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第68話 ブレイド3

祓川高校グラウンド――


 観客席など存在しないはずのその場所は、今や異界の投影魔法によって世界中の注目を集めていた。



 黒髪の女と、金髪碧眼の男。


 対峙するだけで、空気は鉛のように重く張りつめる。


「――“デイウォーカー”。そして、“原初の吸血鬼” 永遠」


「――“真祖”。ドラコ」


 互いに名を呼ぶ声には、敵意よりも先に誇りが混じっていた。


永遠は唇を吊り上げ、挑発するように笑う。

「いいわ。あんたを倒して、吸血鬼最強を示す。“真祖”を斃すのは、いつだって“デイウォーカー”なのよ」



 黄金の瞳を細めたドラコが困惑気味で言う。

「何を言っているのだ?お前は……」



 だが言葉の続きを遮るように、永遠は無造作に腕を伸ばした。


 構えるのは漆黒のデザートイーグル。

「ふん――これでも喰らいなさい」


 轟音。

 50口径の弾丸が火を噴き、空気を裂いた。


 次の瞬間、ドラコの身体が弾け飛ぶ。


 腕が吹き飛び、胴には大穴が穿たれる。

「な……なぜだ? まさか、この弾は……」


 永遠は冷ややかに吐き捨てた。

「法儀式済み。水銀弾頭。しかも50口径。……当たれば、体内で銀が飛び散るのよ」


 だが、ドラコの心臓は守られていた。


 無数の蝙蝠に姿を散らし、わずかな時間で肉体を再生させる。


「下賤な戦い方を……! 貴様、吸血鬼でありながら――」


「無駄口が多いわね」

 永遠は既に次の武器を構えていた。


 ライフル型の麻酔銃。


 トリガーが引かれるや否や、鋭い連射音がグラウンドに響く。


「そんな玩具で、私が止まるとでも――」


 余裕を見せるドラコ。だが頬をかすめた傷が、いつまで経っても塞がらない。


「……これは?」


「ふふ。気づいた? 再生しないでしょ?」

 永遠は刀に手をかけ、挑発的に微笑んだ。


「特殊血清よ。何本も浴びたんだから……しばらくは、再生も飛散もできないわ」

 焦りを隠せず、ドラコの表情に亀裂が入る。




 異世界 ― コロシアム



「すげぇ……“アドラステイア”が、“真祖”を一方的に押してる!」


「やめろよ! ドラコに全財産突っ込んだんだぞ!」


 投影を見つめる群衆は、悲喜こもごもの叫びを上げる。


 掲げられたオッズは――アドラステイア二十倍、ドラコ一倍。


 下馬評を裏切る展開に、場内は熱狂に震えた。




 王宮 ― 大広間



「……まさか、“真祖”が劣勢とは」


「これはまずい。均衡が崩れるぞ」


 貴族たちがざわめき、国王も重々しく眉をひそめる。


 そんな中、聖女セラフィーナだけが冷静に言葉を落とした。

「……これは、まずいわね…」




 悪魔城



 魔王サタンが高らかに笑う。


「ははっ! すごいやん。ドラコ相手に一方的やなんて……。これ、世代交代あるかもしれへんでぇ?」


 周囲の悪魔重鎮たちも、椅子を叩き、拳を握りしめる。


「流石ですな! 手に汗握るとはこのこと!」


「直に観戦したいものです!」


 その熱狂は地獄すら揺るがすほどだった。




 祓川高校 ― グラウンド



 永遠は静かに刀を抜いた。

 両刃の直刀。法儀式済み、アダマンチウム製。


「ふふ。多分、もう再生も飛散もできないわよ」

 永遠の口角が鋭く吊り上がる。


「さて……そろそろ、こいつの出番よね」


 銀の刃が月光を反射する。


「刀のサビになりなさい」

 一歩踏み込む。

 

 大気が震え、刃が閃光となる。


「ま、待て! 落ち着け――!」


 焦るドラコを前に、永遠の瞳は一片の迷いもなく輝いていた。



 グラウンドでの戦いは、さらなる緊迫へと加速していく――。

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