第63話 お約束の展開
時計の針がゆっくりと進み、また――お約束の零時が近づいてきていた。
が、その一時間前。
永遠のマンション。
「例の物、用意できたですって! 時間ないから今から取りに行くわ!」
電話を切るやいなや、永遠は夜の街へと飛び出した。
繁華街の裏路地。酔客も寄りつかぬ通りを抜け、さらに曲がり角をいくつか回ると、そこにはひっそりと佇む一軒の居酒屋があった。
カラン、と引き戸を開ければ――不釣り合いに長い廊下が続く。
木の軋む音を踏みしめながら奥へ進み、横にある目立たぬ扉を押し開けると、そこはもう別世界。
無骨な蛍光灯に照らされた店内には、壁一面に並ぶ武器の群れ。
自動小銃、刀、槍。
さらには光沢を帯びた防護服や、どこか異質な雰囲気を放つコンバットスーツまで。
カウンターには長髪の大柄な男が肘をつき、にやりと笑う。
「頼まれてたもの、用意できたぜ。儀式も済ませてある。もちろん、“薬”と“服”もな」
「いいじゃない。これがなくちゃ始まらないのよ」
永遠は迷いなく荷物一式を受け取り、艶やかな笑みを浮かべた。
――深夜二時、家成家。
「やあ、やってきたよ」
永遠は影のようにベッドへ滑り込む。
だがそこにあったのは、無防備な寝息。
「zzzzzz……」
一人と亜紀は仲良く眠りこけていた。
「おーい……」
永遠は一人の肩をつつく。
「う、うん……もう寝ようよ」寝ぼけ声が返る。
「いや、私、ヴァンパイアだから夜型なんだってば!」
「うっさーーーーーい! 何時だと思ってんのよ! 毎日毎日!」
亜紀が布団の中から飛び起き、怒鳴った。
「もういい、出てけ! 一人連れて別の部屋でシケ込んでなさい! 貸してやるから!」
「えっ、ほんと?! じゃあ行こ!」永遠の目が輝く。
「ごめん……深夜二時だろ? 無理だから。眠いんだ、お願い……」
一人は必死に手を合わせる。
「え〜、仕方ないか〜……」
永遠は渋々布団に潜り込み、そのまま隣で眠りについた。
――こうして、朝が来る。
それは、運命の金曜の夜から、土曜の朝へと繋がる。
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