VSテュッティ
「さあ、勇者シトラス! その炎のオーブをぼくに渡せ」
テュッティは、手を伸ばし叫んだ。
シトラスは少し呆れ顔で呟く。
「いや、オーブを持っているのは俺じゃないし、こっちの聖霊だから……」
「いいから、早く渡せ!」
テュッティは一瞬、言葉に詰まった。
が、尚も迫る。
ならば、
「しょうがないな。ほらよ」
シトラスはテュッティにある物を握らせた。
テュッティは頬にスリスリする。
「お〜。これが噂のオーブか。何というつやつやで肌触りもいい。って、こんな物いるか〜! これは単なるストーンモンスターの石じゃないか! しかも、白色の」
床に投げつける。
シトラスは砂を落とし拾った。
「あ〜あ、もったいないなあ。これだってコインになるんだぞ。コインに」
「ぼくが欲しいのはコインでも石でも無い! オーブだ!」
「でも、お前だってノッてたじゃないか」
「そりゃあ、勇者に会うんだから、笑いの一つくらい……」
「ドラモスの命令か?」
「違う! ドラモス様は真面目な方だから、こんな事は言わない。ぼくが、好きだからだ」
「ふ〜ん」
ティナがテュッティをじ〜っと眺める。
「な、何だよ」
「案外、可愛いとこがあるのね。坊や」
パチン。
ティナ必殺のウィンクだ。
テュッティは顔を赤らめながら、
「う、うるさい! さっさとオーブをよこせ!」
と、怒った。
やれやれ分かったよ。
真面目にやるか。
武器を取った。
「ふ〜ん、やる気なんだ。いいよ。けどその前に」
ゾクッ。
ルナンはテュッティの視線を感じる。
「ルナン。お前が城を抜け出したのは知ってる。でも構わないよ。ドラモス様も魔王様も、猫一匹出ていったからって、大して気にもしていない。どうせ役には立たないだろうから」
「分かりました。ではわたくしはこのまま、ご主人様達と旅を続けさせて貰います」
「好きにすればいいさ」
ルナンは恐怖を払い、テュッティをキッと見つめた。
少年の姿をしているとはいえ、相手は魔族。
魔物となった自分とは違う。
シトラス達はそんな彼女を案じ、前に出た。
「行くぞテュッティ。俺達が相手だ!」
「ああ、来いっ!」
聖霊フレイルとルナンは、後ろに下がる。
この戦い、勇者一行に任せた。
まず最初に仕掛けたのは、ロックだ。
「炎天狩射!」
テュッティは亀の甲羅の中にすっぽりと埋まる。
甲羅は硬い。
それが矢を跳ね返した。
シトラスの剣も同様。
当てられない。
「さあどうだ勇者、当ててみろ」
「くっ……」
「今度はぼくの番だな」
床で甲羅がぐるぐる回った。
風に乗り、空中に浮く。
そのまま横回転しながらながら突撃して来た。
「わっ!」
「スピンアタック! どうだ!」
シトラス達はなぎ倒される。
が、すぐに起きた。
剣を鞘ごとベルトから抜く。
「何をする気か分からないけど、ぼくの甲羅は頑丈だよ」
「ああ、そうだな。俺も面白い事考えた」
「無駄だよ」
スピンアタックが来る。
シトラスはその動きを良く見ていた。
そして、
カキーン!
剣をバットのように振り、甲羅を打つ。
テュッティは壁にぶち当たった。
血反吐を吐き、ずるずると落ちて来る。
「直接剣が当たらないなら、こうだ!」
「シトラス惜しい。壁が無かったらホームランだったね」
「ああ!」
ジェニファーにアピールする。
テュッティは口を拭き立った。
「やるな……! が、ぼくは野球のボールじゃないぞ……!」
「ああ悪い。ふらふら飛んでるもんだから」
「くっ、お前……」
手足を引っ込める。
また回転するのか。
しかし、今度は少し違った。
甲羅一面に鋭い刺がニョキッと生えて来た。
「げっ!」
「トゲトゲアタ〜ック!」
トゲトゲアタックって……。
そのネーミングセンスは如何なものか。
だが今はそんな事考えてる暇は無い。
ヒュンヒュンと飛んで来る。
シトラス達は逃げ回るしかなかった。
「どうした? さっきのように打たないのか?」
得意げに追い回すテュッティ。
ティナの怒りが炸裂した。
「坊や、ちょっといい加減にしてね」
ラッピーの風で飛ばされる。
床に体を打ち付けた所で、ジェニファーの魔法だ。
「サンダーボム!」
聖女の杖で威力は上がっている。
テュッティはピクピクと痙攣した。
刺があったから尚更だろう。
「うう……」
回りをシトラス達が囲む。
フレイルとルナンも一緒だった。
力が、あまり入らない。
それでも、テュッティは気力で立った。
ルナンが問いかける。
「テュッティ様。まだ戦うおつもりですか?」
いくら魔族とはいえ、ぼろぼろになって戦う姿を見ていたくない。
そんなになってまで、戦う意味があるのか。
「ぼくは……、子供とはいえ魔族だ。ドラモス様はこんなぼくでも同類として認めてくれた。その恩に応えなくちゃいけない。ルナン。お前は人間だったが魔物に変貌させられた。本来魔物はストーンモンスターと呼ばれる者。人間でも魔物でも無いお前は、ぼくと似ているのかもな」
「テュッティ様……」
「けどぼくには意地がある。魔族としての意地が。魔族は残り少ない。だから石の魔力や人間を利用してモンスターを造った。ぼくら魔族がどうして生まれて来たか知らないが、ここで諦める訳にいかないんだ」
ルナンは黙った。
テュッティの意思に触れたから。
フレイルが手をかざした。
「なら、わたしも戦おう。君はオーブを奪いに来た。オーブを守るのは、わたしの役目だ」
「……っ!」
炎の海が、テュッティに迫った。




