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森の迷路

 ぐずついた天候の中、船は目的地に着く。

 島全体が森になっていた。

 入り口が分からなかったが、ご丁寧に看板があった。


 〈森の入り口はここだよ。来れるならかかっておいで。シシカバブウ〉


 偶然入り口側に船を止めたようだ。

 ちなみに裏側に行くと、〈ブウ。外れ。ざーんねん〉っていう看板が建っている。


「人を舐めた看板ねえシトラス。早く行って倒して来ましょう」

「お。やる気充分だなジェニファー」

「しかしこの森は迷路だって聞いたぜ。焦って進むと迷うんじゃないのか?」

「ロックの言う通りよ。それにしても……」


 ティナは看板の文字をジーッと眺めた。

 気になる事でもあるのか。

 シトラスが尋ねる。


「ティナさん、どうかしたんですか?」

「ん〜〜。この字ってモンスターが書いたのよね。字、上手いなあって思って」


 ガクッ。


 気にしてたのはその事か。

 シトラス、ロック、ジェニファーは思い切りずっこけた。


「ん? どうしたのみんな。あっ、アタシが真面目な事言うと思ったの? や〜ねえ。リラックスさせてあげようと思って」

「リラックスも何も、これじゃあ……」

「しなかった? じゃあ、これ」


 ティナは三人に近づくと、それぞれのほっぺにキスをした。


「!!」

「ふふっ。落ちついて頑張りましょう」


 落ち着くも何も、逆に興奮するよ。

 ただ緊張は消えたようだ。

 しかしティナさんって、こういう事を平気でやる人なんだな。

 ある意味大人っていうか、大胆。

 性格かもしれないが。


「そう言えばシトラス、あなたあの男の人から何か受け取っていなかった?」


 ティナの声が聞こえ、我を忘れていたシトラスは、慌ててある紙を出した。


「ああ、これですね」

「何慌ててるの? まあいいわ。ところで、これは?」


 それは男の人が渡してくれた迷路の地図だった。

 以前、自ら動物達を助けに迷路に挑んだ男の人が、その時に描いた物だ。

 しかし、複雑で長かったので、途中までしか描けなかったが。


「要は途中で諦めたのね」

「ティナさん。それを言ったら可哀想です。それに途中まででも、地図があるだけ便利ですよ。モンスターが出て来たかもしれないのに、頑張ったんですよ。きっと」

「そうね。それじゃあその有り難い地図を見ながら行きましょう」


 迷路に突入した。

 男の人は絵も上手い。分かりやすくて進むのに 楽だ。

 シトラスが地図を持ち、こっちだあっちだ言いながら歩いた。

 今の所、モンスターも出て来ない。


「このまま順調に行けるといいですね。ティナさん」

「そうね、ジェニファー」


 その時、先頭のシトラスが立ち止まる。


「どうしたシトラス?」

「ああ、今ここなんだけど」


 ロックが隣に来て地図を眺めた。

 シトラスが指差す。

 どうやら、地図にはここまでしか描かれていないようだ。


「順調にはいかなかったようね。ジェニファー」

「そうみたいですね。ん? あそこ!」


 ジェニファーが何かの影を発見した。

 モンスターだ。

 そいつらは数匹で突っ込んで来た。

 蜂の姿の魔物。お尻の毒針でシトラス達を狙っている。


「ポイズンビーね。みんな、行くわよ!」

「はい!」


 ティナの号令で攻撃開始。

 ジェニファーとシトラスが早かった。


「ウィングナイフ!」

「疾風!」


 それでも生き残ったポイズンビーが、ティナとロックを襲う。


「乱天狩射!」

「聖獣召喚! 出でよ、ウィル!」


 今回ティナが召喚した聖獣は、ピチピチ跳ねているピンクのイルカ。

 クワックワッという鳴き声が可愛い。

 ウィルはポイズンビーに向かって、空中を泳ぐように進んだ。

 するとウィルのすぐ後ろから波がついて来る。

 波に溺れ、敵は消えた。


「よっしゃ〜! じゃあ、先に進もうぜ!」

「シトラス、さっきのポイズンビーが来た道。あそこを行けばいいんじゃない?」

「そうね。敵は侵入者を撃退する為に現れる。ジェニファー、賢いわね」

「へへ〜ん。あたしだってやる時はやるんです」


 そこにロックが突っ込んだ。


「そっちの道に行かせる為の罠じゃないのか?」

「それはそれ。そうなったら戻ればいいの。とにかく行くわよ。レッツゴー!」


 何か自信満々だな。まあいいか。ついて行けば。

 と、ジェニファーの勘が当たった。

 行き止まりは無く、道は続いている。

 この森にはポイズンビーしかいないのかと思うほど、彼らと出くわす。

 その度に倒して新たな道に行く。

 くねくねくねくね。

 そして遂に、出口だと思われる開けた場所に出た。

 そこで待っていたのはーー、


「よく迷路を越えて来たね。そう、ボクがシシカバブウだ。よろしく、勇者」


 頭がライオン、体がカバのモンスターが呑気に挨拶をした。

 それに対しシトラスも、


「やあ、初めましてシシカバブウ。俺が勇者シトラスだ」


 と、返した。

 ジェニファーが、呆れ顔で突っ込みを入れる。


「ちょっとシトラス。呑気に挨拶してる場合じゃないでしょ!」

「ジェニファー落ち着けよ。せっかく向こうが挨拶してくれてるんだ。こっちも挨拶で返すのが礼儀ってもんじゃないのか?」


 敵に礼儀とは律儀だな。

 まあ、そう言うなら仕方ない。


「分かったわよ。じゃああたしも。え〜と、魔法使いジェニファーよ。悪い事すると、お痛しちゃうわよ」

「弓使いロック。女子のハートも、百発百中……を目指すぜ」

「召喚術士ティナよ。アタシの魅力で、メロメロにしちゃうわ」


 結構、ノリノリな仲間達じゃないか。

 シシカバブウはハハハと笑った。


「面白い奴らだなお前ら。しかし、戦いは戦いだ。ボクにも、モンスターとしての誇りがある。行かせてもらうぞ」

「来い!」


 シトラス達とシシカバブウの間の、空気が変わった。











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