告白
あっ君は、私の手を握ったまま校門まで歩いていく。
周囲からは、驚きの声が上がってる。その中には、陰口さえ聞こえてくる。
あっ君の耳には届いていないのかな?
何て思いながら、あっ君に手を引かれて歩く。
やっぱり、私とあっ君って似合わないんだろうなぁ……。
批判的な声に自分でもそう思ってしまう。
何時しか、目線が下がってしまって、あっ君の足元を見ていた。
校門を出てからも、前向きになれずに常に下を向いていた。
「春菜…。どうしたの?」
あっ君の心配そうな声。
昨日の今日だし、心配にもなるよね。
「大丈夫……。気にしないで……」
そう口にするのがやっとだった。
本当は、ただ恥ずかしくて顔を上げられないだけなんだけど……。
「気になるよ。僕の好きな娘の事だから……僕には言えないことなの?」
優しい声であっ君が言って来る。
えっ…、今、何て言ったの?
好きな娘って言った?
驚きすぎて、足が止まってしまった。
「……どうして…」
戸惑いすぎて、口からその言葉が自然と出てしまった。
だって、あれから十年も経ってるのに"好き"って…有り得ないと思ったのだ。
十年の間に私も色々と変わってる筈なのに、あの時のままで居るわけないのに……。それでも変わらず好きって伝えてくるあっ君に驚かずにはいられない。
「どうして?だって、僕はこの十年間一度も春菜の事を忘れたこと無いよ。むしろ、春菜に早く会いたくて色々頑張れたんだよ」
あっ君が、私の正面に立ち言う。
「う…そ……」
だって、あの約束だってただの口約束で、きちんとしたものじゃない。
信じられるわけない。
「嘘じゃないよ。春菜とあの時約束したよね。春菜にもう一度会う為に一杯努力して、認めてもらったの。……十年掛かっちゃったけど……」
って、最後はおどけるように言うあっ君。
えっ……。
本当に、私がいいの?
そう疑問に思っていれば。
「僕はね、春菜だけしか好きじゃない。春菜の為なら、どんな努力も惜しまないよ」
あっ君の顔を見れば、真剣な顔つきでこちらがどう答えればいいのか戸惑うほどだ。
「春菜は、僕の事嫌い?それなら、僕は諦めて国に戻るよ。悲しいけどね」
寂しげな目で見つめられて、余計に慌てふためく自分が居る。
「ちが…う。ごめん、あっ君。私、あっ君の事…す…好きです。ただ、あっ君があまりにも格好よすぎて…、本当に、あっ君が私の事が…す、好きなのか不安で……」
慌てて言葉にしたから、しどろもどろで、自分でも何を言ってるのか、わからない。
ただ、あっ君が居てくれると安心できるし、刺々しい自分が居なくなる事に気付いたのだ。
あっ君が、急に口許を押さえて、横を向いた。その動作を見たら不安になってしまい、視界がぼやけ始める。
「春菜…。可愛すぎ……。僕の恋人になってくれませんか?」
顔を赤く染めて言うあっ君に。
「こちらこそ…、宜しくお願いします」
と返事を返した。
今まで気付くかなかったが、周囲には人の目がこちらを注目していて、いたたまれなくなった。
早くその場を離れたい気持ちだったが、あっ君が抱きついてて、一向に放してくれなく、暫くそのままになってしまったのは、言うまでもないだろう。