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猫耳王子  作者: 麻沙綺
9/22

道場

道場は、体育館横に隣接されている。


私は、道場の入り口を開け放った。

ブァッと熱気が、押し寄せてくる。そのせいか、自然と背中が伸びる。

入り口で一礼をして中に入る。

ピンと張り詰めた空気が好きなんだ。


「春菜。僕何処に居ればいい?」

不安と期待を入り交じった顔であっ君が聞いてきた。

「ん?あぁ。壁際なら何処でもいいよ。あっ君が良いと思ったところで見学してて…」

私は、微笑を漏らして伝えた。

「あっ、春菜。今日は男連れか?」

そう言って絡んできたのは、主将だ。

「えっと、今日転校してきた吉井敦斗君。何か、興味あるみたいで見学したいって…」

嘘は、ついてないよね。

「ということは、入部希望者?」

主将の笑みが溢れる。

「まだ、そうとは決まってないですよ」

苦笑交じりでそう返した。主将の肩が落胆したのを見て。

「今日の練習次第じゃないですか?」

何て、冗談交じりで言ってみる。

だって、あっ君は『見学したい』ってしかいってない。『入る』とは、一言も言ってないのだから…。

「…そうなのか?だったら、楽しい部だってアピールした方がいいか?」

何て、主将が呟く。

楽しい?

まぁ、それなりに楽しいのか?

「どうしたんですか?主将。練習始めないんですか?」

う~んう~ん唸ってる主将に自分と同学年が、心配そうな顔をして、主将に言う。

確かに事情を知らなきゃ、心配になるよな。

だって、眉間にシワを寄せて、考え込んでるんだから…。

「春菜。今日の相手、私だからね」

って、横から声がした。

そっちに顔を向けると紗枝先輩が嬉しそうな顔をして言う。

えーー。やだな。

紗枝先輩とだなんて…。

紗枝先輩、私の癖全て把握してるから…。


「全員揃ったか?始めるぞ」

さっきまで悩んでた主将が立ち直り、練習が始まった。



んー、いい汗かいた。

タオルで、顔の汗を拭う。

「春菜。あんたが連れてきた男、太刀筋がいいね」

って、紗枝先輩が突然言うから、何の事かわからなかった。

「ほら、あっち」

先輩の指す方に目線を向けたら、竹刀を構えて主将と交えているあっ君の姿があった。

えっ、何してるの?

見学だけじゃなかったの?

何気に彼の動きを追ってる。

首相とも負けじに渡ってる。

一瞬の隙も見逃さずに、あっ君が主将から一本決めていた。

ウソー。

何で、そんなに強いの?

「あっ、春菜。見ててくれた?」

って、満面の笑みを浮かべて、ピョンピョン跳ねてるあっ君。

それを見ていた先輩が。

「あの子、可愛いじゃん。しかも強い。春菜の彼氏じゃないんなら、狙っちゃおうかな」

何て囁きが聞こえてきた。

エッ…。

思わず隣に居る先輩を見た。

まぁ、彼氏ではないけど…、仲の良い幼馴染みを獲られるのは…。

って、何の感情よ。

私は、あっ君の事なんか…。

私が考え事をしてる間にあっ君が近くに居て。

「春菜!僕、剣道部に入る。そしたら、一緒にいられるよね」

って、屈託のない笑顔で言われた。

「そう。頑張れ」

そう言うしかなかった。



帰り道。

あっ君が、私の隣を歩いてる。

部活の後、今まで一人で帰ってた道を誰かと帰るなんて思わなかった。それが、幼馴染みの男の子。

「そう言えば、春菜の家って、まだ変わってないよね?」

あっ君が、思い出したように聞いてきた。

「うん。引っ越すことなくあのままの場所だよ」

あっ君と私が一緒に過ごしてきた場所。

本当は、辛いだろうからって引っ越そうかって父親が言ってたみたいだけど、母親がそれを拒んだって言ってた。

あの場所じゃないとダメだって。

「春菜。もしかして、僕の事嫌い?」

突然の言葉に驚いて、あっ君を見た。

とても苦しそうな顔をして、私の方を見ていた。

「嫌いも何も、私たち今日再開したんだよ。突然聞かれても困るよ」

どう答えて良いものかわからず、そう伝えるのがやっとだった。



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