第77話 金をくれ
「ということで、お金をくれ」
「どうゆうことで!?」
ロイスが素っ頓狂な声を上げる。
「俺の話を聞いてたのか!?」
「も、もちろん聞いていたぞ! 奴隷の人たちを助けるのだろう? わかるぞそれくらい!」
「ロイスさん、奴隷を助けると言っても色々な方法がありますけど、ひとまずは正攻法で奴隷を買うということじゃないでしょうか?」
フェリシアからのフォローが入る。
ロイスはちゃんと話を聞いてくれていたのか疑問は残るが、まぁそれはおいておこう。
いざこざに巻き込まれるのはごめんだし、普通に購入するという形なら何も問題はない。
今は我慢するしかないが、売り物として売られているなら買えばいいだけなのだ。
つまり自分がお金を稼げば稼ぐだけ奴隷の人たちを助けることができる。
幸いにもダンジョンではお金になるようなアイテムがたくさん手に入る。
恐らくロイスと俺だと普通の冒険者たちが行くことができないようなところまで探索するできる。
そういったところには普段集めることができない希少な素材やアイテムが手に入るはずだ。
あまり時間をかけていられないが、それが最も効率が良い方法だろう。
だがその前にお金があるのなら、何人か奴隷を購入したほうがいい。
あまり購入する、とは言いたくないけどな……。
人は購入するもんじゃない。
お金稼ぎをするにしても、ダンジョンに潜るのだからモンスターもたくさん倒すことになる。
そこに何の戦闘経験のない人がいくと簡単にレベルアップすることができる。
俺とロイスだったらそこそこ強いところでも安全に対応することができるし、安全にレベリングすることが可能だ。
お金も稼げて、奴隷の人も強くなるので一石二鳥。
稼いだお金でまた奴隷を買う。
引き取った奴隷たちの中には段々と戦闘経験を積み、新人のめんどうを見ることができるようなリーダー的な存在も出てくることだろう。
そういった人にはパーティを新たに組んでもらい探索をしてもらう。
そうしてどんどんと規模を増やしていけばかなりの人数を救うことができる。
奴隷商というものを根絶できるわけではないが、苦しんでいる人を助けて行くことは可能なのだ。
それが話しあった大体の内容。
だから、今必要なのは資金ということになる。
俺も少し持っているが、1回潜っただけではそう簡単に買えるような金額ではない。
だからお金を持ってそうなロイスにせびるのだ。
「フェリシアの言う通りだぞ。 だから金をくれ」
「なるほどそういうことか、だがそれは無理だな」
「俺とフェリシアの話聞いてたのか!?」
「ちゃんと聞いていたぞ! お金があれば奴隷を買えるということなのだろう!? だがそれは無理なのだ!」
「いやいや、ラウム王国の聖騎士サマがなんで金ないんだよ? しかもお前、貴族とかなんちゃらって言うもんなんだろ? 金持ちじゃないのか?」
「残念ながら私はほぼ無一文だ!」
今とてつもないパワーワードを聞いた気がする。
無一文ってなんだっけ?
その言葉の意味を反芻し、脳に理解させる。
「聖騎士っていったら国家公務員みたいなもんだろ!? しかもとびっきり位の高いやつのはずだ! なんでそんな奴が金ないんだよ!?」
「……いやぁ~そう言われてもなぁ~。 大体ほしいものはタダでもらえるのだから必要ないと思っていたのだ。 家もお金に困ってないようだったし、私の給料はすべて孤児院とかにあげちゃっていたのだなー」
「まじなのか……?」
「まじだぞ」
お金の無駄遣いをしているわけじゃないし、しかも孤児院に寄付するという聖女っぷり。
これには少し驚いた。
それはそれでとてもいい使い方をしていると思う。
なんだかんだ言ってロイスは人のために尽くせる人なのだ。
「……じゃあどうしよう? 諦めてとりあえずダンジョンで一稼ぎするべきか?」
「私はそれでもいいぞ」
特に急ぐ必要はないかもしれないし、それでもいいか。
今はロイスのアイテム袋があるし、回収できるアイテムの数も相当増えている。
1回だけで相当な金額を稼げそうだ。
「そういえば、私の足を作ってくれたこの金属とかは売れたりしないんですかね?」
「んーそれかぁ~」
高く売れそうな気がするけど、入手手段がかなり限られているからあまり売りたくはなかったんだよな。
まぁいっぱいあるので売ってもいいのだが。
めちゃくちゃ希少価値の高いミスリルよりも高価な気がしてならない。
もし売れたら相当な金額になるだろう。
「この金属って売れるのかな?」
「……ミスリルの剣で歯が立たなかったところを見ると、オリハルコンかアダマンタイトが考えられる。 だが、そうなってくると国宝級レベルの宝物だな……普通の店じゃ扱ってはくれないかもしれない。 そもそもオリハルコンやアダマンタイトの性質は大体わかっているが、これはどちらの性質とも合ってないのだ」
「やっぱりこれとんでもない金属なワケか」
「そんなものが私の足についてるんですか!?」
「まぁいっぱいあるしな……」
「あわわわわわわ……」
フェリシアが慌てふためく。
かわいい。
「な、無くしたらどうしましょう……」
「足にくっついてるんだから、無くすことなんてないと思うぞ」
「き、気を付けます!」
「そういえばロイスも剣がなかったんだよな? 同じもので作っとくか?」
「おお、そうしてくれるとありがたい! やはり剣がないとどうにも落ち着かないからな」
一応もう一つ拾った金属はある。
機械兵の金属だ。
これはミスリルでも傷をつけることができたのでそれほど価値は高くないかもしれない。
ロイスにアイテム袋から取り出すように促す。
「この金属は売れないかな?」
「私も何でも知っているわけではない。 これもかなり希少なものなのかもしれないが、ミスリルほどの強度はない。 物理的な性質で言えば完全にミスリルの方が上だろうな」
「なるほど、これは売れるかもしれないわけか」
「どちらにせよ、一回ギルドに言った方がいいかもしれない。 フェリシアの冒険者登録もするのだろう?」
「ぜひ、お願いします! はやく私も役に立ちたいです」
「じゃあ準備が出来たら行ってみるか」