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落ちこぼれ現代魔法使いの異世界召喚  作者: 雲珠
第二章 奴隷少女と異世界最深部編
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第73話 事象の地平線

「単刀直入に言おう。 現在我々のすむ世界は危機に瀕している。 如月迅、あなたの力を貸して欲しい」


 危機?

 それは魔族が攻めてきて、この世界が滅んでしまうということだろうか?

 俺としてもこの世界が危機に瀕しているならば助けたい。

 ここに呼ばれた理由でもあるし、戦いが嫌だから、といって逃げる気もない。


「魔族のことだろ? それなら俺たちの世界から勇者として召喚された人間が何人もいる。 もちろん力だって貸すし、助けるのは当たり前のことだ」

「如月の言う通り魔族はもう目と鼻の先に来ているということか……。 一層気を引き締めていかねばならないな。 ここに来たことで私も色々と吹っ切れた」

「如月迅、ロイス・ペディングフィールド……残念ながら魔族のことではない。 我々が欲しているのは強い戦力。 この世界とは異なる別次元の話だ。 強い戦士であれば魔族でも人間でも構わない。 これから起こるであろう魔族と人間の戦争も我々にとっては些細な問題だ。 強いものが生き残り、生き残った者が戦力になる。 魔族も人間も平等だ」

「お前は味方ってわけでもなさそうだな……」

「私は常に平等な存在。 この世界に生きている生命体すべてに味方する。 魔族も人間も関係ない」

「つまり、お前は強い戦力が欲しいだけで、この世界にはあまり興味がないわけか」

「そう思ってもらって構わない。 我々が欲しいのは奴らに対抗できる手段なのだ」

「……奴ら?」

「あなた方もすでに見ただろう。 ここまで来るのに対峙してきた機械のことだ。 無限に生成される機構蔦、破壊しても分裂し襲い掛かってくる機構ワーム、水中に潜み水を操る極小ナノマシン集合体、一切の破壊が不可能なダークメタルによる機構兵。 我々は奴らに対抗するすべを探している」

「げっ、水が動いていたのも機械のせいだったってのか」

「いかにも。 いくつか戦い方や有効な迎撃手段は確立されてきているのだが、カグヅチはそれらとは一線を画する能力だ。 詳しい能力の解析と奴らにダメージを与えるプロセスを把握したい」


 カグヅチについては俺もあまり詳しいわけではない。

 使えるからと言っても、単純に魔法式を転写して使えるようにしているだけだからだ。

 長い間、如月の家で守られ、秘匿されてきた技術。

 俺にそんな縛りはないわけだし、助けになるのであれば魔法式の提供も特に気にすることはない。


「魔法式を教えるくらいであれば特に問題はない」

「助かる」


 でも何か引っかかるな。

 蔦もワームもナノマシンもダークメタルの兵隊もたしかに対処に困るようなものだった。

 じゃあ、あのダンジョンのボスとして設置されていた金色の機械兵はなんだったんだ?

 有効打を悉く消し去っていく悪魔のような機械。


「問題はないんだが、あの金色の機械はなんだ? あれも敵だっていうのか?」

「あの機械は私が作ったものだ。 1点に特化しているだけでは検証にはならない。 どのような能力を保有しているのか、出力は実用レベルにあるのか、奴らに有効な手段となりうるか、それらを総合して判断する必要がある」


 ガブリエルは左手を湖面にかざす。

 すると金色の機械兵が現れた。

 さらに2体が出現し、どんどんと増えていき、背後には無数の人影が現れた。

 圧巻の光景であった。

 一体だけでも相当な戦力になるであろう機械兵がこんなに……。


「……つまり俺たちを殺そうとしたのもお前ということでいいんだな?」

「肯定する。 我々に必要なのは戦力だ。 いくつものフィルターを通して真の実力を測定しなければならない。 挑んでくるものがいればそれにふさわしい試練を与えるのは当然のことだ」


 確かに、ここに入ったのは俺たちの独断だ。

 入らなければ牙を向けられることもなかったし、こいつを攻めるのも違う……か。


「俺たちが途中で死んでいたらどうしたんだ?」

「その場合は自動的に我々の世界に転送されることになっている。 私たちの責任で死者が増えるのは好ましくない」

「だからこのダンジョンに入った冒険者は戻ってこなかったのか」


 ロイスがガブリエルに続く。

 胡散臭い話だが、想像を超えるような技術力がこいつにはある。

 信じがたい話だが彼らの世界に蘇生して転送させるそんなこともできるのかもしれない。


「どうだろう? さっそく我々の世界に来てはもらえないだろうか?」


 俺の力が必要とされているならば助けたい気持ちもある。

 ただし、俺が行ってしまった場合この世界はどうなるのだろうか。

 魔族と人間の戦争が起こり、一緒に召喚されたクラスメイト達が生死をかけて戦う。

 もしかしたら俺の力は必要ないのかもしれないが、被害は計り知れない。

 もちろん全滅してこの世界が滅んでしまうことだってあり得るだろう。


「今すぐに行くことはできないな。 俺にだってこの世界で守りたいものがあるんだ」

「そうか。 あなたがそう願うのなら、私に止める権利はない」

「悪いな」

「では、こういうことではどうだろう? あなたの死後、我々の世界に転生しその力を使ってもらう。 これならば、この世界で思う存分生きることが出来るし、我々の力にもなれる」

「え? ……いやお前たちの世界は危機に瀕していて大変な状態じゃないのか? そんな悠長に待っている時間があるのか?」

「この世界の時間は我々にとって微々たるもの、人一人の一生などとるに足らない。 人生を謳歌するといい」

「それなら構わないけどな……」

「ただし、気を付けることだ。 魔族側にもあなたと同じく事象の地平線へたどり着いたものがいる。 今は戦うつもりはないようだが、彼が本気を出したら、すぐ我々の世界に来ることになるだろう」


 脳裏に緑色の炎を宿した魔族を思い出す。

 あいつのことじゃないよな?


「もしかしてカノープスってやつか?」

「いかにも。 彼は魔族側の世界で私のような存在と対峙しすべてを薙ぎ払っていったのだ。 交渉の余地すらなかったと聞いている。 そうだ、もし彼に出会ったら我々の世界に来るよう説得してみてくれないだろうか?」

「冗談はよしてくれ……」

「希望的観測だ。 気にとどめておいてくれるだけでいい」


 その後、いくつか気になることを話し合った。

 もう二度とこの空間にくることはない。

 だから念入りに話を聞く。

 エリクシルも今後必要になるアイテムになるだろう。

 もらえるものは貰っておく。

 使えるモノは使っておく。

 何事も利用できるものは利用すべきだ。


 ひとしきり確認が終わり、お別れの時間だ。

 ガブリエルは安心したような顔をし、光の扉を生み出す。


「……役目は果たした。 良い人生を送ってくれ……」


第2章はここまでです。読んでいただきありがとうございます!

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