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猫耳王子  作者: 麻沙綺
14/22

揺らぐ思い

何時もよりも清々しい目覚め。

なのに瞼が重い。

掛け布団を退かし、自分の格好を見れば、制服のままだ。

でも、自分でベッドに入った覚えはない。

スカートには皺が寄っていた。

うわ~これ早く直さなきゃ。

私はスカートを脱ぎ短パンに履き替え、スカートにアイロンをかけ始めた。

昨日は、お風呂も入ってない。

時計を見れば、まだ時間がある。

私は、急いでアイロンをかけ終えるとシャワーを浴びるために着替えをもって脱衣所に向かった。


うわ~。

目許が赤く腫れている。

って、そんな事してる場合じゃない。

早く浴びないと…。

私は、シャワーを浴び、髪と身体を洗い上がる。

制服を身に付けて、髪をドライヤーで乾かして、脱衣所を出た。

リビングに移動すると、お父さんが新聞を読んでいた。

「春菜、おはよう。昨日、敦斗君にあったよ。カッコ良くなってたな」

って、新聞を畳んでテーブルの隅にやるとそう言ってきた。

えっ、あっ君に会ったの。

「おはよう、お父さん。…で、あっ君は?」

「ん?あぁ。挨拶した後、帰っていったよ」

お父さんが、淡々と答える。

へっ、あっ…。

「まさか、居ると思ってがっかりしたか?敦斗君、礼儀正しく挨拶して、春菜の状況も説明してから、帰っていったよ」

お父さんが苦笑する。

「えっ…、あ…」

言葉が続かない私。

「敦斗君に取られるのも時間の問題かな」

って、小声で言うお父さん。

その言葉に機敏に反応してしまう私。

「朝御飯作るね」

私は、慌ててキッチンに向かい準備をした。

その後ろで、お父さんがクスクス笑ってた。


朝食を食べ終えると流しに食器を片付け、自分の部屋に鞄を取りに行く。

「お父さん、行ってきます」

お父さんに声をかけてそう言うと。

「行ってらしゃい。気を付けていけよ」

お父さんの言葉に。

「はーい」

と返事を返して家を出た。


教室に入れば、あっ君の回りに女の子が集まってる。

あっ君は、そんな女の子達にも笑顔で対応してる。

何か、モヤモヤする。

これなんだろう?

胸の奥が痛い。

私以外の女の子に優しくしないでって、思ってしまうのって、心が狭いからなのかなぁ。

そう思いながら、自分の席に着く。

ハァー。

「春菜、おはよう。朝から、何溜め息ついてるの?」

そう声を掛けてきたのは、真理だ。

「あ、おはよう。真理。ん、何にもないよ」

そう言いながら、知らず知らずにあっ君の方に目が行く。

「さっきから、転校生ばかり見てるけど、何かあった?」

真理に目を向ければ、笑みを浮かべてる。

何、その笑みは?

「春菜が今まで男の子に興味がなかったのは、彼が居たからなのかなぁって思ってさ」

えっ、ちょっと待って…、それはどういう意味で言ってるの?

「春菜ってさぁ、男の子にモテモテなの気付いてた?」

それは、初耳ですよ真理さん。

「"凛とした姿の中に憂いがあって、守ってやりたいと思わせる"って男の子達が言ってるの知らないの?」

ニマニマと気持ちの悪い笑みを浮かべていた。

「今だって、何時もと雰囲気が違うから、何かあったんじゃないかって、言ってるんだけど?」

へっ?

私は、慌てて周りを見れば、チラチラとこちらを窺うような視線がある。

う…、なんか緊張するよ。

そんな中。

「春菜、おはよう。目、大丈夫?」

あっ君が、女の子達から逃れるように来て声をかけてきた。

その手は、私の目許に延びてきた。

「あっ君、おはよう。大丈夫だよ。昨日、お父さんに会ったんだって?」

私は、あっ君の手を掴んだ。

あっ君が驚いた顔をするが、素知らぬ顔で手を下ろす。

「うん。春菜昨日疲れて寝ちゃったでしょ。一人にしておけなかったから、おじさんが返って来るまで待ってたんだ。…で、挨拶だけして帰ったんだよ。おじさん、昔っから変わらないね」

あっ君が答えてくれた。

それを聞いてた真理が。

「えっ、何で吉井くんが…」

そう言いながら、私とあっ君を交互に見だす真理。

真理が不思議がるのは仕方がない。親友の真理でさえ、家に上げた事がないのだ。

逆に真理の言葉にあっ君もキョトンとしてる。

「ん?何か、問題があった?」

あっ君の猫耳が垂れてる。

大きな目が私に何か不味かったかと説いている。

「あ…、うん。ちょっと…」

私が言葉を濁すと真理が。

「ねぇ、吉井くん。昨日、春菜の家に行ったの?」

あっ君に訪ねる。

「うん、行ったよ。こっちに戻ってきたし、おじさんに会いにね」

あっ君の言葉に真理の目が大きく見開かれた。

「ねぇ、春菜。今日も春菜の家に行ってもいい?」

あっ君の無邪気な笑顔に。

「えっ、なんで」

疑問しか浮かばない。

昨日の今日だよ。二日続けてくるとは思わないよね。

しかも真理が見てる前で…。

「ん。だって、今日、僕の父さんが春菜の家に行ってるから?だから、迎えに行くの。ほら、父さん酒癖悪いじゃん。おじさんと会うの楽しみにしてたからさぁ。僕達が学校終わった頃には、春菜の家の中大変な事になってると思うんだ」

悪戯っ子な顔をするあっ君。

あー、そうだった。

あっ君のお父さん、呑み出すと大変なんだよな。

「うん、わかった」

私がそう言えば。

「ちょっ、春菜。本当に大丈夫なの?」

真理が心配そうに聞いてきた。

「うん。あっ君の家族とは仲良くしてたからね。お父さんも、あっ君だと安心してるしね」

今朝の事を思い出してそういう。

「そ…そうなんだ」

戸惑いながら、真理が言う。

「ほら、お前ら席に着けよ」

担任の言葉に。

「じゃあ」

あっ君が、そう言って自分の席に戻っていった。



あっ君、昨日の事何も触れなかった(お父さんの事以外に)。

まぁ、ここで話す事じゃないとわかってるから、当たり障りの無い話にしたのだろうけど、かえって不振がられてる気がする(特に真理に)。

だけど、真理には言えない事でもあっ君には言えるんだ。

そのせいで昨日気持ちが爆発しちゃったんだよね。


その時、心配そうな顔で私を見てる真理が居るなんて、私は気付かなかった。





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