幻の花を求めて
アイシーと戦うシトラス達。
氷の城なので、床も凍っているかと思ったが、そうでもなかった。
ただ、動いていないと寒い。
白い息を吐きながら攻撃する。
「炎天狩射!」
「バーニングバード!」
「桜花斬!」
「疾風!」
彼らの戦いぶりを見ながら、ジョセフィーヌは感心していた。
「相変わらずやるわね、あなた達。では、アタシも」
フワッと宙に浮かぶも、まだ大ダコの姿にはならない。
上半身は、人間の男のまま。
たくましい腕で、ドレスをめくり上げる。
「さぁ見て、アタシのセクシー姿。うふふ、キレイでしょ❤️」
アイシーは上を見上げるが、タコの足を持つオカマ、いや失礼。おネエの姿を見て、ウッと口を押さえた。
「あら失礼ねぇ! アタシはこうして生きて来たのよ。あ、こんな事してる暇ないわ。攻撃、攻撃っと」
タコの足がピッと伸びてアイシーを狙う。
「受けなさい。タコ足の輪舞!」
ズババババッ。
空中からの無数の激しい蹴り。
早くて目が追いつかない。
一体いくつの蹴りを浴びせかけているのか。
アイシーが減っていく。
シトラス達はその華麗な攻撃に見とれていた。
声援を送る。
「凄いよジョセフィーヌ。カッコいい!」
「いやんシトラスちゃん、もっと言って❤️心に響くわ〜。でもカッコいいってのは無しよ」
「う、うん。素敵だよ。ジョセフィーヌ」
「いやん、アタシ、幸せ〜〜」
可愛い坊や、シトラスの応援でジョセフィーヌは俄然やる気になり、アイシーを全て倒した。
空中から降りて来る。
シトラス達は拍手で迎えた。
「ジョセフィーヌ、凄い。あたしびっくりしちゃった」
「わたしも同感。強いのね、あなた」
「ありがとね。サララ、ジェニファー。あなた達もやるじゃない」
「え〜〜? そんな事あるけど〜〜」
「まあ、フフッ」
魔物と人間の立場を超え、友情が芽生えたようだ。
シトラスとロックは驚いたが、フッと笑った。
これでいいのかもしれない。
魔物だっていろいろいるから。
「じゃあ、先に進もうか。奥があるみたいだから」
シトラスとロックが歩く。
置いていかれないように、ジェニファー達もついて来た。
寒い。
奥に行くほど、冷気が広がっていく。
急に、先頭のシトラスが立ち止まった。
「ど、どうしたのよシトラスちゃん」
驚いてぶつかりそうになりながら、ジョセフィーヌが聞く。
シトラスの指は、前を指していた。
「ジョセフィーヌ、見て」
「あらあ〜〜」
大穴が開いている。
底は暗くて見えない。
向こう岸まではかなりの距離があった。
だが、その向こう岸に、上に昇る階段がある。
「この穴を飛び越えるしかないのね。ん? あれ、明かりが……」
穴の上を、天井に設置されたライトが照らした。
石の橋が映される。
その橋は一つ一つのブロックになっていて、あっちに行ったりこっちに行ったり、複雑に曲がっていた。
例えるなら蛇のようだ。
明かりが消えると、橋が見えなくなる。
「なるほど〜。明かりがついている時は橋が見えるけど、暗闇で足を踏み外したらまっ逆さまね。橋もぐにゃぐにゃだし、恐るべし女ね。さすがだわ」
「感心してる場合じゃないよ。オレ達先に進まなきゃ」
「ん〜、そうねぇ」
その時、ジェニファーが手を上げた。
シトラスが閃く。
「そうか、ジェニファー、あれか」
「そうよシトラス。良く分かったわね」
「まあ、付き合いが長いからな」
ジョセフィーヌが、なになに、二人ともいいムードじゃん。で、あれって何なの? って聞いてきた。
ジェニファーは杖を構える。
「シャイニング!」
杖の先の宝石が光り、橋を照らす。
ただ、ジェニファーの気力がもつか。
ジグザグな橋を、シトラス達は急いで渡った。
「ジェニファー、ありがとな。疲れてないか?」
無事に向こう岸にたどり着き、シトラスがジェニファーを気遣う。
「うん、大丈夫だよ」
ジェニファーは、右手の人差し指の指輪に願った。
願いの指輪。
この指輪に願うと、少しだけ魔力を回復してくれる。
シトラスの顔を見た。
「よし」
回復が済んだようだ。
階段の手すりに手を掛ける。
湿り気があった。
凍っていたという事なのか。
気をつけないと滑り落ちてしまうかもしれないので、急ぎつつも慎重に駆け上がった。
氷の城二階。
すぐ右側に部屋があった。
期待を込めてドアを開ける。
宝箱発見。
ギイイイ。
中を確認したけど、何もなかった。
部屋にも特にめぼしい物は無し。
残念だな、と後にする。
今度は左側の部屋へ。
あら、宝箱が三つ並んでいる。
「シトラスちゃん、どれから調べる?」
ジョセフィーヌが、早く中身を見ようよという風に急かす。
ロックもジェニファーもサララも、さっきは何もなかったから今度こそという目をしていた。
「そうだな。じゃあ、左から」
勇者の勘でそう言った。
ガチャン。
100コイン入っていた。
「やったな、シトラス」
「ああ。じゃあ次は右だ」
ガチャン。
良く目を凝らして奥まで眺める。
「何もないね」
「そうだね姉さん。残りは……」
「この宝箱ね」
ジョセフィーヌが開けようとしている真ん中の宝箱。
他の二つより、ちょこっとだけ大きく、色も違う。
「これは期待できるかもね。シトラスちゃん」
「ええ、早く開けましょう」
「では、早速……。ん?」
何かを感じた。
ゾクッとした悪寒のような、魔物の気配。
ガタガタと、宝箱が動き出す。
「シトラスちゃん、気をつけて!」
宝箱に目が生える。
鋭い歯が何本もある大口を広げ、ジョセフィーヌに跳びかかった。
「くっ……」
腕を噛まれる。
赤い噛み跡が、くっきりと残った。
「ジョセフィーヌ!」
「大丈夫よロックちゃん。それよりこいつ、フェイボーよ」
本当はフェイクボックスと言うらしいのだが、長くて言いにくいので、仲間達に略されたようだ。
「かかって来るわよ! 構えて!」
ジョセフィーヌの指示通りに、シトラス達は武器を握った。
カカカカカカカ。
フェイボーが不気味に笑う。
そして、襲って来た。
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