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塔の主

 シトラス達は東の塔の三階にたどり着いた。

 見渡しても上に上る階段は見当たらない。

 という事は、ここが最上階なのか。

 それにしても変だ。

 塔の高さからすると、もう一階くらいありそうなものなのに。

 魔物の気配も無い。

 とりあえず、部屋の中を歩いてみる。

 何故か、バナナの皮が落ちていた。

 ご丁寧に四人分。

 ああ、滑って転ぶのを期待している訳だ。

 そんな簡単な罠に引っ掛かるものか。

 シトラス達はヒョイッとまたいだ。

 すると、


「わっ!」


 床が割れ、巨大な網がシトラス一行を包んだ。

 そのまま天井高く吊り下げられる。


「キャハハハハ! 引っ掛かった。お前達、馬鹿だなあ」


 赤いパンツをはいた猿、というよりチンパンジーに近い魔物が笑いながら登場した。

 シトラス達は網に絡まった手足をほどこうともがいている。


「にしても、いい眺めだ。こんなに上手くいくとはなあ」

「くっそ〜。バナナは引っかけだったのか……!」


 悔しそうなシトラスの声。

 魔物はますます笑う。


「そう。バナナの罠はありきたりだから、もう一つ用意しておいたんだ。キャハハハハ!」

「くっ。そう言えば、お前の名は?」

「名前? 名前はそうだな。つけられて無いな。けど、赤いパンツを履いているからチンパンツー。なんちて」

「ダジャレかよ……」


 呆れるシトラス達に、敵はムキになった。


「あ〜〜嘘だ。嘘嘘。オイラにはチンっていう名前がある。それにさっきのとこは、笑うとこだぞ」

「そんな事言われてもなあ」

「あ〜分かった! 時間稼ぎだな。網から出るまでの。そうはさせないんだモーンキー!」


 ガチャッ。

 壁から槍が飛んで来る。


「そのまま串刺しになるといいよ」


 が、槍はシトラス達を突き刺すどころか、彼らの上を通過し、網を突き破った。

 床に着地する。

 チンは慌てていた。


「しまった〜〜。もう少し下だった〜〜!」


 自由になったシトラスとサララは、剣を抜く。

 チンは震え、命乞いをする。


「わ〜、待って待って。オイラが悪かった。ほら、このバナナをあげるから。甘くて美味しいバナナだよ」


 シトラスとサララの前に、バナナの皮をつき出す。


「わあ美味しそう。っているか〜! これ皮じゃねーか!」

「ちっ、バレたか」

「そりゃバレるわ!」


 シトラスが剣をチンの首もとに近づける。


「あ、あわわわわ……」

「チン。お前に聞きたい事がある。ここは最上階か? 宝箱は、何処にある?」

「そんな事を喋ったら、ジョセフィーヌ様に叱られてしまうよ」

「ジョセフィーヌ様?」

「この上の最上階にいるオイラ達のボスだよ。最上階は、あの天井の色が違う所を刺激すると行けるよ」

「そうか。いろいろ教えてくれてありがとな」

「え? お、オイラ、あわわわわわ……」


 チンは、自分が口を滑らせていろいろな事を喋ってしまった事に慌てた。頭を抱え、泣きそうな顔になる。

 目の前のシトラス達を、キッと睨み付けた。


「こうなったら仕方ない。オイラ、戦う!」


 チンは集中する。

 みるみる、体が巨大化していった。

 それだけじゃない。姿も変わっていく。

 それはチンパンジーというより、ゴリラだ。

 変化したチンは、ロックに向かって拳を振り下ろした。


「うわっ、危ねー!」


 床に拳の痕がつく。

 ジェニファーが、驚愕の表情で見上げた。


「え〜。前の姿の方が可愛かったのに〜!」

「ジェニファー、そんな事言ってる場合じゃないだろう?」

「でも、シトラス……」

「……! こっち!」


 シトラスがジェニファーの手を引いた。

 チンが二人を踏み潰そうとしていたのだ。


「ジェニファー、ケガは?」

「え? うん、平気よ」


 確かにシトラスの言う通り。

 今は戦いに集中しなきゃ。

 ジェニファーは杖を構えた。

 シトラス、サララ、ロックもそれぞれの武器を持つ。


「たあーっ!」


 サララがジャンプして斬り込んだ。

 が、皮膚にかすっただけ。

 敵の動きは、早い。

 逆に右手で吹き飛ばされる。


「きゃっ!」

「姉さん!」


 ジェニファーが魔法を放った。


「アイシクルレイン!」


 尖った氷の粒が、雨のようにたくさん降り注ぐ。

 チンは怯んだ。

 ロックの矢も命中。

 チンはシトラス達を追いかけ、暴れまくる。


「グオオオオオ……!」

「わ、わ、わ、わ〜っ!」


 強力な拳と蹴りに、シトラス一行は逃げ惑うばかり。


「シトラス、どうすんだよ。このままじゃ殺られちまうぞ!」

「そんな事言っても……。ん? そうだ、あれだ!」


 シトラスはある物を見つけ、走って行った。

 それはバナナの皮。

 それをチンの通り道に置き、手招きした。


「チン、こっちだよ。おいでおいで」


 チンはシトラスに向かい走る。

 そして思惑通り、


 ズッテーン。


 バナナの皮に滑ってこけた。


「今だ、ジェニファー!」

「うん!」


 ジェニファーが、バーニングバードを放つ。

 黒焦げのチンに、シトラス、サララ、ロックが一斉に攻撃した。

 チンは白目を向く。

 徐々に、姿が元のチンパンジーに戻った。


「チン……」


 ジェニファーに見守られ、チンは消えて行く。

 灰色の石を残して。


「ジェニファー……」

「うん……」


 石を拾い、彼女はシトラスの隣へ。

 そっとシトラスは、彼女の手を握る。

 ロックは、チンに言われた通り、天井の色が違う場所に矢を射った。


 ガラガラ。


 縄ばしごが降りて来る。

 シトラスとロックが先に上り、女の子達の手を引いた。


「んしょ」


 最上階に到着。

 椅子に誰かが座っていた。

 ピンクのドレスを着ている。


「あ〜ら。可愛い坊や達じゃないの」


 逞しい上半身。

 顎には青くざらざらした髭の跡。

 オレンジ系の口紅。アイシャドウ。

 角刈りの髪。

 どう見ても男だ。

 さらに、ドレスの裾からはみ出している足は、


「た、タコ……」


 立派な吸盤が付いた、八本足だった。


「そう。アタシはタコの魔人。ジョセフィーヌよ。よろしくね❤️」


 シトラスとロックに、ウィンクをして見せる。

 二人は口を押さえた。


「あら、何? 男が男を好きになっていけない訳? 好きになるのは自由でしょ? そうよね」

「え、ええ、まあ……」


 シトラスとロックはたじたじ。

 ジョセフィーヌは迫る。


「まあ、可愛い子達ね。ちょっと、遊んであげるわ」


 そこへ、ジェニファーとサララが立ち塞がった。
















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