表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落ちこぼれ現代魔法使いの異世界召喚  作者: 雲珠
第二章 奴隷少女と異世界最深部編
74/95

第72話 機構世界のその先へ

 まどろむ意識の中、頬を叩くような感触が伝わってきた。

 ゆっくりと目を開けると、どこまでも続くような青空が飛び込んでくる。

 ここは天国なのだろうか?

 そう感じてしまうような景色だった。

 助かるような状態ではなかったし、不思議なことじゃない。

 自分のことよりもあの二人は無事だったのだろうか。

 それだけが気がかりだった。


「気づいたか如月!」

「……んぅ? えっ?」

「よかった!」


 よくわからないままロイスは俺に抱き着いてきた。

 ここにいるということは彼女も死んでしまったのか?


「目覚めたか。 よくぞここまでの試練を突破した」


 天使のような姿をした人物が俺に話しかけてくる。

 ……そうだ機械兵を倒してなんとかポーターまでたどり着いた。

 その先がこの場所だった。


「俺は死んだんじゃ?」

「それがHPの全損を意味しているならば、心配することはない」

「……そうか、俺はまだ生きてるのか。 ロイスも無事でよかった」

「何を言っているんだ! 私なんかより如月の方がひどい状態だったんだぞ!?」

「正直、俺ももうダメだと思っていたんだが……それよりフェリシアも大丈夫か?」

「ああ、安心しろ! あの子も無事だ!」


 よかった。

 とりあえずダンジョンの最深部までこれたのか。

 3人とも生きてたどりつけたのは奇跡かもしれない。

 しかし、あの天使は何者なんだ。

 男にも女にも見える美形よりの姿。

 このダンジョンの最終ボスか?

 それにしては敵意を感じない。

 感じないだけなのかもしれないが、ひとまず話し合える余裕はあるようだ。


「踏破者が目覚めた。 話を進めたいのだが良いだろうか?」

「いや、その前にお前は俺たちの敵なのか? エリクシルはどこにある?」

「あわてるな。 そうだな、お前たちはこのダンジョン初の踏破者。 疑問を持つこともあるだろう。 一つずつ回答しよう」


 宙に浮かぶ天使は語り掛ける。


「まず、私はあなた方の敵ではない。 無論、戦いを所望するのであれば応戦しよう」

「……信じていいんだな?」

「それはあなた方の自由。 私は常に真実を語る存在だ。 ただの情報と認識するのが最も正しい選択といえるだろう」

「言ってることがよくわからないが……まぁいい。 エリクシルはどこにある?」

「エリクシルを求めているのであれば、この空間に満たされている液体、これらがエリクシルというものだ」


 ……なんだって?

 見渡す限りに続いている水面。

 空を反射し美しく広がる光景。

 ……この液体全部がエリクシル!?


「ふざけているのか!?」

「そう思うのも自由。 あなたが瀕死の状態から回復したのもこの液体のおかげだ」


 嘘……だろ?

 本当のことだとしたらフェリシアの怪我も奴隷の呪いも溶けたのだろうか?

 慌ててフェリシアの側に駆け寄る。

 彼女は魔法の効果でまだスゥスゥと眠っている。


「足の傷がふさがってる! ……でも呪いは消えていない?」

「エリクシルでは奴隷の呪いは消えない。 また部分的な欠損も24時間を超えると不可能になる」

「そんな……じゃあフェリシアは……?」


 足のケガも治らない、呪いも解けない。

 俺はなんのためにここまできたんだ?


「彼女の呪縛発動まで58分21秒。 生命活動のリミットは1時間2分11秒といったところだ」

「なんだよそれ……こんなに頑張ってたどり着いたってのに……。 フェリシアは助けられないのか?」

「まだあきらめるのは早いぞ!」

「でも……もう手段が……」

「この天使がさっき言っていたのだ、一つだけ願いを叶えてくれると」

「願いを叶えてくれる……だって?」

「無論だ。 私に叶えられない願いはない。 この世界を滅ぼすことも、死者を蘇らせることも、元の世界に戻ることも、その少女の呪縛を解くことも出来る。 だが、願いは一つだけ。 それ以上にもそれ以下にもできない」

「……本当なんだな?」

「私は真実だけを語る」

「じゃあフェリシアを早く助けてくれ!」

「その願いは奴隷の呪縛を削除する、ということで良いのだな? その場合、足の状態は元に戻らない」

「足の状態も、呪縛を消すことも含めて体の状態を元に戻すってことはダメなのか?」

「それでは願いが二つになる。 それは許可できない」


 優先順位は決まっている。

 命を落とす呪縛は確実に消さなければならない。

 でも足が……。

 いや、迷ってる暇はない。

 死ぬことだけは避けねばならないのだ。


「……わかった。 フェリシアの呪縛を解いてくれ」

「承知した」


 神々しい天使がフェリシアの手前まで行き、何かを始める。

 魔法陣のようなものが床に現れ、光に包まれる。


「コード:スペルブレイク」


 数秒後、光が徐々に弱まり何事もなく時が過ぎていく。

 これで治ったのか?


「彼女の呪縛を削除しました」

「本当か!」


 すぐさまフェリシアの奴隷紋を確認する。

 麻の服の下、お腹のあたりだ。

 ……ない。

 消えている!


「本当だ……本当に消えている……」

「信じられない、奴隷紋が本当に消せるなんて」


 ロイスもフェリシアの状態を確認して安堵しているようだった。


「これでもうここに未練はないな……頑張ってよかった……」

「では、私の話に移らせてもらってもいいだろうか?」


 そういえばさっきも言っていたな。

 何の話だろう。

 エリクシルには期待外れだったが、この天使が助けてくれた。

 粗方の目的は達成したといって差し支えない。

 急ぐ理由もなくなったし、何よりこのダンジョンに深く関係ある人物。

 こちらとしても何か情報があればぜひとも聞きたいところだった。


「ああ、すまない。 フェリシアを助けることで色々と切羽詰まっていたところだったんだ」


 話を始める天使。


「改めて、自己紹介をしよう。 私の個体名はガブリエル、この世界を監視しているものだ。 そしてこの空間は事象の地平線という。 世界が途切れ、別の世界へと繋がる場所。 そう思ってもらうといいだろう」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ