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プロローグ

 才能を持っている者が恨めしい。

 そう思ったのは俺が8歳になる日だった。


「火の魔法を使えばいいの? おじさん?」


 真紅に染まった長髪が風になびき、同じく真っ赤な瞳が揺れる。今年4歳となる少女は少し疑問をいだきつつ傍らの男に問いかける。


「ああ、ただし手加減はするんだぞ」


 鋭い眼光でこちらを見つめるのは俺の父親だ。

 俺が生まれた如月家は代々火の魔法を使うことで国内有数の魔術師の家系となった。名声を維持するためにも自らの家の者に対して厳しい仕来りがある。魔法の訓練はもちろん、勉学や礼儀作法など様々であるが、特に魔法の適正能力にはうるさかった。

 今日はその魔法の適正能力を判断される最後の日だ。8歳になるまでに火の魔法の適正が無いと判断された場合、家から追放される。それが俺の現実だった。魔法を使うために魔力の操作を気絶するまでひたすら練習し、家にある魔術書を読み漁りこの日まで努力し続けてきた。一行に上昇しない魔力量、そして未だ発動しない火の魔法、どれだけ頑張ってもとどかなかった。

 ただ、自分を見捨てられたくない、その一心で生きてきた。

 そして行きついた。自分がどうしたら火の魔法を使えるのか。

 右手を前にかざし、光の点が孤を描き一つの円が作られる。


「魔法陣展開!」


 たどり着いたのは魔法そのものを魔法陣として典型化し、魔力を注ぎ込むことで発動するというもの。今描いているのは火の魔法でもっとも一般的な“火”を放つ魔法陣である。徐々に円の中に幾何学な紋様が浮かび上がる。もし成功したとしてもマッチを燃やした程度の火しかでないだろう。それほどまでに自分の魔力量は少ない。ただ、今まで才能がなかった者が火の魔法を使うことができると認識させることができるかもしれない。そんな淡い思いがあった。

 ただし、現実は非常だった。

 少女の片手が上がり、一言。


「火炎球」


 ゴオォと火の玉が手のひらから射出され、意図も簡単に目の前の魔法陣がはじけ飛び、そのままの勢いで俺の元に向かってくる。

 出来たのは必死に左手で防御することだけだった。防御など無意味。焼け焦げた腕が落ち、威力が少し落ちた火の玉が左目に衝突した。

 熱い、熱い、熱い。

 才能がないだけでなぜこんな目に合わなければならないのか、なぜ俺には才能がないのか、俺のやり方は間違っていない、理不尽すぎるこの世界が悪い、見返してやりたい、ひたすらそんな思考が巡り、意識を失った。

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