約束
あー、緊張する。
だって、春菜が要るクラスに転入できたんだ。
緊張しない方が、おかしい。
僕は、ずっと春菜の事を想って頑張ってきたんだから……。
あの別れの日。
春菜が僕に抱きついて。
「行っちゃヤダ〜〜」
って、泣きついたあの日。
僕は、幼いながらも彼女を泣かしたくないって思った。
彼女の日溜まりのような笑顔を絶やしたくないって……。
でも、こればかりはどうしようもなかった。
だって、僕が王子としての勉強を始めなければいけない時期になってたから……。
本当は、僕だって春菜と離れるのは嫌だった。
『春菜は、僕にとって大切な女の子』だって、母から聞いてたから……。
だから、ずっと一緒に要られるんだって思ってたんだけど……。
父からは、『春菜を守るためにはお前が強くならなくては駄目だ。今は、辛いかもしれないが、強くなって、もう一度春菜に会いに来ればいい。勉強を頑張れば、またこちらの世界に戻ってこればいいのだ』と言われた。
別れは辛い。けど、春菜を守るためには、僕が強くならなくてはと固く誓ったおさない自分だ。
泣き叫ぶ春菜の頭をヨシヨシしながら僕は。
「必ず春菜のところに戻ってくるから。今は辛いだろうけど、待ってて」
って、春菜の顔を覗き込みながら言っていた。
「ホント?……あっ君…わたちの……ヒック…ところに……もどって…きて…くれるの…ヒック…」
舌足らずの喋りで、しゃくりながら言葉を紡ぐ春菜が可愛いかった。
「うん。約束の指切りしよう」
って、僕が小指を出すと春菜がそれに重ねた。
「ゆびきりげんまんうそついたらはりせんぼんのーますゆびきった」
そのあとの春菜は、涙を堪えながら少しばかりの笑顔を見せてくれた。
僕は、国に戻った後死に物狂いで勉強も剣技を磨いた。
春菜との約束を守るために……。
そして、やっと春菜に会える。
胸が、踊る。
母親同士の交流は途絶えていなかったため、僕は、今の春菜の姿を知ってる。
春菜は、どうなんだろう?
僕の事、覚えててくれてるのかな?
不安はあるが、楽しみの方が大きい。
春菜、僕、ちゃんと約束を守れたよ。
「入れ」
って言葉が聞こえてきた。
僕は、戸を開けて教室に一歩踏み出した。