表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/635

ハナノ村に到着

「グアアーッ!」


 クマッチの振りかざすこん棒が、シトラスの目の前で地に穴を空ける。さすが体格がいい。一撃でこんな穴を空けるなんて。

 ぶつかったら怪我は間違いないので、シトラスはこん棒の上に乗って、高く飛んだ。


「飛翔斬!」


 クマッチはこん棒を持ち上げ、シトラスの剣を受け止める。


「わっ!」


 こん棒を払われ、飛ばされた。

 一回転して着地する。


「炎天狩射!」

「ファイヤーショット!」


 ロックの矢とジェニファーの魔法が同時に発射される。

 それすらもクマッチは避けた。

 と、そこに、


「演舞斬!」


 火の攻撃を避けてホッとしていた所に、サララの剣技が決まる。


「グオッ」

 クマッチは、少し退(しりぞ)いた。


「時間差攻撃というやつか。やるな」


 あれだけ動いたのに、息が乱れていない。

 この魔物、強い。

 シトラス達の方が、疲れていた。

 笑わせ隊の皆さんは、木の陰で、戦いを見守っている。

 シトラスが勇者だと名乗って驚いたようだが、今はその場から動けない。

 再び、シトラスが剣を構えた。


「疾風!」


 残像を残すその動きに、クマッチは翻弄される。

 こん棒が当たらない。

 逆に斬られた。


「グオッ」


 膝をついた。

 シトラスの耳に、ジェニファーの声が届く。


「シトラス、離れて!」


 サンダーボムが、クマッチの頭上に落とされる。

 彼は仰向けに倒れた。

 笑わせ隊の人々が、木の後ろから出て来ようとしている。

 シトラスは止めた。


「まだです。皆さん!」


 ガキン。

 クマッチが起き上がり、シトラスをこん棒で殴る。

 シトラスは、地面に転がった。

 頭から、血が出ている。

 立てないままの彼を、クマッチが狙う。


「バーニングバード!」


 炎の鳥が、華麗に飛ぶ。

 狙いはクマッチではなく、こん棒。

 あの武器がある限り、勝てない。


「熱ちちちちちっ!」


 クマッチがこん棒を落とした。

 こん棒は、炭クズになる。

 ロックがその隙に、シトラスを安全な場所へ。


「待ってろシトラス。今手当てする」

「ああ、悪い……」


 呆然としているが意識はあるようだ。

 ロックが、自分のハンカチを巻いてくれる。

 いつ怪我人が出るか分からないので、冒険者達のハンカチは大きめだ。

 ジェニファーは、本当はすぐにでもシトラスの元に行きたいのだが、サララと一緒にクマッチの気を引くのに精一杯だ。

 ロックに支えられ、シトラスが立ち上がる。


「本当に平気なのかシトラス。頭を打ったんだぞ」

「ああ。今はクマッチを止める」

「分かった。でも無理だったら、オレ達に任せろ。いいな?」

「ああ……」


 クマッチの方を向く。

 サララが演舞斬で攻撃していた。

 ジェニファーは、少し離れた所で魔法の準備。

 クマッチが怯んだのを見計らい、ロックが矢を放つ。


「飛天狩射!」


 クマッチの胸に刺さった。

 ジェニファーも仕掛ける。


「アイシクルレイン!」

「グハアッ!」


 さすがのクマッチも、フラフラしていた。

 行くなら今しかない。

 シトラスは、懐に飛び込んだ。


「五月雨!」


 激しい剣の雨。

 クマッチは白眼を向きそうになるものの、最後の力でシトラスの右肩を噛んだ。

 牙が刺さる。


「……痛っ」


 しかしシトラスも負けてはいない。

 剣が深く、クマッチの腹にのめり込んでいた。


「グウ……」


 天に昇るように、煙と化すクマッチ。

 赤い石を残し、消えた。


「シトラスッ!」


 ジェニファーが駆け寄る。

 彼はその場に座り込み、ジェニファーにもたれかかった。

 ロックとサララも来た。


「大丈夫か、シトラス。頭フラフラするのか?」

「ああ……」


 息が荒く、聞き取りづらい声だった。

 ロックは言わんこっちゃないという顔で、彼を横にしようとする。

 笑わせ隊の人々が、そこに走って来た。


「待ったバンダナボーイ。下手に横にしないほうがいいよ」

「えっ、でも……」

「まぁ、ここはミー達に任せて」


 笑わせ隊の女性二人が、回復魔法でシトラスの傷を癒す。

 ついでにロック達の分も。


「ありがとうございます。助かりました」

「あの魔物から、ミー達を助けてくれたお礼だよー。本当、君達、強かったね」

「ところで、あなた達はこれからどうするんですか?」


 サララが尋ねた。

 眼鏡の男性は、即座に答える。


「実はね〜、この先のハナノ村という所に呼ばれているんだ。そこでイベントをやるらしくて、楽しい音楽を奏でてくれとね〜」

「ハナノ村、ですか?」

「そうだ! 君達も、ミー達と一緒に来ない? 少しその村で休んだらいいよー。勇者ボーイもねえ」


 その笑わせ隊の人々の提案に、シトラス達は乗る事にした。

 笑わせ隊の人達が、隠していた馬車を持って来る。

 それにシトラス一行を乗せてくれた。

 笑わせ隊の女性二人も乗り込んで来る。

 残った三人の男性は、外で馬と一緒に歩き出す。

 悪いと思ったシトラスとロックが降りようとしたが、眼鏡の男性に止められた。


「いいよー、遠慮しないで。キュアリーで怪我は治ったかもしれないけど、疲れは取れてないよね。それに勇者ボーイ。頭まだフラフラするよね〜。無理ないよ。あんな強く殴られたら。だから横になってて。刺激が少ないように、ゆっくり行くから」


 ここでも、人の温かさがあった。

 シトラス達は笑わせ隊の男性の言葉に甘えて、馬車の中で体を休める。

 花のかぐわしい香りが漂ってくる。


「オー。もうすぐハナノ村に着くよ! この村は、花畑で有名な村なんだ〜」


 入り口に馬車を止め、馬を休ませる。

 馬達は、村の外にある屋根付きの馬小屋の中で、草を頂いた。

 笑わせ隊の人達は、村長さんに話を聞く為、シトラス達とここで別れた。

 シトラスは、ロックに肩を借りながら村の中へ。

 サララとジェニファーも、後ろから支える。

 この村でやるイベントって、一体何だろうな。



 その頃、

 村に入ったシトラス達を、崖の上から、ある人物が見ていた。

 シトラス達が村に消えると、その人物も動き出す。

 その人物とは、そう、あの男ー。

















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ