プロローグ
「兄さん!」
金髪の少女が、漆黒の衣裳に身を包んだ男性に呼びかける。彼は不敵に笑いながら、妹を見た。彼女は純白の鎧を纏い、長剣を構えている。
「妹よ、我がものとなる決心がついたか?」
兄の言葉に彼女は大きく首を横に振った。
「私たちは兄妹よ、そんなことできないわ」
彼女の瑠璃色の瞳が潤む。
「それに、そんなこと言う兄さんは嫌いよ」
「妹よ、それはあんまりじゃないか?」
兄は精神的に傷ついたようだ。
「我はお前を、これほどまでに欲していると言うのに!」
男性が一気に間合いを詰める。彼女は反射的に長剣を横に払ったが、切っ先は美しい孤を描いて空を斬っただけだった。
「妹よ、お前の力では我を止めることはできぬ!」
掴みかかろうとした彼ではあったが、不意に後ろへ跳びずさる。彼女の目の前を高速で何かが通り過ぎた。
「やれやれ、邪魔者が到着したようだな」
男性の視線の先には弓弦を引き絞る人物がいた。その後ろから数人の男女が駆けつけて来る。
「妹との感動の再会も台無しだな」
「兄さん……、必ず元に戻してあげるから」
彼女の目尻から滴が流れ落ちる。
どうして、こうなってしまったのだろう。
もう、あの頃には戻れないのだろうか。
彼女の脳裡には幸せだったあの頃が回想されていた。
声の想定
妹 上田麗奈さん
兄 松岡禎丞さん




