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到着、雪の国

 ビッグスケルトンバードが、翼を羽ばたかせる。

 その風にあおられ、シトラス達は転んだ。

 さらに歩いて来た敵に強い風を浴びせられ、身体が浮いてしまう。

 飛ばされ、海に落ちそうになる。

 骨だけなのに、なんて力だ。

 デッキの手すりを掴む。

 魔物は風を止めない。

 船が揺れる。

 手を離したら、海にまっ逆さまだ。

 サララとジェニファーは必死な顔だ。

 腕が震えている。

 何とかしないと。

 その時、


「キャアアア〜!」

「ジェニファー!」


 飛ばされたジェニファーの手を、シトラスが掴んだ。

 しかし、片手で引っ張り続ける力はほとんど無い。

 いつまで持つか。


「シトラス君!」


 魔物の後ろの階段から、エンバーが駆け上がって来る。

 エンバーは持ってきたハンマーで、ビッグスケルトンバードの脚をコツンと叩く。

 膝がガクンと崩れ、風が止んだ。


「今だ!」


 シトラスは船のへりに足を掛け、まずジェニファーを手すりの中に入れた。その後、自分も入る。

 ロックとサララも、華麗に手すりを飛び越えた。

 ビッグスケルトンバードが、姿勢を正す。

 両翼を、前に出した。

 また羽ばたきで風が来ると思ったら、今度は骨が一本一本飛んで来た。


「何っ!?」


 先が尖っている。

 ジェニファーが避けきれずに、服を裂かれた。

 ビリッ。

 微かに腕から血が滲む。

 シトラスがそっちを見た。


「ジェニファー! お、おお〜」


 思わず声が出る。

 上着は大きく破れ、ブラジャーがあらわに。

 ロックも動きを止めた。

 白くてフリルがついた、可愛いブラジャー。


「い、いやあああっ。見ないで〜〜!」


 ジェニファーは恥ずかしくなり胸を押さえしゃがみ込む。

 シトラスとロックに見られた。

 泣きそうだ。

 サララがサッと、ハンカチで隠してくれる。

 う、コホン。

 咳払いをして男の子達は、ビッグスケルトンバードの方を向いた。

 敵もじっと見つめていた。

 バラバラになった骨が、元通りになる。

 また骨を投げられる前に、


 ダッ。


 シトラスは先制攻撃を仕掛けた。

 一気に間合いを詰める。

 ビッグスケルトンバードの体を十字に斬った。


十字(クロス)斬!」


 コオオオオオ……。

 敵が咆哮を上げる。が、倒れない。

 キッと睨み付けると、翼の骨を飛ばしてきた。

 シトラスは後ろにジャンプしながら避ける。

 ロックの矢がビッグスケルトンバードの胸を貫き、エンバーの脇を抜けて手すりにぶつかる。

 それでも、起き上がろうとしていた。


「シトラス、トドメはあたしにやらせて」


 ハンカチで胸を隠し立ち上がるジェニファー。

 魔法の杖を構える。

 足下に浮かぶ魔法陣。


「フレアインパクト!」


 ビッグスケルトンバードを包む炎柱。

 ゴウゴウと燃える炎の中、悶えながらビッグスケルトンバードは死んだ。

 後に残ったのは赤い石だけ。


「あたしに、恥ずかしい思いをさせた罰よ」

「ま〜、俺は嬉しかったけど」

「そうね。シトラスとロックもばっちり見てたもんね。黒焦げにしてあげようか?」

「あわわわ。冗談じゃない。逃げるぞ、ロック」

「ああ!」


 ジェニファーに物凄い目で睨まれたシトラスとロックは、慌てて船内に逃げた。

 ジェニファーが追う。


「こら〜、待ちなさい」

「待てないよ〜〜」


 そんな少年少女の様子に、サララは呆れ顔。


「まったくもう。あの子達ったら」


 エンバーは苦笑しながらフォローする。


「いいんじゃないの? 若いって事で」


 この二人は大人の対応だな。

 って、サララまだ17だよ。



 三人のドタバタ追いかけっこは、ジェニファーが杖でシトラスとロックの頭をコツンと叩いた事で終了した。

 ジェニファーはそれで満足したかもしれないけど、叩かれた男の子達は、


「痛って〜〜」


 あ〜あ、たんこぶができてる。

 自業自得かな。

 それにしても、少し可哀想だ。

 あれは事故みたいな物だったし。



 そんなこんなで、シトラス達がエンバーの船に乗って二日目。船員達とも仲良くなり、別れが惜しいなと思っていた矢先、目的の島が見えてきた。

 操舵室の窓から、その白い島を見る。


「シトラス君、着いたよ。あれがノースエガリアだ」


 港に到着。

 空気が寒い。

 一面雪景色の国、ノースエガリア。

 エンバーが出て来てくれた。


「シトラス君。ここでお別れだ。君達との旅、楽しかったよ」

「エンバーさん。ありがとうございました。ここまで送って頂いて。おかげで俺達は、また違う世界を見る事ができます」

「元気でな。魔王を倒す旅、応援しているよ」

「はい!それじゃあ」

「ああ」


 シトラス達を降ろし、エンバーの船はビグアック大陸に帰って行く。

 シトラス達は、付近の村を求めて歩き出した。



 この世界のどこかにあるはずの、誰も知らない、魔王の城。

 暗く、重い雰囲気が漂う。

 がっしりした体格の、鎧を着た龍の戦士が、魔王ダイロスに呼び出されていた。


「ドラモスよ」

「ははっ、魔王様」

「各地でストーンモンスターを倒している、シトラスという小僧は知っているか?」

「はっ。勇者と名乗り仲間と旅をしている小僧でございますね」

「そうだ。その小僧に我ら魔族の力を教えてやれ。まだ、目覚めていない今のうちに。メモリーリングを手に入れる前に」

「メモリーリング。魔王様の力を封じるという、勇者の秘宝ですね」

「そうだ! それにわたしは封じられていた。だが、それも昔の話。今ここにわたしは復活した!」

「そして、世界をこの手に!」

「行けドラモス。我らの悲願を、叶えよ!」

「はっ」


 ドラモスは出て行った。

 ダイロスは、深く息を吐く。


(勇者よ。わたしは世界を手に入れる。お前には、負けない)


 シトラス一行に、もうすぐ試練が訪れようとしていた。







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