砂ミミズ撃破
「キエエーッ!」
気合いと共にミゲルの激しいキックが砂ミミズに向かって放たれる。しかし砂ミミズはゴム風船みたいな柔らかい体で、ブヨンとその攻撃を受け流した。
跳ね返ったミゲルは見事に着地する。
「駄目ですね。奴の体は柔らかすぎます」
「でしたら、あたしがやってみます!」
ジェニファーが杖を掲げ魔法を唱えた。
砂ミミズの頭のてっぺんめがけて雷が落ちる。
「サンダーボム!」
砂ミミズは一瞬フラフラってなるが、態勢を立て直した。
「飛天狩射!」
ロックの矢があたる瞬間、大きく息を吸って砂の中に消える。
シトラス達は警戒しながら辺りを探した。
ティナの足下の砂が歪み、触手が彼女の足を掴む。
「キャッ!」
「ティナさん!」
地中に引きずり込まれそうになったティナを助け、シトラスが触手を斬る。しかし何本も触手は現れ、だんだん太くなり、二人に絡み付いた後、砂ミミズの胴体になった。
顔も砂の中から出す。
ギリギリ……!
高く二人を縛り上げ、満足げに見つめる砂ミミズ。
きつく締め付けられ、シトラスとティナは苦痛に耐えていた。
「ああああっ……!」
ティナの目から涙。
砂ミミズの皮膚に触れる。
ジッと、火傷みたいに赤くなった。
そこへ、息を合わせたミゲルとカーシャの飛び蹴りが炸裂。砂ミミズの顔面に当たった。
体は風船みたいでも、顔はそうでも無かったらしい。砂ミミズは白目を剥き、気を失った。
シトラスとティナは解放される。
「大丈夫ですか? シトラスさん、ティナさん!」
「しっかりなさって下さい! そうだ、これを」
横たわって動けない二人に、カーシャが食べさせてくれた物。
「薬草です。どうぞ」
この世界の薬草は、煎じて飲むのもいいが、生でも食べられる。ただしその場合、苦いが。
「ケホッ」
むせて咳をした二人が目を開ける。
ジェニファーとロックは安堵した。
砂ミミズの頭がピクッと動く。
ドシャッ。
勇者達めがけ頭突きをする。
が、シトラス達には当たらない。
ミゲルが砂ミミズの頭を押さえていた。
「シトラスさん!」
「はいっ!」
一閃。
砂ミミズの胴体を斬った。
太い為、真っ二つとはいかなかったが、それでも致命傷は与えただろう。
敵は倒れ、苦しむ。
ピクピクと痙攣していた。
しかし、
「見て!」
ティナの声に、一斉に砂ミミズの傷痕を見た。
塞がっていく。
砂ミミズはピンピンして、立った。
「そんな、傷痕の再生? シトラスさんの剣でも駄目なんて……」
「ミゲル。もう一度頭を攻撃しましょう!」
「しかしなカーシャ。うっ、わあっ」
砂ミミズがしっぽでミゲルとカーシャを弾き飛ばす。
二人は砂漠を転がった。
「ミゲルさん! カーシャさん!」
「シトラス、来るぞ」
砂ミミズは今度は、シトラス達をターゲットにする。しっぽの攻撃を、飛びながら彼らは避けた。
「飛翔斬!」
シトラスの技に続き、ロック達も仕掛ける。
「乱天狩射!」
「アイシクルレイン!」
「ラッピー、風を!」
怒涛の連続攻撃に、砂ミミズも参っただろう。
ドーン。
大きな体が、崩れた。
起き上がったミゲルとカーシャが、様子を見に来る。
するとーー、
ガブッ。
砂ミミズがカーシャを噛んだ。
慌てたミゲルが引き離そうとする。
「カーシャ!」
「うっ、まだ、倒れないの? え……?」
ミゲルが離すより先に、砂ミミズの方が離れた。
カーシャは軽い怪我。
彼女の腰の、お菓子の袋が破けている。
その中身は、塩クッキー。
砂ミミズは青い顔で苦しそう。
カーシャは気づいた。
クッキーを手に取り、砂ミミズの口めがけて投げる。
ミゲルは、何をしているんだと言った。
「大丈夫よミゲル。多分砂ミミズは、塩が苦手なの」
「え?」
ゴクリ。
塩クッキーを飲み込んだ砂ミミズは、断末魔の声を上げた。
体が溶けていく。
あっという間に消えてなくなった。
シトラス達は唖然としている。
「まさか、砂ミミズの弱点が塩だとはねえ。想像もつかなかったわ。ね、ロック」
「ええティナさん。って、何でオレに振るんです?」
「え〜、何となく」
「あ〜〜。こんな事なら海水でもかければ良かったのに〜!」
「お、ジェニファー面白い事言う。そう考えるとそうだな」
「でしょ。さすがシトラス。やっぱあたしと気が合うんだ」
「う、コホン。それにしてもカーシャさん、良く分かりましたね」
ジェニファーの言葉を軽く流して、シトラスはカーシャを褒めた。カーシャは嬉しそうに答える。
「最初におかしいと思ったのは、ティナさんとあなたが砂ミミズに縛られていた時です。あの時、ティナさんが落とした涙を砂ミミズは嫌がっていたようでした。でもあの時は早くあなた方を救いたくて、確認する暇が無かったのです。確信したのは、さっきわたしが襲われた時ですね。塩クッキーの袋が破れていましたから。それで分かったんです」
「そうなんですか。俺、全然気づかなかった」
「僕もですよ。偉いって、褒めてあげたい位です」
「まあ、ミゲルったら」
おノロケを聞いた所で、ラクダの所へ戻ろう。
ずっと待っていただろうな。
あ、大人しくしてる。というか寝てる。
ラクダを起こして、シトラス達は背中に乗る。
たまには逆にミゲル達が乗ったら? とシトラス達が気を使ったら、お客様を歩かせる事なんてできませんと諭された。
これで後はアクアル村に帰るだけ。
刺激的な砂丘ツアーは、これにて終了した。




