空 『詩』
何者にも汚されないその青に私は心を奪われた
小さい時、親が喧嘩しているのを見た
それはとても醜いもので私は自分を殺し2人を繋ぎとめた
時が流れ、友達ができた
その友達は私の唯一心の許せる友人を虐めた
私は幼かった為、1人になるのが怖かった
だから自分を殺し、視界を黒く塗りつぶした
さらに時が流れた
私は大人になり、社会という波に身を委ねた
自身の道があるのにも関わらず、ただ流れのままに進んだ
その流れは、多くの人が波を作り出していることを知った
そして、逆らうものを溺れさせた
苦しくも、もがき、這い上がろうとした
その姿を波は笑い、さらに勢いを増した
私は下ばかりを見て歩く
下には自由があり、そこが全てだと言い聞かせた
ある時、風船を持つ小さい子供が目の前に現れた
今となっては分かるが、あの子は意図的に目の前で風船を手放していたのだと思う
私は慌てて掴もうと手を伸ばす
その時、空を見た
懐かしい
子供の時以来だった
下ばかり見て生きてきた、自分の心に鎖を巻き深い海に沈めた私は、どこまでも自由で、自分の存在を知っている空に心を奪われた
赤い風船は空に飲まれていき、やがてその姿を青に変えた
ありがとうと伝えたく、目線を下に移す
そこに子供の姿はなかった
私は、どんなに水を掛けられようとも汚されない子供の頃の自分を、空と重ね、ふと笑った
私にも確かに空の姿をした時があったと思うと、心の鎖が緩む気がした
その鎖に繋がれていた心は、あの風船のようにもう一度空に昇っていった