リビングでは
道の真ん中で、彼女の温もりを感じて数分。
人の視線が集まってきてるのに気付き、慌てて春菜から手を離した。
「ごめん。」
僕がそう言うと春菜は俯き首を横に振る。
赤い顔を見られたくないにだろうと悟り。
「早く帰ろう。今頃春菜の家のリビング、大変なことになってるよ。」
春菜は顔をあげて、一瞬キョトンとした顔をして、思い出したかの様に。
「そうだった。」
慌て出した。
「早く行こ。」
そう言って春菜から手を繋いでくる。
勿論恋人繋ぎ。
あっ、もう~嬉しすぎる。
告白して良かったって思う。
春菜が僕の顔を見て、不思議そうな顔をして手を引っ張る。僕は、それに従うように歩き出した。
春菜の家の玄関を潜るとリビングから騒がしい声が聞こえてきた。
リビングに入ったとたん目についたのは、大量のお酒の空き瓶と缶だった。
一体、何時から飲めばこんなに空きの容器が貯まるんだよ。
空き瓶を見れば、此方の物ではないのまで混じっている。
呆れながら父上を見る。
父上は、素知らぬ顔をしているけど、母上が知ったら僕は知らないからね。
何て思っていたら。
「おっ、お帰り春菜。敦斗君、いらっしゃい。」
春菜のお父さんが赤ら顔で言う。
「ただいま。叔父様、お久し振りです。」
春菜挨拶すると父上にも声をかける。
すると父上は驚いた顔をして。
「えっ、春菜ちゃん? 美人になったな。お母さんに益々似てきたな。」
声にしていた。
態とらしい驚き方に僕は嫌気がさす。
だってさ、父上も春菜の写真観てるんだよ。そこまで驚くこと無いと思うんだよね。
「そうなんだよ。大きくなるにつれて、美保子に似てくるから、俺もビックリしてるんだ。性格まで似てるんだよ。」
おじさんは陽気に話しているが、何処と無く寂しそうな顔をしている。
「そうかな?」
春菜も寂しそうな笑顔を浮かべている。
「あっ君、座ってて。私、着替えてお茶を持って来るからね。」
そう言ってリビングを出て行く春菜。
その後ろ姿に。
「ちょ…、春菜……。」
と呼び掛けたが、振り返ること無く行ってしまった。
母親にそっくりって言われて、春菜は戸惑ったのではないかと思った。
僕は、一旦父上の隣に座ったが、春菜の事が気になってうずうずしていたら、父上が目線で "行って来い" と言うから、僕は立ち上がって春菜の部屋に向かった。




