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プロローグ

「何してるの?行くよ。」「どうしたの?」

「返事が無い。」

「ほっときなよ、サンドラ。」


そう言うと女性は甲板へと行き、サンドラと呼ばれた女性も後を追った。





「遂に来たわね。ここがニューヨークよ!!」

「えぇ。」


女性の言葉にサンドラは返事をした。

彼女の名前はサンドラミディアム。ユーゴスラビア人で元軍人である。ニューヨークで一旗挙げたと言う姉のエレノワミディアムからメールを貰い、隣にいるユリナと一緒にニューヨークに来た。



「これからどうするの?」「とりあえずは姉の所に行くわ。貴女は?」

「夢を手に入れるわ。」

「それを叶えたのが姉みたい。豪邸に高級車に男、何でも手に入ったってメールに書いてあったわ。」

「羨ましいわね。私もそれにあやかりたいわ。」

「大丈夫、貴女なら出来るわ。」

「ありがとう。それじゃ私は行くわね。」

「えぇ、元気で。」


ユリナはタクシーに乗り、市内へと消えた。

サンドラはカバンを片手に姉が来るのを待っていた。




そこへ一台のトラックが走って来た。そこそこの大きさのトラックである。そのトラックはサンドラの目の前に止まった。そしてそこから降りてきたのは姉のエレノワであった。


「サンドラミディアム!!私の妹よ!!」

「エレノワ!!久し振り!!」「良く来たわね。」

「どうしたのトラックって。」

「いや……これはちょっとね。」

「そう。」

「……まあ、とにかく良く来たわ。早速家に行きましょう!!」

「豪邸に案内してよ。」


エレノワはサンドラのカバンをトラックに積むとワイン瓶を取り出した。そしてそれを飲むと叫んだ。


「私の妹サンドラミディアム様のお出ましよ!!トップに上り詰めるのよ!!」


その言葉に近くにいた船員は呆れた眼差しで見つめていた。それに耐え切れずサンドラはエレノワを急かした。


「早く行きましょ。」

「そうね。でもちょっと酔ってるかも。」

「ちょっと?」

「代わりに運転して。」


エレノワはそう言うと鍵をサンドラに渡した。


「さぁ行くわよ。」


そう言うとエレノワは助手席に乗ってしまった。


「全く。」


サンドラは溜め息を吐くと運転席に座った。


「ビザは持って無いわよね。」

「えっ?」

「ビザよ。」

「持って無いわ。」

「なら住むのはマスペス地区よ。東欧系の移民は大抵そこに住んでるわ。」

「成る程。」

「因みにここはクイーンズ区。その中のマスペス地区よ。カーナビに登録してあるから大丈夫よ。」

「ありがとう。」

「大日本帝國産のトラックだから高かったけど、高性能だから。」

「成る程。」


そう答えるとサンドラはアクセルを踏み込んだ。



「あっちはどう?」

「どうって?」

「何か変わった?」

「何も。全て同じ。」

「そう。」

「そう。」

「けどまぁ、来てくれて嬉しいわ。ありがとう。」

「よしてよ。」


サンドラはエレノワの言葉に少し照れながら答えた。



「あっ、あれが私の会社よ。大事な資金源。」

「成る程。運送会社ね、それでトラックか。」


サンドラは納得したように頷いた。

それから少しトラックを走らせるとエレノワが叫んだ。



「そこよ!!着いたわ。」

「………これ?」


トラックを停めたサンドラは愕然とした。エレノワが指差した建物は古いアパートであった。





「さあ入って、自分の家だと思って寛いで。」

「……」


サンドラのカバンを持ち部屋に入ったエレノワは兎角上機嫌であった。それに対してサンドラは堪えていた。



「実は仕事終わりだったのよ。今は……もう午前6時ね。」

「どう言う事?」

「なにどうしたの?」


エレノワはベットに横になりながらサンドラに尋ねた。


「嘘だったのね。」

「ウソ?」

「全部嘘じゃない!!豪邸何て無くてただのアパートだし、高級車には程遠いトラック、男何て影もない!!」「そう起こらないの。」

「怒ってない!!」


サンドラは怒りを抑えながらソファーに座った。エレノワも説得する為にベットから起き上がり座った。


「ちょっと誇張し過ぎたけど、私達で頂点を掴むのよ。」

「……」

「手始めに私の『エレノワエクスプレス』を大きくするのよ!!」

「エクスプレスって電車じゃない?」

「……もう社名登録しちゃったわ。」

「……全く。分かったわよ。手伝うわ。」

「さすがは我が妹!!そう言ってくれると思ったわ!!」「思い通りね。」

「会社をビッグにすれば金が入って来るわ。そうなれば豪邸も高級車も男も手に入るわ。」

「頑張るしか無いわね。」「さてと、私は仕事に行くわね。」

「もう行くの?」

「仕事が残ってるからね。まあゆっくりしてちょうだい。冷蔵庫にあるのは自由にして良いわ。それと私の会社はこのアパートを出てすぐ左の道なりに進んで。2つ目の信号を左に曲がって。そうすればすぐT字路の角に会社があるわ。」

「えっ……私は。」

「それじゃあね。」


エレノワはそう言い残すと部屋を出ていった。

残されたサンドラは取り敢えず冷蔵庫からジュースを取り出して飲み干した。





時に1995年春。新参者がニューヨークに降り立った。後にクイーンファミリーを組織しニューヨークマフィアの頂点に君臨する、サンドラミディアムの物語が始まる。




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