表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/635

闇に堕ちた勇者

 その男は黒い気を纏い、シトラス達を見つめた。

 いつもの感じと違う。

 その身から感じる雰囲気というか、迫力というか。

 瞳も何処か虚ろ。

 剣を抜いた。


「が、ガルディス様……」

「この男は、もう一人の勇者? あちゃー。完全に闇に堕ちたね」

「ど、どうすればいいのです?」


 構わない。

 ガルディスはルナンを狙った。

 グラニーの作った土の壁が、ルナンを守る。

 シトラスは戸惑いながらも剣を構えた。


「ガルディス!」


 手が震えてる。

 目の前にいるのは、兄さんなんだ。

 けど、闇に支配されているなら。


「フッ」


 ガルディスが不敵に笑った。

 シトラスが反応する暇もなく。


「衝雷斬!」

「うわあああああ!」

「きゃあああああっ!」


 それはシトラスだけでなく、その場にいた全員を吹き飛ばした。

 女とは戦わないと言っていたガルディスが、ジェニファー、ティナ、ルナンを傷つけた。

 グラニーはサッと立ち上がる。


「シトラス。残念だけどあたちの見立てだと、ガルディスは心を奪われているかな」

「心を? そんな……。どうすれば……」

「あんたはどうしたいの?」

「えっ?」

「あんたはどうしたいのって聞いてるの。心を奪われたって、元に戻らない訳じゃないから」

「俺は……」


 シトラスは一瞬下を向き拳をギュッと握ると、じっとグラニーを見つめた。

 眼差しから本気さが伝わる。


「俺は、兄さんを助けたい。もう二度と、魔王の下に行かせたくない!」


 その答えを聞いてグラニーはニコッと笑った。


「分かった。ガルディスがさらわれたのは、あたちが護れなかったから。あたちも責任取るよ。ただし……」

「ん?」

「オーブをしっかり持ってるの。落としたりしたら、承知しないんだから」

「はあ」


 急に表情変えて、何を言うかと思ったら、オーブの事か。

 確かにオーブも大事だけど、こういう場合俺を気遣って欲しかったな。

 と、言葉に出さないけどシトラスは思った。


「シトラス。あたし達も手伝うよ」

「わたくしも、応援させて頂きます」

「無論オレも応援、じゃなくて手を貸すぜ」


 さすがは仲間達。

 ティナだけは、暗い顔をしていたが。


「ティナさん……」

「ああシトラス。ガルディスは大事な人だもの。アタシもやるよ」

「はい」


 ガルディスに剣を向ける。

 ジェニファーが仕掛けた。


「サンダーボム!」


 ガルディスは簡単に避け、突っ込む。

 ロックが放った矢の雨も、剣で弾いた。


「なっ……!」

「パナ、行って!」


 ティナが召喚した聖獣。

 魔王軍の中では、レアモンスターと呼ばれていた事もあり、レベルは高いだろう。

 今のガルディスを止めるには、これ位しないと。

 だが、その炎さえも、


「はっ!」


 気合い一閃。闘気でかき消された。

 さらにその闘気を剣に溜め放つ。

 波動だ。

 シトラス達は壁にぶつかる。


「うう……」


 強い。

 勇者の力に闇の力が交わるとこうなるのか。

 それでも、負ける訳にはいかない。

 本当の笑顔を、取り戻す為に。

 ルナンがガルディスに懇願する。


「ガルディス様。お止め下さいませ! あなたはこのような事をなさる方ではございません。わたくしを助けて下さった時、わたくしは、あなたの優しさに触れました。その優しさは、今でもあなたの中に眠っているはずです。闘の力に、負けないで下さい!」


 そのルナンの言葉もガルディスには届かない。

 蹴りを入れられ、床に倒される。

 しかし、ルナンは食い下がった。


「ガルディス様! わたくしは何度傷つけられても構いません。あなたの心を、取り戻すまでは。わたくしは知っています。あなたは魔王軍の使者のフリをなさって、本当はご主人様を鍛えていた事を。それはいつか勇者として共に戦える事を、願っていたのではないですか? それだけではありません。あなたは密かにアルズベルト村へ行かれて、ご主人様の成長を見守っていた。サララ様にお会いする目的もあったのでしょうが、それはご主人様が心配だったから。そうですよね?」

「……黙れ」

「いいえ、わたくしは黙りません!」


 ルナンはキッとガルディスを睨んだ。

 ガルディスは唇を噛む。


「ガルディス様。思い出して下さいませ! お願いします」

「ルナン……」


 彼女の頑張りに、シトラス達は圧倒されていた。

 グラニーが言う。


「シトラス。あの猫ちゃん頑張ってるね。凄いね」

「はい、俺も行きます!」

「待って、猫ちゃん!」


 シトラスがガルディスに突進しようとした途端、ガルディスがルナンを捉えた。

 服が破れ、肩を斬られる。


「きゃあああああ!」

「ルナン!」


 キックで後ろに飛ばされる。

 ロックが受け止めた。

 ルナンは青い顔でうめく。


「しっかりしろ、ルナン!」

「あたしが回復するわ!」


 ジェニファーがすかさずキュアリーをかけた。

 ティナとシトラスはガルディスと対峙する。


「ガルディス、あなた……」

「兄さん……」


 何も言わず、剣を構える。

 ティナがタリスマンに祈った後、聖獣を呼び出す。

 光の聖獣ユニー。

 その光に当てられて、ガルディスが怯んだ。


「う……」

「今だ!」


 シトラスが、空中に舞った。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ