リトルフラワー
薄暗い通路を、かがんで歩く。
天井も低いため、シトラス達より背の高いジョセフィーヌは苦労していた。
シトラスが気遣う。
「ジョセフィーヌ、辛くない?」
四つん這いで進むジョセフィーヌは笑った。
「平気よシトラスちゃん❤️この姿勢で進めばなんとかなるから。それに、綺麗な物を見るのに、これ位の苦労はいとわないわ」
「そう。それなら良かった」
とは言うものの、いつまでもこの体勢ではつらい。シトラス達も、背中を丸めて歩くしかなかった。しかもシトラスは、ロックを支えている。
「悪いなシトラス。お前に負担をかけて……」
ずっと氷の中にいたせいで寒いのだろう。いつもより声が小さかった。ジョセフィーヌが厚手のタオルをかけてくれたが、まだ震えている。
「いいさ。こっちこそこんな状態のお前を歩かせて済まない」
「気にするな。捕まったオレも悪い。それに、歩いていれば少しは暖かくなる」
「そうか……」
シトラスはなるべくゆっくり歩いた。ジェニファーやサララもロックの体調を気遣い、ペースを合わせる。
道幅が広くなって来た。
下に向かって斜めに傾いている。
「何かあたし達、地下に向かっているみたい」
ジェニファーの言葉に、サララが頷く。
「そうね。あっ、通路が終わるようよ」
天井が高い、開けた場所に出た。
シトラス達は腰を伸ばす。
ジョセフィーヌも、思い切り伸びをした。
薄暗い通路と違い、明るい。
と言うより、何かが輝いている。
「あっ、シトラスちゃん、あそこ」
ジョセフィーヌが、床が少し盛り上がっている所に咲いている花を見つけた。
キラキラと、虹色に発光している小さな花。
その美しさに、一行は見とれた。
「これが、幻の花……」
「そうよシトラスちゃん❤️これがアタシの見たかった花、リトルフラワーよ」
「サララさん、綺麗ですね」
「ええ、本当に。ジェニファー」
ロックは黙ったまま、感動していた。
世の中に、こんな美しい、不思議な花があるのか。
まさに目の保養だった。
「さあ、それじゃあこの花をこのガラスの瓶に入れよう!」
シトラスは、ロックをサララとジェニファーに任せ、リトルフラワーを瓶に入れる。
瓶にはあらかじめ水が入っていた。
おじさんが、花が枯れないように入れてくれたのだろう。
するとジェニファーが呟いた。
「ねぇシトラス。また同じ道を帰るのかな?」
「えっ? うん、そうだな」
シトラスも戸惑う。
花を手に入れた以上、村に帰らないと。
けど、道は今来た道しかないみたい。
また頭を曲げるのは、嫌だな。
「その心配は無いみたいよ。これを見て」
ジョセフィーヌが呼んでる。
大きな丸の中に星のマーク。
それが青白く光っていた。
リトルフラワーから離れた場所にあったから、気がつかなかったのだ。
「これは、テレポートゾーンね」
「そうよサララ。良く知っているわね。ここに乗れば上手くすると、外に出られるかもしれないわよ」
「でも、何処に行くか分からないんだよね」
「そうシトラスちゃん。だけど、そんな遠くの国に行くって事は無いわ。テレポートゾーンは本来、地下がある洞窟などで使われる物だもの。これは、緊急脱出用ね。多分」
「そうなんだ」
「安心した? では、これに乗りましょう。ロックちゃんも、早くこの城から出たいでしょうし」
「うん!」
五人が一斉にテレポートゾーンに乗ると、光が彼らを包んだ。そして、一瞬でどこかに飛ばす。
こうして、氷の城を後にした。
ビュン。
シトラス達が飛ばされた場所は、雪山の一角だった。
城に向かう時に、ジョセフィーヌが通らなかった別れ道の一つ。
テレポートゾーンから降りる。
こんな所に繋がっていたのか。
「あ〜あ。早くこれに気づけば、リトルフラワーまで一直線だったのに」
と、ジェニファーが悔しがる。
シトラスが慰めた。
「仕方ないよジェニファー。あの城の魔物を倒さないと、幻の花を手に入れても村のみんなが苦しむ事に変わりない。それに、ジョセフィーヌがいたから、城に行けたんだ」
「そうよね。ジョセフィーヌ、ごめんなさい」
「いいのよ。アタシも花が見たかったし。それにもう、帰れないから……」
「ジョセフィーヌ……」
「もう。平気よ。落ち込んでいる暇は無いわ❤️さあ、スノブル村とやらに行きましょう」
軽くウィンクをすると、ジョセフィーヌは歩き出した。
鼻歌まで歌っている。
あまり深く考えないタイプらしい。
シトラス達も、顔を見合せて笑い、続いた。
道なりにとにかく進んでみる。
見覚えのある場所に出た。
シトラス達とジョセフィーヌが再会した場所だ。
山の頂上。
後は村に向かって下るだけ。
はやる心で、駆け降りた。
村に着いた時、ジョセフィーヌとは入り口で別れた。彼女と仲良くなったとはいえ、魔物というのは事実だ。だから、村には入れない。
ジョセフィーヌは、笑いながら去った。
相変わらず、静かな村だ。
迷わずおじさんの家に行く。
心配して待っていてくれたようで、玄関で花を渡したシトラス達一人一人に礼を言った。
そしてハグ。
その後、家の中でシトラス達を休ませて、自分は花を持って各家を回った。
人々の声が、村の中に戻ってくる。
子供達の笑い声。
これが本当のこの村の姿なんだろう。
シトラス達は、喜びに溢れていた。
小さくガッツポーズ。
「大ラッキー!」
彼らの笑顔が輝いた。




