海底神殿
「実はご主人様、あの店の方がもう一つお話しをされていまして」
歩きながらルナンがシトラス達に告げる。
「へえ、どんな話を?」
「はいご主人様。実は、水の聖霊のお名前は、この国と同じ名前だそうですよ」
「ふ〜ん。聖霊の名前を、国の名前にしたのか。まるで……」
「リカの街と同じだって言いたいんでしょう? アタシ達がリカさんの名前を使ったように」
「そうなんですよティナさん。同じ名前って事は、この国の人々はその聖霊を尊敬しているんだなぁと」
「そうなのです。しかし、その尊敬する聖霊の神殿に、数日前、闇みたいな物を見たという話を聞きまして」
「それって、魔物?」
「その可能性はありますねジェニファー様。ですから、その事を含めて調べて欲しいと、お願いされました」
「分かったわ。勇者の仲間として放って置けない。行こう、シトラス!」
「ああ」
白い神殿が見えて来た。
入り口の扉を押す。
ギイイイ……。
誰もいない空間が広がっていた。
「何も無いなシトラス。さっさと先に行こうぜ」
「ロック様。こういう時こそ、油断は禁物でございます」
「あ、ああ、そうだな」
これは、随分としっかりしているルナン。
魔王城にいた者として、モンスターの出方を予測しているのだろう。
ティナはふっと笑った。
自分と同じ大人の女性が来た事が、素直に嬉しいのだ。
年齢は分からないけれど、多分同い年か、一、二才年上だろう。
そんなに離れている感じには見えない。
よく考えればシトラス達とだって、五歳しか違わないのだ。
五歳も? という意見もあるが。
どっちにしろ、彼らを引っ張って行く負担が減る。
ガサッ。
物音がする。
ルナンの予測が当たった。
広間の真ん中に立つシトラス達に、四方八方から魔物が襲って来た。
「ルナン。俺達から離れないで」
彼女を守るように、シトラス達は円になる。
「モンスターがいるかもって話、当たったわね。シトラス」
「ええ、準備はいいですか? ティナさん」
「いつでもオッケーよ。始めましょ」
「オレもいいぜ」
「あたしも〜〜」
剣、弓矢、杖。それぞれの武器を構える。
ここにいる魔物、前に見た事がある。
シャドウにドラキュー、それに懐かしのカウーだ。
忘れちゃったっていう人の為に、説明すると、
シャドウは黒いお化け。ドラキューはコウモリ、そしてカウーは黒くて巨大な牛のモンスターだよ。
それらは一匹づつではなく、数十匹で取り囲んでいた。
ダッ。
一斉に来る。
シトラス達も始めた。
「シャイニング!」
「聖獣召喚! ユニー、来て」
ジェニファーとティナの光の魔法が炸裂。
まずはシャドウが消えた。
「よし、俺達も」
「シトラス。オレはあのコウモリを倒す。お前は、牛の方だ」
「あ、シャドウは簡単だったけど、カウーとドラキューは……。アタシ達も手伝うよ」
「ありがとうございますティナさん。よ〜し、演舞斬!」
「炎乱狩射!」
「え〜っと、ウォーターダンス!」
ドドダダ。
モンスターが暴れる。
シトラス達が防ぐ。
敵の数が減って来た。
「皆さま、頑張って下さいませ〜!」
ルナンが応援したその時、
カウーが、彼女に向かって突進した。
「……!!」
「ルナン、危ないっ!」
シトラスが庇う。
カウーの角が、シトラスの腹に刺さった。
「ご主人様あっ!」
「シトラスう!」
腹を押さえ、うめき声を上げて倒れたシトラスに、ジェニファーが駆けつける。
ルナンも心配して見守る。
「このおっ!」
ロックはバンダナをさっと取ると、カウーを引き付けた。
「いいよロック!」
ティナがパナを召喚する。
燃える炎で、カウーは黒焦げに。
「ん〜。こうやって見ると、美味しそうね〜」
「ティナさん、そりゃそうですけど、結局モンスターは……」
コロン。
石が転がる。
それを拾ってティナは呟いた。
「そうね。石になるものね」
さあ、後はドラキューが二匹だけ。
ジェニファーに傷を治してもらったシトラスが、女性二人に支えられて歩いて来る。
「お〜。いいじゃんシトラス。美人二人に囲まれて。胸、当たってるんじゃないの?」
「なっ。ロックこんな時に何言ってんだよ。まあ、いい感じだけどな」
「や〜ん。シトラスのエッチぃ!」
「まあ、ご主人様ったら」
ジェニファーとルナンは離れた。
ただ、ルナンの場合は大人の反応というか、ジェニファーと違ってゆっくりだった。
ある程度、仕方ないかなという感じ。
バタバタ。
ドラキューが待てなくなったらしい。
シトラス達の上空を飛んだ。
ズバッ。
シトラスの剣とロックの矢で落とされる。
これで、とりあえず落ち着いたか。
「ご主人様……」
「ああルナン。大丈夫だったか? 怪我はない?」
「はい。先ほどは、申し訳ありませんでした。わたくしのせいで……」
「いいよ。あなたが無事で良かった」
「シトラスそれより、ここにはもう誰もいないみたいよ。あたし達、どうするの?」
「ああ、そうだな。ん?」
階段を見つけた。
二階に行くのか。
「みんな! 階段があるぞ。あそこを上ろう!」
「ああ! ってシトラス、ちょっと待て」
「どうした? ロック」
「これ、いつぞやの搭みたいに、滑り落ちる訳じゃないよな?」
ルナンが階段を眺め、一言。
「大丈夫だと思いますロック様。ここはもともと聖霊の為に造られた神殿です。魔物が造った訳ではありませんから」
「そ、そうか。それなら」
ロックは階段に足をかけた。
シトラスとジェニファーがからかう。
「お、ロック。今度は慎重だな」
「さっき、ルナンに言われたから」
「う、うるさい!」
プイッと赤い顔して上って行くロックに続いて、シトラス達も急いだ。
聖霊は、二階にいるかな。




