炎魔鬼
ルナンが教えてくれる数字に沿って、ロックが矢を放ちろうそくに火を点ける。たまに外すが、それでも狙いは正確だ。こういう時、ロックがいて良かったとホント思う。
「ロック様、次が最後の数字になります」
「分かった。あそこだな」
壁に書かれていた全ての数字に火が点けられた。
これで目の前の扉が開く。
と思って待っていたのだが。
「扉、開かないね」
「そうねジェニファー。おかしいわね」
「オレ、ルナンの言う通りに射ったよな」
「わたくしが、間違えていたのでしょうか。だとしたら」
「ちょっと待ってルナン。あれを見て」
責任を感じ、トンネルの中に戻って確かめに行こうとしたルナンを、シトラスが止めた。
ゴゴゴゴ。
扉の上の壁から、何かが飛び出して来る。
文字が書かれた細長い石板だった。
〈最後に、左右の⑦を灯せ〉
ガクッ。
シトラス達はコケる。
こういうオチかよ〜。
気を取り直し、ロックが⑦に火を灯した。
今度こそ扉は開く。
「さぁ、何があるんだ?」
勇んで入って行く。
同時に、扉がバタンと閉まった。
「ふ〜ん。入れる事は入れるけど、戻れないって事か」
「そうみたいですね。ご主人様」
「なら、行くしかないか」
「アタシはいつでもオッケーだよ。シトラス」
「あたしもついて行く」
「オレもいるぜ! にしても、広い部屋だな」
シトラス達は結構広い空間にいた。
奥の方に上に上る階段と、下に降りる階段の両方が見える。
が、その前に立ちはだかるモンスター。
赤い肌に炎が燃える両腕。口に牙。頭に角。
「あれは……」
「ルナン?」
「ご主人様。あれは炎のモンスター、炎魔鬼でございます。お気をつけて下さいませ」
「分かった。ルナンは安全な所へ」
「はい!」
「シトラス。どうやらこの魔物を倒さないと、先に進めないようね」
「ええティナさん。ロック、ジェニファー、行くぞ!」
「オッケー」
武器を構える。
炎魔鬼は高く叫び声を上げた。
トケトゲのついた棍棒を持っている。
それをおもいっきり振り下ろした。
ドカンッ。
狙われたジェニファーだが、上手く逃げた。
その瞬間ロックが行く。
シトラスもだ。
「飛天狩射!」
「十字斬!」
炎魔鬼は飛んで来た矢を跳ね返したが、シトラスの技を受けてしまった。
白眼を剥いた。
のは一瞬。平気そうな顔で、ニッと笑った。
手の熱が棍棒に伝わり、火が点く。
炎の棍棒を、シトラスに向けた。
ダッ。
服をかすめる。
ちょっと燃えたが、大した事ない。
「ウォーターダンス!」
華麗なる水の魔法が、炎魔鬼の体を包む。
棍棒の火は消された。
冷たさに、炎魔鬼は震える。
「じゃあこっちも踊ってみようか。演舞斬!」
シトラスの舞い。
その剣技に、炎魔鬼は吹き飛ばされた。
「ご主人様、イケてます!」
「おう!」
ルナンの声援に、シトラスは得意顔。
親指を立てる。
ジェニファーはムスッとした。
「もう! 何よシトラスったら、デレデレしちゃって!」
「お、おいジェニファー。何を怒ってるんだよ」
「怒るわよ! あたし以外の女に。キ〜ッ!」
ジェニファーは杖を振り上げる。
ヤバい。
シトラスは慌てた。
「わ〜! 待てジェニファー! 暴力反対〜」
「キ〜ッ、うるさい!」
「はいはい、そこまでよ。二人とも」
ティナが間に割って入った。
炎魔鬼は、起き上がって咆哮を上げる。
「二人とも、今は戦闘中なの。喧嘩はよしなさい。それにジェニファー、その怒りは、あっちの敵にぶつけなさい」
「ティナさん……」
「誰でも褒められたら、いい気分になるの。それで嫉妬はしちゃ駄目よ。シトラスが悪いんじゃないわ」
「ティナさん……。分かりました」
「いい子ね。さぁそれじゃ行くわよ!」
「はい!」
ティナはウィルを召喚。
またもや炎魔鬼を水が攻撃する。
「グガ」
仰向けに伸びた。
そこにジェニファーのトドメの魔法。
「可哀想だけど、これで逝ってね。アイシクルレイン!」
氷の雨あられ。
炎魔鬼は反撃の暇も無く消えた。
「やったな、ジェニファー!」
「うん! で、シトラス。どっちの階段に行く?」
「そうだな。上に上った方が聖霊がいるような気がするが、一応下を確かめてみるか」
「うん」
さっきまで喧嘩してたのが嘘みたい。
すぐ仲直りする。
ティナが間に入ったおかげか。
じゃ、下の階段を降りますか。
こじんまりした部屋に宝箱一つ。
爆弾が入っていた。
「爆弾? 危険だな。置いてくか?」
「いや、使い道があるかもしれないし、持って行こう」
火を点けなきゃ安全だ。
慎重に、シトラスは荷物に入れた。
上の階に戻り、階段を上がる。
何も無い。ただの普通の部屋。
「え? まさかの行き止まり?」
「違いますよジェニファー様。こちらをご覧下さい」
不自然に、石で固められている壁。
「あ!」
さっきの爆弾を使うのか。
シトラスが火を点け、壁の前に置く。
耳を塞ぎ、小さくなって部屋の隅に避難した。
バーン!
石が崩れ、道ができる。
煙が収まった頃、シトラス達は立った。
「これで通れそうだな」
穴を覗き、足を踏み入れた。




