表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/635

謎の男

 水晶玉に手をかざし、じっと真剣な目をしていた神父さまの弟さんが、フッとシトラス達を見た。


「分かったよ。君達はこれからこのドグアックの大陸を抜け、次の大陸を目指すんだ」

「次の大陸って、どう行けばいいのですか?」


 サララが尋ねる。

 一応地図は持っているが、大陸を渡る方法など書いてない。


「まずこの村から北へ向かうといい。そうすると検問所があるから、そこで通行書を貰うんだ。そして一山越えた所でまた検問所があるはず。通行書をそこの役人に渡せば、次の大陸だよ」

「分かりました。まず、検問所に向かいます。それにしても、一山越えなきゃいけないんですね」

「そう。そこを越えなきゃ、次の大陸に行けないんだ。大変だけどね。何だったら、この村の武器屋とか防具屋を見て、装備を整えるといいよ」

「そうですね。そうさせてもらいます」

「それと、もう一つ気になる事が」


 弟さんは表情を変える。

 それまで結構笑顔混じりで話していたのに、この時ばかりは悲しげな顔をした。

 シトラス達も、何か悪い事が起きるのかと、不安になる。


「ああ。そんな悪い事って訳じゃないんだが、君達が山を越える時、ある男と会うって占いに出てる」

「ある男、ですか?」

「うん。その男は悲しい、複雑な運命を背負っているようだ。(せい)とも(じゃ)とも言えない、不思議な気を感じた。それが少し気になったんだ」

「分かりました。その男にも気をつけます」

「ああ、そうするといい」

「あの、ところで……」


 シトラス達は肝心な事を忘れていた。

 占いをしてもらったんだから、お金を払わないといけない。

 一体幾らかかるんだろう。

 おそるおそる、シトラスが聞いてみた。


「あの、ここ、お代って……?」


 弟さんは笑った。

 サララとジェニファーを見る。


「そうだね。お嬢さん達が、パンティを見せてくれたらいいよ」

「えっ!?」


 一瞬、その言葉に嫌な気持ちになる女子達だが、


「ああ、冗談冗談。そうだなあ、君達は兄ちゃんの知り合いだから、200コインでいいよ」

「えっ、本当ですか?」


 そんな安くていいのかと、シトラスは身を乗り出す。


「いいんだよ。魔王軍と戦っている勇者から、そんなに高いお金取れないでしょ。それに、次会った時、手土産を持って来てもらえばいいから」

「やった! (だい)ラッキー!」


 それにロックとジェニファーが反応する。


「久しぶりに聞いたな。シトラスのその言葉」

「うん。口癖のように言っていたもんね」


 大ラッキーとは、シトラスがアルズベルト村で辛い思いをしていた時、自分を鼓舞するように言っていた言葉だ。シトラスいわく、どんな時もラッキーだと思えば、落ち込む事も忘れる。大をつけたのは、より大きな幸運の方が、幸せを掴める気がしたから。ジェニファーとロックという大切な仲間ができて、しばらくは言っていなかったが。


「へえ、大ラッキーか。いい言葉だね。ボクちんも使ってみようかな」

「じゃあ、あたしも〜」

「おいおい、ジェニファーもかよ」

「あら、いいじゃないシトラス。あなただけの特権じゃないのよ。みんなで分け合いましょう」

「わたしも賛成〜!」

「サララさんが言うなら、オレも〜!」

「おいおい……」


 占いの館は一気に賑やかになる。

 村の人々が、楽しそうだねと、カーテンを開けた。

 次の人が待っているならと、シトラス達は占いの館を後にする。

 とりあえず、今日は早めに宿に行って休もう。

 お腹も空いてきたし。


(明日の事は、明日考えよう)


 こういう所、能天気だな。シトラスって。

 それが彼の魅力でもあるんだけどね。

 という訳で、一行は、宿に向かった。



 野宿ではなく、久々のベッドの中で、シトラスは爽やかに目覚めていた。


(あ〜、良く寝た)


 伸びをしながら隣のベッドを見る。

 ロックが目を開けた。


「おはよう、シトラス。良く寝られたみたいだな」

「お前もな。ロック」


 彼らの隣の部屋には、サララとジェニファーが休んでいるはずだ。

 二人とも起きただろうか。

 支度をして、ドアをノックしてみる。


 カチャッ。


 二人が出て来た。

 寝起きの女子二人も、可愛い。

 それに、何とねまき姿。


 ドキッ。


 シトラスとロックは、顔を赤らめた。

 ネグリジェっぽい服。


「おはよう、シトラス。ちょっと待ってて。あたし達、顔を洗って支度してくるね」

「あ、ああ……」


 もう少しその姿を堪能したいが、ドアが閉められた。


「お待たせ、シトラス」


 いつもの戦闘服だ。

 ま、いいか。ジェニファーはミニスカートだし。

 シトラスは気持ちを切り替えた。

 その後、朝ごはんを頂き、宿を出る。

 ジングー村の北の方へ。

 まずは検問所だ。

 道中、二匹ほどストーンモンスターを倒した。

 残念ながら、白い石だ。

 本当は灰色、もしくは赤色だったら良かったのに。


「あ、姉さん。あそこが検問所じゃない?」


 木でできた大きな門が建つ。

 役人が三人いた。

 一人は女。


「ここはドグアックの検問所だ。旅の者よ。次の大陸に渡る前に、怪しい物がないか、チェックさせてもらう」


 荷物をチェックされる。

 服の上からも大まかに。

 ジェニファーとサララは、もちろん女の役人が。


「失礼した。怪しい物はないようだ。魔物が人間に化けて襲ってくる場合があるので、チェックはしっかりしろとの王様のお告げなのだ。さぁ、通行書だ。この先は山道だから、気をつけて」


 ようやく次の大陸に行く山道に入る。

 確か占いだと、この途中で謎の男に会うはず。

 山の中腹、広い広場に出る。


 ガサッ。


 物音がした。

 木の陰から、長髪の男が現れる。

 シトラスと同じく、青い髪。背が高く、はっきり言ってカッコいい。


「誰?」


 シトラスの問いに、男はニッと笑う。

 腰の剣を抜いて、構えた。

 













評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ