表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/635

アクアリーゼの逆襲

「十字斬!」

「炎乱狩射!」

「サンダーボム!」

「ラッピー、お願い」


 それら全ての技を、スーリアは風のバリアーで防いだ。

 さすがは魔族。

 今まで戦って来たモンスターとは大違いだ。

 百戦錬磨というやつか。

 シトラス達は一旦距離を取り、様子を見る。

 乱れた呼吸を整えなきゃ。


「あら、どうしたの? もうお終い? これじゃ勇者の名が泣くわね」

「何っ!?」

「シトラス、挑発に乗っちゃ駄目よ」


 カチンと来て思わず飛び掛かろうとしたシトラスを、ティナが止めた。


「ふ〜ん。来ないんだ。臆病者なのね。そんなにわたしが怖いの?」

「………」

「だったら、わたしから行くわよ」


 蛇のしっぽが動く。

 なぎ倒される前に、シトラス達はジャンプした。

 しっぽを飛び越す。

 シトラスが上空から降りて来る。


「飛翔斬!」

「キャッ」


 風を使わせたら駄目だ。

 シトラスの技が効いた今の内にーー、


「ウォーターダンス!」


 時間差攻撃に、スーリアはたまらず床を転がる。

 だが、たいしたダメージは受けていない。

 すぐに起き上がり、反撃に転じた。

 竜巻が、ジェニファーとティナを吹き飛ばす。

 彼女達は壁に体をぶつけた。


「ジェニファー、ティナさん!」


 男の子達が彼女達に気を取られ、スーリアから目を離した瞬間、


「ほら、あなた達も眠りなさい」


 スーリアの蛇のしっぽに、シトラス達は叩かれた。

 バンと音を立て、床に潰される。

 重い。

 女の力じゃないみたい。


「ううう……」

「どう? 重いでしょ。魔王様から頂いたこの指輪で、わたしのしっぽを石化したの」

「もしかして……、さっき聖霊を石にしたのも……」

「そうよ勇者。この指輪の力。にしてもあなた、石の下敷きになってよく喋れるのね。それなら」


 スーリアの魔力がかかった。

 さっきより重くなる。

 ロックとシトラスは悲鳴を上げた。


「フフ。坊や達を殺すのは惜しいけど、魔王様の為なの。ごめんなさいね」

「ううう……」


 このまま押し潰されてしまうのか。

 その時、


「バーニングバード!」


 ジェニファーの放った火の鳥が、スーリアの顔面に当たった。

 スーリアはたまらず顔を押さえ悶える。

 さらに、


「ウィル! シトラス達を助けて!」


 聖獣の水の衝撃で、指輪は外れ、スーリアは流される。

 しっぽの石化が解けた。

 ジェニファーとティナは急いでシトラス達の(もと)に駆けつける。

 二人ともぐったりして目を閉じたまま。


「ジェニファー、あなたはタリスマンを使ってシトラス達を回復させて! アタシはこれを」


 ティナは指輪を拾っていた。

 スーリアはだいぶ流されたが、指輪が無いのに気づき、慌てて飛び起きた。

 ティナの手の中にある物を見る。


「それを返しなさい!」


 スーリアが迫って来る。

 ティナはタリスマンを取り出すと、指輪の宝石に向かってそれを振り下ろした。


 ガッチャ〜ン。


 指輪は割れる。

 青い顔のスーリア。

 シトラス達の回復も始まっていた。

 タリスマンは丈夫な宝石なので、滅多な事では壊れる事はない。


「よくも、魔王様から頂いた指輪を……!」

「あなたがうちの坊や達に酷い事をしたからでしょ。それに、壊してしまえばもう石にはできないわよね」

「人間は、弱いからよ。臆病で、力も無い。それでいて意気がって、馬鹿みたい。わたし達が目指す世界には、必要ないわ」

「あなた達が目指す世界って、何なの?」

「強い者だけが住む、闇の世界。その為に、この世界には壊れてもらうわ」

「そのような事はさせません」


 水の聖霊アクアリーゼが、力強く立っていた。

 指輪が壊れた事で、石化が解け、自由になったのだ。


「……!! アクアリーゼっ」

「スーリア。この世界には、さまざまな命が住んでいます。時に衝突する事もあるけれど、基本的には、みんなが共存しています。それらを壊して、闇の世界を造るというのですか?」

「ええ。そうよ」

「つまり、自分たちだけの世界を……。ならば私はこの世界に生きる者として、勇者達と共に闘いましょう!」


 アクアリーゼが腕を前に出す。

 水しぶきが、龍に変わった。


 ゴオオ。


 スーリアは水に呑まれる。


「けほっ」


 何とか水から顔を出した。

 が、その龍が今度は巨大な手に変わる。

 スーリアはギュッと掴まれて身動きが取れない。


「勇者シトラス、今です。私も、力を貸しましょう」


 ジェニファーの魔法で元気になったシトラスとロック。

 アクアリーゼの気が、シトラスを包んだ。

 ふわっと、優しい。

 紋章が光る。


「ああ、やめて……」


 スーリアはもがく。

 水の手はほどけない。

 シトラスの剣が、狙いを定めた。


「五月雨!」

「キャアアアアア!」


 スーリアは吹き飛ぶ。

 ピクッと一瞬、指が動いた。

 まだ倒れていない。

 シトラス達が近づこうとしたその時、スーリアの体を黒いエネルギーが包んだ。

 魔王の声が聞こえる。


「勇者。勝負はお預けだ。スーリアは連れて行く」


 スーリアは消えた。

 シトラスは頭がクラッとして、その場にしゃがみ込む。

 心配した仲間が回りを囲む。


「シトラス、大丈夫なのか?」

「ああ。聖霊が力を貸してくれたから、今までより楽だ。でもロック、肩貸してくんねえか? それで何とか」

「ああ、いいぜ。ほらよ」


 ロックの肩を借りてシトラスが立つ。


「毎度毎度、悪いな。心配かけて」

「気にすんな。オレ達は親友だ。たいした事じゃねぇよ」

「あたしも、なるべく助けるから」

「坊や。アタシも頼りにしてよ」

「わたくしもお側にいます。ご主人様」


 ジェニファーの服の中から、ルナンがピョコッと飛び出した。


「あらルナン。ずっとあたしの服の中で震えてたのに?」

「あ、申し訳ありませんジェニファー様。それに皆さま」

「いいよ。ルナンの事情は分かってる。俺達の……、ガルディスの為だろ」

「はい」

「それに、ルナンが服の中に入ってると、(あった)かいんだ〜」

「そうなのジェニファー? アタシも温めて貰おうかな」

「オレも〜」

「まあまあ、皆さまったら」


 その賑やかな声を聞きながら、アクアリーゼがシトラスに近づく。


「賑やかな所申し訳ないですが、勇者シトラス、いいですか?」


 シトラスの手に、何かを握らせた。















ブックマーク登録して頂いている方、ありがとうございます。感想のほうも受け付けています。これからも、宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ