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猫耳王子  作者: 麻沙綺
6/22

呼び名

今頃の転校生って、そんなに珍しいものなのだろうか?

僕は、ふと思った。

何故かって?

だって、休み時間になる度に女の子達が、僕のところに群がってくるから(他のクラスの子も居るみたい)……。

でもね、一番傍に来て欲しい相手は来てくれなくて、ちょっと……ううん、かなり寂しい。

だけど、今目の前に居る子達に冷たく当たることもできなくて、つい愛想笑い(幼い頃に身に付けた)を張り付けて対応していた。


「ねぇ、吉井くん。ここに来る前は、どこに居たの?」

ごくごく当たり前の質問。

だけど、僕にとっては、難しい質問。

だって、ここと違う場所から来たから……。

だから、僕は。

「う~んとね。遠い南国だよ。幼い時は、こっちに居たけどね」

笑顔を張り付けて、あやふやに答える。

だって、言いようがないんだもん。

『実は、違う次元(猫耳族)の王子なんだ』何て、言って引かれていくの目に見えてるしね。

だから、国の事だけを言って、ごまかすしかないんだ。

「じゃあ。彼女とか居るの?」

これも、尤もな質問かな。

「今は居ないよ。でも、好きな子は居るんだ」

嘘はついてないよ。

だって、本当の事だから……。

いつか、春菜と両想いになれたら……ううん、春菜の隣に並べれたらって、思う。

それが、僕の目的だから……。

そう思いながら、春菜の方に目線を向けた。


そこには、呆れ顔をして僕を見る春菜と友達。

何で、そんな顔をしてるの?

僕、変なことしてる?


僕は、そっと聞き耳を立てた。


『吉井くんの頭に猫耳付いてるよね?』

と、春菜の声を拾った。

大変。

耳、消さないと……。

僕は、慌てて耳を消す。

『はぁ?何それ。そんなの付いてないよ。まァ、彼だったら似合いそうだけど…』

って、苦笑してる声が聞こえる。

って、事は……。

この耳は、春菜しか見えてないって事か……。

それなら、安心か……。

でも、何で春菜には見えてるんだろう?

疑問に思いながら、春菜の方へ向かった。


「…でも、現についてる」

って言う春菜の呟きが聞こえる。

そんな春菜の前に立って。

「何が付いてるって?」

僕は、そう声をかけてた。

「…えっ…あっ…吉井くん」

って、かなり焦って言う春菜。

「どうしたの春菜?」

僕、意地悪かな。

でも良いよね。

これぐらいしないと春菜、僕に近付いてくれないだろうし…。

「…なんでもない」

って、手と顔が左右に同時に振られる。

なんか、壊れた玩具みたいだ。

「ふーん。で、春菜。“吉井くん”って呼びかたヤだ。前みたいに“あっ君”って呼んでよ」

僕は、春菜に懇願する。

だって、その方が、特別って思えるから。

春菜だけの特別な言い方。

それに呼ばれなれてるし……。

僕は、期待を込めて春菜を見つめる。

「…えっと……」

春菜に早く呼んでもらいたくて、ウズウズしてる。

春菜の落ち着いた声音で言われると心が、ホンワカと温かくなるんだ。

「あっ君…」

あっ。

嬉しい!

昔に戻ったみたいだ。


「ねぇ、ねぇ。私達も“あっ君”って呼んでも良い?」

いつの間にか僕たちの周りにさっきの女の子達が集まっていた。

「うーん。ごめんね。この呼び方は、春菜だけしか許せないかな」

って、やんわりと断った。

本当は、即答で『駄目!』って言いたかったんだけど…。後で、春菜に何かあったら困ると思って考えるふりして、断った。

この呼び方は、春菜だけが特別なんだって、春菜自身に思って欲しかったからなんだけど

…。

当の本人は、気付いてないかな。

「うん、わかった。じゃあ、敦斗君ならいい?」

彼女達は、僕の答えに素直に頷いてくれて、そして妥協案を出してきた。

「それなら良いよ」

僕は、そう承諾していた。




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