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猫耳王子  作者: 麻沙綺
20/22

リビングでは



道の真ん中で、彼女の温もりを感じて数分。

人の視線が集まってきてるのに気付き、慌てて春菜から手を離した。


「ごめん。」

僕がそう言うと春菜は俯き首を横に振る。

赤い顔を見られたくないにだろうと悟り。

「早く帰ろう。今頃春菜の家のリビング、大変なことになってるよ。」

春菜は顔をあげて、一瞬キョトンとした顔をして、思い出したかの様に。

「そうだった。」

慌て出した。

「早く行こ。」

そう言って春菜から手を繋いでくる。

勿論恋人繋ぎ。

あっ、もう~嬉しすぎる。

告白して良かったって思う。

春菜が僕の顔を見て、不思議そうな顔をして手を引っ張る。僕は、それに従うように歩き出した。




春菜の家の玄関を潜るとリビングから騒がしい声が聞こえてきた。


リビングに入ったとたん目についたのは、大量のお酒の空き瓶と缶だった。

一体、何時から飲めばこんなに空きの容器が貯まるんだよ。

空き瓶を見れば、此方の物ではないのまで混じっている。

呆れながら父上を見る。

父上は、素知らぬ顔をしているけど、母上が知ったら僕は知らないからね。

何て思っていたら。

「おっ、お帰り春菜。敦斗君、いらっしゃい。」

春菜のお父さんが赤ら顔で言う。

「ただいま。叔父様、お久し振りです。」

春菜挨拶すると父上にも声をかける。

すると父上は驚いた顔をして。

「えっ、春菜ちゃん? 美人になったな。お母さんに益々似てきたな。」

声にしていた。

態とらしい驚き方に僕は嫌気がさす。

だってさ、父上も春菜の写真観てるんだよ。そこまで驚くこと無いと思うんだよね。

「そうなんだよ。大きくなるにつれて、美保子に似てくるから、俺もビックリしてるんだ。性格まで似てるんだよ。」

おじさんは陽気に話しているが、何処と無く寂しそうな顔をしている。

「そうかな?」

春菜も寂しそうな笑顔を浮かべている。

「あっ君、座ってて。私、着替えてお茶を持って来るからね。」

そう言ってリビングを出て行く春菜。

その後ろ姿に。

「ちょ…、春菜……。」

と呼び掛けたが、振り返ること無く行ってしまった。


母親にそっくりって言われて、春菜は戸惑ったのではないかと思った。

僕は、一旦父上の隣に座ったが、春菜の事が気になってうずうずしていたら、父上が目線で "行って来い" と言うから、僕は立ち上がって春菜の部屋に向かった。






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