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落ちこぼれ現代魔法使いの異世界召喚  作者: 雲珠
第一章 異世界転移編
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第1話 異世界は突然に

 親に見放され早数年。

 児童養護施設に引き取られ、高校生となった俺はいつも通りとなった日常を過ごしていた。

 がむしゃらに魔法の力を求め、研究し、誰かに認められるために生きている。誰かが誰なのかは俺でもわからない。もちろん非常な親になんぞ認められたいとはもう思っていない。

 そんな毎日が過ぎていくある日、突如として起こったのだ。

 帰りのホームルームが終わり、先生が部屋を出た瞬間であった。部屋全体を包む魔法陣が出現し、一面真っ白になったかと思うと薄暗い祭壇の上に移動してたのだ。祭壇の隅には燭台が置かれ辺りを怪しく照らしている。周囲は真っ暗であるがかなり大きい空間のようである。


「え……なにこれ」


 第一声を放ったのは桜田という女子だった。髪は金髪のストレート、チャラチャラとしたルックスだが素材が良いため人気が高くクラス内でもヒエラルキーのトップに君臨している。その他の生徒もざわざわと声を出し現状の把握をしようとしているようだった。


「おい! あれみろよ! 」


 不安をいだいているクラスメイトに声をかけたのは飛騨というイケメンだった。若干癖のある黒髪だが、イケメン、スポーツ万能、勉強もトップクラスと三拍子揃った男の敵である。

 飛騨が指さした先に人影が見え、近づいてくると女性だということがわかった。

 長いブロンドの髪をたなびかせ、エメラルドグリーンの瞳がこちらを見ている。桜田とは違い清楚といった二文字がお似合いな気がする。服装は中世ヨーロッパの貴族が着ているようなヒラヒラしたドレスと言ったらいいだろうか。


「ようこそいらっしゃいました勇者様方、私はヴィネーと言います」


 彼女の声でシーンと静まり返る。


「勇者様方? ってなんなんですか?」

「はい! あなた方はこの世界を救うために呼ばれた勇者様なのです!」


 飛騨の質問に対してヴィネーの回答は先ほどと同じ勇者様方ということのみ。

 もう少し詳しく話してほしいところである。誰もがそう思っていたところ、そわそわとしていた男子、確か名前は松田だったか、が話し始めた。


「こ、これはもしかして異世界召喚なのでは!?」

「おお! 御察しがいいですね! そうです、あなたがたはこの国ラウムの救世主にして魔を打ち払う勇者になります!」

「ゆ、夢にまで見たラノベの展開だ! きたこれ!」

「ラノベ……ですか? よくわかりませんがまずこの国の王に会っていただきます」


 俺も話には聞いたことがあるが、異世界召喚か。たしか勇者として呼ばれて強大な力を得て魔王と戦い平和な世界にするとかそういう話だった気がする。もし、そんな強力な力が手に入れば今まで鍛錬してきた魔法の強化にもつながるかもしれない。少し楽しくなってきた。

 ヴィネーの後ろから真っ白な白髪が特徴の男が現れた。真っ赤なマントに身を包め、くるくると巻かれた髪は気品にあふている。頭上にはきらきらと輝く王冠を付けており、いかにもな王様だった。


「よく来てくれた勇者たちよ、儂から詳しく説明しよう。 わからないことがあれば質問してくれてかまわない」


     *


 王様の説明はだいたいこんなかんじだ。

 まず、王と呼ばれた者はラウムというらしい。この国と同じ名前だ。

 そして、松田が言っていた通りこの世界は日本とはまったく違う異世界で、ヴィネーの召喚魔法により俺たちが召喚されたらしい。召喚された者を勇者と呼び、覚醒した力を持って魔王を倒すことが目的なのだそうだ。

 覚醒した力、すなわち異世界から召喚されたものには特別な力があるらしい。この特別な力は召喚の影響でもともとその人が持っている特殊な能力を開花させたものだそうだ。確かに日本にいたころには魔法が使えるもの、使えないものがいた。その眠っていた力を無理やり引き起こすといわれても不思議なことではなかった。もしかしたら俺の力も眠っているだけなのかもしれない。そんな気分になった。


「あ、あの! わからないことだらけなんですけど家にはいつ戻れますか?」


 粗方説明が終わり、質問タイムとなる。真っ先に出たのは日本への帰還方法である。これだけはなぜか説明の中にはなかったのだ。俺にとっては誰も認めてくれない、理不尽で残酷な生きづらい世界だったんだがな……。


「申し訳ないが元の世界の帰還方法はわからないのだ」

「えっ」


 質問をしていたのは末永という女生徒だ。あまり目立つほうではなく、積極的でもない。そんな彼女が我先にと質問したのはもちろん元の世界にもどりたいからなのだろう。周囲からもどよめきが起こった。


「帰れないの……?」

「どうすんだよこれ!」

「ふざけるな早く元の世界へ返せ!」

「おかあさーーん!」


 泣きわめいたり、絶望するもの、殴りかかりそうになるもの、怒鳴るものが現れる。 ラウムは少し怪訝な顔をする。 あまり言いたくなかったのだろうか少し後ろめたい様子だった。


「元の世界への帰還に関しては、わが国が全力で探す予定だ。 過去にも勇者召喚を実施した国はいくつもある、きっと帰還方法もわかるであろう」


 重い空気が流れる。


「みんなここはひとまずこの人たちを信用するしかないと思うわ。 私たちに特別な力が宿るということであれば、自分たちでも帰る方法を探す手もあるし、協力してがんばりましょう!」


 沈黙していた空気を破ったのは委員長の東雲だった。黒いロングストレートに大和なでしこを絵に書いたような人物である。容姿端麗、頭脳明晰で男子からの評判が高い。女子からはそんな彼女を好くものは少ないようであるが……。

 多少もめたものの、ひとまず協力することに決まったようだ。


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