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ドラモス対勇者

 空中に飛んだシトラスがドラモスに向かって斬りかかる。

 ドラモスはそれを、斧で受け止めた。

 弾かれたシトラスは後ろに滑りながら着地し、また向かって行く。

 反対からガルディスも来ていた。

 二対一。

 本当は卑怯だと思われそうだが、シトラス達には正直言って時間が無い。

 実際には、ドラモスの方が望んだのだ。

 勇者二人との戦いを。


「迅雷!」


 ガルディスの波動をドラモスは避ける。

 避けた所をシトラスに懐に入られた。


「十字斬!」

「ぐわっ」


 ドラモスが怯んだのを見て、ガルディスの攻撃。


「衝雷斬!」


 ドラモスは膝をつき、前のめりになった。

 はあはあと息をしている。

 その戦いの間、同じ舞台ステージに居たスカイドラゴンは、隅っこの方で大人しくしていた。

 シトラス達の戦いぶりを眺めている。

 邪魔する事はない。

 いや、出来ない。

 これは勇者と魔族の誇りを懸けた戦い。

 とても間に入れる雰囲気じゃなかった。

 時々上を見る。

 ジェニファー達の戦いの声もわずかに聞こえていた。

 ドラモスが立つ。

 ポキポキと首を回した。

 シトラスとガルディスは何も言わず、剣を構えて様子を伺っている。


「ふう、効いたぞ。シトラス、ガルディスよ」

「………」

「今度は、我の番だな」


 斧を振り回す。

 風が強くなってきた。

 シトラス達は後ろに下がる。


「剛、烈、斬!」


 鬪気を交えた斧の風。

 壁に傷が入る。

 同じ所に居ては危険だ。

 シトラス達は左右に分かれて逃げた。


「フッ」


 シトラスが捕まる。

 激しい風に煽られ、強く壁に叩きつけられた。


「シトラス!」


 そう叫んだガルディスの元にも、


「はっ!」


 ドラモスの波動が迫って来た。

 危ない所で剣で斬り、消滅させる。


「うう」


 シトラスは意識はあるようだが、まだ起き上がる事が出来ない。

 ここは自分がやるしかないか。

 ガルディスはドラモスに近づく。


「来るか」


 ドラモスはガルディスの剣を警戒し、斧を中段に構えた。

 思った通り、ガルディスが剣を上から振って来る。

 受け止めようとした瞬間、剣が止まった。

 ドラモスの頭上、15センチほど離れた所で。


「……?」


 寸止めか。

 何をするつもりだ。


「フ」


 ガルディスは剣を引っ込めて離れる。

 ドラモスは背中に気配を感じた。


「……!」


 気付いた時にはシトラスがもう寸前まで迫っていた。

 そうか、そういう事か。

 と、斧で防ぐ暇も無かった。


「五月雨!」


 渾身の一撃。

 今度はドラモスが壁にぶつかる。

 スカイドラゴンは思わず喜びの声を上げた。


「キュイ!」


 そのドラゴンに向かってシトラスがピースサインをする。

 そうさ。

 俺達は、負けちゃいられない。


「ぬ、ぐぐぐ」


 ドラモスが歯を食いしばりながら壁に手をやった。


「もう起き上がったのかシトラスよ。意外と、早かったな」

「ああ、そうだ。お前に俺の技を食らわしたかったからな」

「だが、我の剛烈斬のダメージが残っているようだぞシトラス。息、切れ切れじゃないか」

「それは……。お前もだろ? ドラモス」

「フッ、フフフ」


 ドラモスは歯を見せて笑った。

 勢いよく立ち上がる。


「我は魔族だ。この程度、何ともないわ!!」


 胸を張って叫ぶと、身体中から黒い気が湧き上がる。

 シトラスとガルディスは、その姿に少し戦慄を覚えた。


「く……。何て鬪気だ」

「けど兄さん、俺達がここで諦めちゃ駄目だ。上では、ジェニファー達も戦っているんだ」

「ああ、そうだな」


 逞しくなったシトラスに、ガルディスの口元が緩む。

 ドラモスの斧が大きく変化した。


「な……」

「シトラス、忘れたのか? あの斧も俺達と同じ、鬪気で造られた斧だって」


 そうだ。

 東の大陸の、武器職人ゴルゾンさんに鬪気の武器を造ってもらう前に聞いた。

 自分達より先に、武器を造ってもらった者が居たって。

 それが人間に化けていたドラモスだったと。


「フッ。シトラス、ガルディスよ。全力で戦おうぞ!」


 楽しんでいる。

 ドラモスは純粋に、この戦いを楽しんでいるんだ。

 魔族と人間という枠を超えている。

 なら、俺達もそれに応えよう。

 強い者が勝つ。

 ただ、それだけ。


「はああああああ!」


 シトラスとガルディスも鬪気を溜める。

 剣が大きくなった。


「勝負!」


 スカイドラゴンの目の前で、三人が駆けた。














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