、助かるよ。気には入ったが騎士様か……」
「あの~キシサマとは?さっきの門番の人にも不思議な会話になったのです?何か違う受け取り方をしてる様な感じでしたが……」
「えっ、国を守る防衛役の騎士だろう?」
騎士って軍隊の事か、道理で微妙になるわけだ。
「いえ、名前のキシであって役職ではないのですが」
「なんだ、紛らわしい名前だな。てっきり騎士だと思ったよ。だったら冒険者にならないか。この小さな町では実力者がいないのだ。階級も俺が付けられる最高を用意する。どうだ?やってみないか」
「冒険者とは何を冒険するのですか?探索でしょうか」
「なんだ、知らないのか。冒険者とはダンジョンとか平原の魔物、動物を戦って狩って来たり、危険な護衛、届け物をする心躍る職業だ。それには依頼者がいて、難易度によってお金が沢山貰える職業だよ。どうだ良いだろう人助けにもなるし感謝してくれるぞ」
この惑星でのお金は必要だな。
「了解、では、冒険者になります。どうすれば良いです」
「この紙に書いてくれ」
文字も思ったことが翻訳機を通して変換される。それをなぞって書いていく。
「これで良いですか」
「おう、剣士か、なるほどな。いいぞ、じゃタクヤはA級だ。今俺が与えらる最高階級だ。どんどん良い仕事回すから、これからよろしくな。で、これが証明するものだから首から下げてくれ」
長方形の金属で銀色だった。上はS級で金色でSS級は青紫色らしい。SS級は今いないらしい。私には興味がないが熱心に言ってくるのが煩わしいかぎりだ。
「で、何処に泊まってるのだ」
「今日ここに来たばかりでまだ決まってませんが?」
「なら、ギルドが推薦してる宿に泊まれ。そのほうが連絡つきやすいからそうしろ。明日は休みにして明後日からここに来てくれたらいい、それまでに仕事探しておく。もちろん、やりたいことがあればそちらを優先してもらっても良い」
「了解」
宿がある場所を説明通りいくと煉瓦の建物で奇麗にしてる。カウンターがあり男が中で座っていた。
「良いですか?イシュカさんからここに泊まれと紹介されたんですが」
「ギルド長から?おおA級か、分かった。ワシはガログという、部屋は2階の一番奥の部屋だ」
「了解、タクヤといいます」
「タクヤか、体大きいな。食事が必要なら早めに言ってくれよ、用意するから、じゃ鍵な」
鍵を受け取って部屋へいく。艦の部屋より少し広い位か、問題はベッドが奇麗でない、一度機体に帰ってエアーベッドを持ってきた方がよさそうだ。荷物を部屋の片隅に置きシールドを張って取られないように固定する。
宿を出てギルドの倉庫へ行ってトレーラーを持ち出す。門まで来て外に置きたいので一旦出る事を伝え離れたとこまで来て光学迷彩でトレーラーを隠す。
ボディアーマーの光学迷彩も展開して機体まで走ったり飛んだり。また、襲われたら面倒だったので使ったが正解だった。沢山の大型生物と出会うが向こうは見えていないので素通りする。
このユニットとボディアーマーは優秀で走るのも早いし飛ぶとかなりの距離を稼げたので歩いて数日の所を2時間で機体に着く。
船に戻って中型ドローンに乗りトレーラーを取りに戻りワイヤーで釣り上げ機体を隠してる崖下に隠して置いておく。
機体に入るとロボットがあちこちでカチカチと音を出しながら直している。コンパクトになってるエアーベッド、寝具、タオルを持ち出しボディソープ、シャンプー、歯磨きなどのアメニティ類をバッグに詰め込む。このアメニティの品は機体で製造出来ているので販売しなければ半永久的に使える。固形の食料もおなじである。
固形食糧も補充してドローンに戻り街まで帰る。ドローンを木の上に光学迷彩で隠して落ちないようにワイヤーで固定して置いた。
街に入ってからアーマーの光学迷彩を解き宿まで戻る。部屋に戻り元あるベッドを壁に立てかけてエアーベッドと寝具を展開、セミダブル位の大きさで横たわると快適であった。
ガログにお湯を分けてもらい庭で簡易シャワーを展開してボディアーマーを収納しユニットを洗う。外は当然光学迷彩で見えなくしている。
終わってから、ボディアーマーを展開し水を分けてもらい部屋に行き殺菌灯で消毒して小型コンロでお湯を沸かす。スープとコーヒーを作り固形食糧と一緒に食事を済ます。
ボディアーマーを今度は脱いで置くと内部を殺菌消毒され匂いと汚れも自動で落とされる。今は何かあれば対応できるようにボクサーパンツのみ付けているが、艦内だったときは全裸で過ごしていた。皆ユニットだから数百年生きてると見飽きているので男も女も寝るときは普通全裸である。その方が気楽だしね。用事で部屋に入っても裸で対応していたしこちらも驚かない。
明日からギルド長からお願いされるのはいいが、宇宙法はどうだったかな?たしかその惑星の生態系を変える戦闘は出来ないだったか。だだし、攻撃された場合はその内容に当てはまらない、だったような……詳しくは船に戻って確認しないといけないな。
次戻った時に時間があったら確認しよう。今日は寝るか、ユニットを休ませよう。
有難うございます