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第16話「甘美な香りは脳を蝕む」
玄関前の道路に、峰長甘子は倒れていた。
しかし、
「うぅ!?」
「な、何だこの匂いは……胸がムカムカしやがるっ!」
俺と美山は、堪らず鼻を塞ぐ。あまりに甘ったるい、明らかに有害だとわかる『甘味』の香りが、辺り一面に広がっていた。
「せ、先輩っ。これは一体……」
「わからん。だがおそらく、匂いの元は峰長からだ。何となく、普段の奴から漂う砂糖の匂いに似ている気がする。しかし、これはその何百倍も酷い!」
俺は峰長を見つめる。奴は未だに倒れ伏して、ピクリとも動かない。まるで死んでしまったかのようだった。