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猫耳王子  作者: 麻沙綺
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繋いだ手


春菜のさっきの様子だと、友達を家に呼んだことがないんだと思った。


僕よりも後ろの席に座る春菜をチラチラ見てるが、何処と無く上の空だ。

何か、僕がいけないことを言ってしまったんじゃないかって、心配になる。

そんなことを考えながら、授業を受けていた。



全ての授業が終わり、鞄に教科書類を詰めて、春菜の席に行く。

見れば、まだボーッとしてて、焦点が定まっていない感じだ。授業が終わったことにも気付いていない感じだ。

そんな春菜に。

「春菜。気分悪いの?」

そう問いただして、やっと正気に戻ったのか、辺りを見渡し始め落胆する。

どうしたんだろう?

何かあるなら、頼ってくれればいいのに……。

そう思いながら。

「大丈夫、春菜?」

聞けば。

「う、うん。大丈夫だよ」

って、ぎこちない笑顔で返してくる。

明らかに動揺してるじゃんか。本当にどうしたんだろう?

「嘘、だよね。春菜、無理してるでしょ?少しでも、僕に委ねてよ。僕は、春菜の泣き顔なんて見たくないよ」

僕は、春菜の目尻に浮かんでいる涙を指で払い除ける。

微かに、頬に赤みが指す春菜。

「あっ君。私……」

「敦斗君。一緒に帰ろう」

春菜の消え入りそうな言葉を遮るように、クラスメイトが声を掛けてきた。

その声に、不安そうな顔を見せて俯く春菜。

僕が、受けるとでも思ってるのだろうか?

「ごめん。先約があるから、次回にでも誘って」

僕は、彼女の誘いを断った。

まぁ、何度誘われても行く気はないんだよね。

僕にとって、最優先事項は、春菜だからね。春菜が嫌がるなら行かない。


「ほら、春菜。帰るよ」

僕は、春菜の鞄と自分の鞄を肩にかけ、空いてる方の手で春菜の手を掴む(もちろん恋人繋ぎ)。逃げられたくないもん。

そのまま校内を歩いてると、視線は僕たちの手に集まる。

そして、ヒソヒソ声。

何だろう?

耳を澄まして聞こうにも、声が小さくて聞き取りにくい。

まぁいいや。

これで、春菜は僕のだって、印象つけれるなら。

少し後ろを歩く春菜を見れば、俯いててどんな顔してるのかわからなかった。



さっき話しかけてくれようとしたのは、何だったんだろう?

何て、考えながらも沈黙の時間が心地いいと思った。

けど、今日の春菜の様子がおかしくて、声をかけずにはいられなかった。

「なぁ、春菜。もしかして、僕が君の友達に要らないことを言ったから怒ってるの?」

朝の事を怒ってるから、余り口を訊いてくれないんだと思った。

春菜は、家の事を聞かれるの嫌だったみたいだし。

「怒ってないよ。ただ、誰にも頼れなくて……言えなくて、あっ君が戻ってきてくれたことに安心しちゃった」

春菜が、ゆっくりと言葉を吐き出す。

エッ…、誰にも頼れないって……。

だって、春菜の友達は、凄く心配そうな顔をして春菜の事を見てたんだよ。話してないの?

「それならいいんだけれど、さ。僕は、春菜の本当の笑顔を見せてくれるまで、傍に居るからね。あっ……えーッと、春菜がよければ、ずーっと一緒に(居たいって思ってるんだよ)」

あー、ダメだ。最後までちゃんと言えない。

顔が熱い。

春菜が、こっちを見てくる。

「あんま、見ないでよ」

僕は、繋いでいない方の手で口許を隠し、顔を背けた。

すると。

「クスクス…」

って、わらいごえがきこえてきたから、春菜をみれば手の甲を口許に当てて笑っていた。

あっ、少し強張ってはいるもののちゃんとした笑顔だ。

「な、笑わないでよ。僕は、本当に春菜の事が、心配なんだからね」

口を尖らせて言う。

「あっ君。ありがとう、ね」

春菜が、お礼の言葉をごく自然に出したものだとわかった。

だって、春菜自身が驚いてるんだもん(僕も驚いたけどね)。


何時でもいいから、友達に話せるようになるといいね。


何て思いながら、彼女を見つめていた。





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