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楽しき船旅

 日差しが照らす甲板の上。

 風を髪に受けながらティナが説明する。

 行き先が分からない為、船は一旦止まっていた。


「アタシがセントミディアで過ごした時間は、確か5才までだった。だから、僅かな記憶しかないけど、島だったのは覚えてる。海を隔てて見てた大陸が、横に大きくて。子供だから大きく見えたのかもしれないけど。あんまり、その大陸と距離が離れていなかったのかな。城があったよ。たくさんの建物も見えた。大人達が、あれは街だと教えてくれた。今考えれば、城下町なんだよね。それ」

「そうですか。城があったんですか。それって……」

「グリンズム王国じゃないよ。あそこは何度か行ってる。アタシ達は、もっと遠くから来たんだ」

「う〜ん。城……、あっ!」


 シトラスがピーンと来た。

 もしかしたら。


「ティナさん、その城って何色でした?」

「色? そうだねぇ、白だったような気がするけど」

「白い城。で城下町。ティナさん、川みたいなのは見えました?」

「さぁ、そこまでは……」

「おい、シトラス。それはあそこか?」

「ああ。多分。ティナさん、それはドグアック大陸だと思います」

「ドグアック? そうだ思い出した。サララのお父さんが言ってたっけ。その城を南に行くと、自分達の村があるって。アタシは、行った事なかったけど」


 シトラス、ロック、ジェニファーの中で何かが繋がった。


「間違いないです! それはアルズベルト。あたし達の村です!」

「えっ、そうなの? だからサララはよく船で遊びに来てたんだね。でも……」


 ティナはシトラスの顔を見た。

 彼女の表情から、シトラスは何を言おうとしているのかを察した。


「ティナさん。俺は大丈夫ですよ。村の人達とわかり合えましたし、もうわだかまりは無いですから」

「そう。それならいいんだ。なら、サララの墓参りもできるね」

「えっ、墓参り!?」

「そうですよご主人様。ついでという物もございます。最後のオーブを手に入れる前に、ご報告なさったらいかがですか?」

「う〜ん、それは……。ジェニファーとロックが、何て言うかな」


 ジェニファーとロックは考える。


「あたしは、まあ、無理に帰らなくてもいいかなと。う〜ん、けど」

「オレは……。分からない。今さらって気持ちもあるし、帰ってもいいかなって気持ちもある」

「お二人とも、戻ったら決意が揺らぐという思いがあるのかもしれませんね。ここは、ご主人様がはっきり決められた方がいいのでは」

「そうだな。うん、まだ着かないし、近くになったら決めよう!」


 ガクッ。


 ルナンは少し呆れながらも、ティナに耳打ちした。


「はっきりなさいませんね。けれどティナ様。ここはいつでもいいように、準備だけはしておいた方が良いかもしれませんね」

「そうだね。仕方ないよ。悩む気持ちも分かる。その分、アタシ達がカバーしよう」

「はい」


 こうして、船はドグアック大陸周辺に向けて進路を進めた。

 到着するまでには、あと何日か懸かるだろう。

 せめて、この船旅を楽しもう。

 天気がいいので、ルナンとジェニファーは洗濯物を干す事にした。シトラスとロックは甲板の掃除。ティナは、疲れたみんなの為にコーヒーを淹れて来た。

 ちょっと一休み。

 メイドをやっていたせいか、ルナンは手際がいい。裁縫や掃除もそつなくこなす。ただ、料理の腕はティナの方が上手だった。


 それから二日後。

 船はグリンズム王国を通りすぎた。

 予定ではあと一日余りで、セントミディアに着くはずだ。

 今日は天気が雲っている。

 いや、雲っているというより、雨が降りそうだ。

 空を確認していたルナンが言う。


「ご主人様。雲行きが怪しくなって参りました。これは、急いだ方がよろしいのでは?」

「そうだね。スピードを上げるか」

「待ってシトラス。波が荒れて来た」


 海を見ていたジェニファー。

 風が強く吹き始め、波が高くなっている。


「これは……」


 不安な顔をするティナ。

 てきぱきと指示を出す。


「ヤバいよシトラス。嵐が来る。ロック、風に飛ばされる前に帆を畳んで。シトラス、舵をしっかり握ってて。ジェニファーとルナンは何かに掴まって」


 ザバン。


 船が大きく揺れる。

 体が弾かれそうだ。

 激しい雨と風の中、必死に何かに掴まって耐える。


「ううう」


 普段体力に自信があっても、この揺れではさすがに気持ち悪くなりそうだ。

 その時、


「……!!」


 船体を包み込むほどの巨大な波が、彼らを飲み込んだ。

 転覆するっ。

 そう思いながら、シトラス達は意識を失った。


















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