秘密主義?
夜が明ける前に王国から連絡が来た。
まだ眠い目を擦りながら、それに出る。
『おはよう、敦斗。今日のお昼ぐらいにわたしが、翔太に会いに行くから、学校帰りに寄ってくれると助かるんだが…』
と父上が言う。
流石、何時でも言いとは言っていたが、父上、おじさんの仕事の都合とか考えてなさそうなんだが…。
「わかりました。ですが、昨日伺ったばかりなのに続けてとは、如何なものでしょうか?」
二日連続は、流石に行きづらいものがあるんだけど…。
『わたしの事を言えばいいではないか。春菜ちゃんもわたしの事知ってるだろ』
と年甲斐もなくウインクしてくる父上。
気持ち悪いです。
言葉に出さずにそれは流した。
「わかりました。僕は、準備がありますので失礼します」
そう言って、通信を切った。
はぁー、朝から父上に起こされるなんて…。
今何時だろう?
時計を見れば、六時三十分を差していた。
まだ時間は、あるが二度寝したら起きれそうにない。
仕方がない、熱いシャワーを浴びてこよう。
僕は、着替えを持って脱衣場に向かった。
熱い(ってもそんなに熱くないものを)頭から被る。
早く、春菜に会いたいな。
昨日の事もあるから、心配だよ。
僕は、一日でも早く春菜の本当の笑顔が見たいんだ。
今の春菜、笑ってるように見えて笑ってないんだもの。
悲しい笑顔なんて、僕見たくない。
だから、一日でも早く春菜の悲しみを取り除いてあげたい。
そう思いながら、シャワーを浴びた。
僕は、シャワーから上がると、水気を拭き取り制服に着替えた。
髪をタオルでワシャワシャと拭き取り、キッチンに行き簡単な朝食を作った。
それを口に頬張っていく。
食べ終えると歯を研き、身嗜みを整え、鞄を手にして家を出た。
学校に着けば、朝練をしている掛け声が、あちらこちらから、聞こえてくる。それを聞きながら、教室に向かった。
教室に入れば、まだ誰も来ていなくて、自分の席に着き予習を始めた。
暫く経つと。
「あっ、敦斗君、おはよう。何してるの?」
とクラスの女の子が声をかけてきた。
「あっ、おはよう。予習してるんだよ。ほら、転入してきたばかりだからさ。少しは、内容を入れておかないとね」
そう答えれば、
「私でよければ、教えるよ」
鞄を机に置き、僕の横の席の椅子を寄せてきて、一緒に覗き込んでくる。
できれば、一人でやりたかったんだけど、親切心を無下に断るわけにいかないよね。
「ありがとう。お願いします」
僕がそう言えば、彼女の顔がほんの少し赤い気がする。
そんな顔されても、全然可愛いって思えない。
やっぱり、僕は春菜じゃないとダメなんだ。って思わされた。
徐々に教室内の人工が増していく。
僕の周りに女の子達が、集まってくる。
何で?
春菜以外の女の子が、集まってくるの?
これじゃあ、春菜を不安にさせるだけじゃんか。
僕は、春菜だけでいいのに。
心の中で、春菜を求めていたからだろうか、春菜が教室に入ってきたのがわかった。
これが終わったら、春菜の所に行こう。
昨日の事も気になるし…。
そう思いながら、僕は話を聞いていた。
「ありがとう。助かりました」
僕は、教えてくれた彼女達にお礼を言って、席を立ち春菜の所へ行く。
何故か、春菜は教室内をキョロキョロしてる。
何かあったのかな?
そう思いながら。
「春菜、おはよう。目、大丈夫?」
そう口にして、春菜の目元を見た。
あーあ、やっぱり腫れちゃってるよ。
僕の言葉に、春菜の友達が驚いた顔をする。
「あっ君、おはよう。大丈夫だよ。昨日、お父さんに会ったんだって」
春菜が、僕に問いかけるように聞いてきた。
「うん。春菜疲れて寝ちゃったでしょ?一人にしておけなかったから、おじさんが帰ってくるまで待ってたんだ。…で、挨拶だけして帰ったんだよ。おじさん、昔っから変わってないね」
僕は、昨日春菜が寝てからの事を話した。
それを横で聞いていた友達が、瞠目して。
「えっ。なんで、吉井君が…」
って、呟きが聞こえてきたと思ったら、春菜と僕を交互に見ている。
えっ、僕何かやらかした?
「ん?何か、問題があった?」
僕は、春菜に問いかけた。
「あっ…うん、ちょっと…」
春菜が、言葉を濁してるところをみると、言ったら不味かったらしいことに気付いた。
「ねぇ、吉井くん。昨日、春菜の家に行ったの?」
春菜の友達が、怪訝そうに聞いてくる。
いや、そんな顔されても困るんだけどさ。
さっき口にしちゃったし、今更誤魔化しても仕方ないよね。
「うん、行ったよ。こっちに戻ってきたし、おじさんに会いにね」
嘘はついてないし、幼馴染みだし、それぐらい普通でしょ。
けど、彼女は驚いた顔をする。
「ねぇ、春菜。今日も春菜の家に行ってもいい?」
僕は、断られるのを承知でそう口にした。
「えっ、何で?」
春菜が、驚いた顔をする。
流石に昨日の今日だもんな。断ろうとするよな。
「ん。だって、今日僕の父さんが、春菜の家に行ってるから?だから、迎えに行くの。ほら、僕の父さん酒癖悪いじゃん。おじさんと会うの楽しみにしてたからさぁ。僕達が学校終わった頃には、春菜の家の中、大変な事になってると思うんだよね」
僕は、朝父上に言われた通りに言葉を紡ぐ。
すると、春菜も昔の父上の事を思い出したのか、顔色を変えた。
「うん、わかった」
春菜が、承諾する。
「ちょ、春菜。大丈夫なの?」
友達が、焦るように春菜に問う。
「うん。あっ君の家族とは、仲良くしていたからね。お父さんもあっ君だと安心してるしね」
意味深な言葉を春菜が口にする。
あぁ、でも昨日、同じようなこと言ってたな。
「そ…そうなんだ」
驚いた顔をしながら、そういう友達。
何があるんだろう?
「ほら、お前ら席に着けよ」
担任の先生の声が、教室に響く。
「じゃあ」
僕は、それだけを言い残して、自分の席に着いた。
僕の予測だけど、おばさんが居なくなってから、家に誰も呼んでないんじゃないかな?
そう思いながら、先生の話を聞いていた。