M1 エレノワエクスプレス
M1はミッション1と言う意味です。
話数の代わりにそう表記していきます。
冷蔵庫にあったポテトフライを食べたサンドラはエレノワの会社へ行く事にした。
外へ出て来たサンドラは信号待ちをしている車に近付くといきなりドアを開けた。
「借りるわよ。」
「えっ!?えっ?」
無理やり投げ出された女性は訳も分からず戸惑っている。それを尻目にサンドラは助手席にあったカバンを女性に投げ付けた。
「ありがとう。」
そう一言言うとサンドラはアクセルを踏み込み、車を走らせた。後には呆然と立ち尽くす女性だけが残された。
エレノワに言われた道通りに来るとそこにはエレノワエクスプレスがあった。
「じっくりみるとなかなかね。」
サンドラは会社の前に車を停めて降りると、一言そう呟いた。確かに平屋ではあるがなかなかの面構えであり、それなりに忙しそうでもあった。現に今も1台トラックがサンドラの前を通り過ぎていった。
「社長とはね。」
サンドラはそう言いながら笑うと、建物の中へ入って行った。
「とにかく行きなさい!!……なに?……そんな事は後よ!!今はつべこべ言わずに仕事する!!……バカ!!」
サンドラが事務所に入るとエレノワが無線を叩きつけていた所であった。
「備品は大事にしろって社員に怒れないわよ。」
「サンドラ!!エリス、紹介するわ妹のサンドラミディアム。サンドラ、こちらは経理をやってもらっているエリスよ。」
「よろしくエリス。」
「こちらこそ、サンドラさん。」
サンドラが手を差し出すとエリスは快く手を出してくれた。
「良く来てくれたわサンドラ。」
「散々アパートでお礼は聞いたわよ。」
「問題発生なの、一緒に来て。」
エレノワはそう言うとサンドラの背中を押して事務所を出ようとした。
「エリス、少し出かけてくるわ。」
「了解。」
「留守番よろしく。」
「サンドラさんも頑張って下さい。」
「あっ、どうもありがとうございます。」
エリスに声をかけられサンドラは笑みを浮かべながら答えた。それを無視するようにエレノワはサンドラを押し続けた。
「なに問題は?」
トラックに乗り込んだサンドラはエレノワに尋ねた。
「ちょっとヤミ金に追われてて。」
「ヤミ金って。」
エレノワの言葉にサンドラは呆れたように答えた。
「ビザの無い密入国者にまともな所が貸してくれるって?」
「……確かに。」
「だからヤミ金に借りるしか無かったの。」
「それで幾ら借りたの?」「30万ドル。」
「……今は?」
「利子諸々を含めると今は57万3000ドル。」
「……まったく。」
サンドラはエレノワの頭を叩いた。
「それで。」
「買い物に行くのもままならないのよ。」
「でしょうね。」
「それで私が買い物してる間見張ってて。」
「そう言われると思ったわ。」
「て事は?」
「ちゃんとついていくわよ。」
「さすがは我が妹。」
「ちゃんと案内してよね。まだこの国に来て6時間だからね。」
「もちろん、行きましょ。」
「了解。」
サンドラはそう言うとトラックを走らせた。
「着いたわ、ここよ。」
エレノワの言葉にサンドラはトラックを停めた。
目的地の店はあまり大きくないが、そこそこの大きさで日用品や食料を買うのなら事欠かないだろう。
「さてと私は買い物に行ってくるから、見張りをお願い。」
「了解。でもエレノワが中にいるのに私が見付けただけでどうするの?」
「あっ、それじゃ私の携帯を1つあげるわ。」
「ありがと。」
「それじゃ行ってくるわ。」
エレノワはそう言うとトラックを降りて店へと入って行った。
残されたサンドラは周囲を見回した。特に怪しい車は無く平穏なようであった。
「何も無さそうね。」
サンドラはそう呟いた。しかしそこでサンドラは気付いた。エレノワがここで買い物をする事をヤミ金は知っており、店内で待ち伏せをしているのではないか。そう思ったサンドラはエンジンを切り、トラックから降りた。そこへ着信があった。エレノワからと表示されていた。
「どうしたの?」
『待ち伏せされてた!!』
「やっぱり!!」
『とにかく裏口に回って、そこから逃げるから。』
「分かった。」
サンドラはそう答えると携帯を切り、トラックに乗った。
「て事は、裏口に車を停めてる事になるわね。」
サンドラはそう言いながらトラックを走らせ、裏口に回った。すると案の定、車が停まっていた。
「チェストー!!」
サンドラはその車におもいっきり突っ込んだ。
あまりの衝撃に車は一回転した。ちょうどそこへエレノワが裏口から出て来た。
「姉さん、急いで。」
「はいはい。」
サンドラに急かされエレノワは助手席に飛び乗った。
「出して!!」
「了解!!」
エレノワの言葉にサンドラはトラックを発進させた。そこへヤミ金も裏口から出て来た。
「早く!!追い付かれる!!」
エレノワの焦り声にサンドラは落ち着いてトラックを加速させた。しかしヤミ金は車を猛スピードで飛ばして追い掛けてきた。
「ちょっと掴まっててよ。」
「えっ?危ない!!」
サンドラの言葉に驚くエレノワであったが、サンドラの行動に叫び声をあげた。サンドラは反対車線を走り始めたのである。
「何してるの!!」
「反対車線を走ったほうが、敵を撒くのに最適なの。」
「何で!!」
「前から来る車を避けないといけないでしょ。それに。」
「やっ!!」
サンドラはトラックをわざと前の車にぶつけた。当てられた車はサンドラの運転するトラックが斜めから当たってきた為、大きくスピンしながら車線を進んだ。そこへヤミ金の運転する車がいたのだが、スピードを出し過ぎていた為に正面からまともに激突した。
「ねっ?逃げ切れたでしょ?」
「……危なかった。」
サンドラの言葉にエレノワは胸を押さえながら答えた。
「さあ着いたわ。」
「ようやく帰って来れた。」
エレノワは会社に戻って来た事に喜びトラックから飛び降りた。
「ありがとうサンドラ!!貴女がいて助かったわ。」
「気にしないで。これくらい簡単よ。」
「本当に感謝してるわ。お礼にこれを。さっきの店で拾ったわ。」
そう言うとエレノワはポケットから50ドルを取り出した。
「良いの?」
「私の50ドルもあるから山分けよ。」
「それじゃ頂くわ。」
「いいのよ。本当にありがとう。」
「それくらいで良いわよ。」
「それじゃ私は仕事があるから。」
「あっ、それじゃまた。」
サンドラの言葉にエレノワは会社へと入って行った。サンドラは取り敢えずアパートに戻ることにした。