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第54話 フィーリングカップル4対4

 円卓の空気が再びきしむ。


 先に沈黙を破ったのは、鋭い黄金の瞳を光らせたドラコだった。


「――いつぞやの決着。今回でつけさせてもらう」

 正面のレヴィへ向けた言葉は、挑発というより宣戦布告。


 しかしレヴィは肘をつき、軽く笑って返す。

「決着って……あんたいつも最後は『今回はここまでだ』とか言って逃げ出すじゃない」


「ふん。戦略的撤退をしたまでよ」

 ドラコは顎を上げ、勝ち誇ったような笑み。


 レヴィはため息を吐きつつも唇を吊り上げる。

「まあいいわ。私の相手はあんたね」


 そこで、亜紀がすっと声を上げた。

「私はイゾルテと組むから。2対2で来てよ」


 「ふーん……じゃあ私だね」

 澪が椅子を引き、冷めた瞳でテーブル越しに敵を見据える。


 すると永遠が、慌てて立ち上がった。

「ちょっと待って!! りりのママ! 私、『真祖』と殺ってみたいわ。いい?」


 レヴィがきょとんと目を丸くする。

「いいけど……ドラコ、いい?」


 「構わん。どうせこの娘を倒したら、お前のところに向かうしな」

 ドラコは鼻で笑い、軽く手を払った。



(イゾルテ:あれっ?なんか変な方向に話が行ってない……?)


 アウレリアが静かに口を開いた。

「私の相手は?」


「じゃあ、りりがするよ。ママが出るほどの相手じゃなさそうだし」

 りりは胸を張って答える。


「じゃあ、わたしは澪ちゃんとペアね。アグラットなら申し分ないわ」

(イゾルデ:はっ!? 何言ってんの!? なんで一番強のが来てんのよ!? うそでしょ!)


 亜紀は眉を吊り上げ、鋭く告げる。

「ふん。この前の借り、返させてもらうわ。妹たちの分もね」


「じゃあ私はイゾルデか〜。手の内知ってる同士、少しやりにくいけど」

 澪が軽口を叩く。

(イゾルデ:うーん……このペアと殺るのか。うそでしょ。レヴィアタンとのペアとかあり得ないんですけど……)



 その間、セラフィーナは黙ったまま一人を見つめていた。


 そしてゆるりと歩み寄ると、そっと彼の額の傷へ指を伸ばす。

「うーん……」

 彼女は自分の額を一人の額に寄せた。


 吐息が触れ、甘い髪の香りが広がる。鼻先と鼻先、唇と唇が重なりそうなほどの距離――一人の心臓は跳ね上がる。



「人の男に何するんじゃ〜!!」

 永遠が叫び、椅子を軋ませる。


「りりの旦那様だよ!」

 りりが負けじと声を張る。


「聖職者が、人の男に何すんの?」

 澪も鋭い視線で突っ込む。


 セラフィーナはくすりと笑った。

「ふふっ。ごめんなさい。でも……もうほぼ同化してるわね。なら、サマエル、この会話聞いてると思うわよ。でしょ?」



 彼女の言葉に、一人はぎゅっと目を閉じ、首をかしげた。


 次に発せられたのは、一人のものではない、低い声だった。

『……ううっ……近い内に、そっちに還る。もうすぐ……』

 直後、一人はそのまま意識を失った。



 円卓を囲む全員が、言葉をなくす。覚醒が近いという事実――その重大さを悟ったのだ。


 ただひとり、亜紀を除いて。


 彼女は心の奥で微笑んでいた。時は近い――と。




 ――会食後。



 サタンがセラフィーナに目を細めて言った。

「最後のあれ、無理やりサマエル呼び起こしたやろ」



 セラフィーナは涼しい顔で肩をすくめる。

「そうですか? まあ、彼女たちにもサマエルを保護することの危機感を知ってもらえてよかったと思いますよ。

 一人君、守る側に戸惑いが生まれたんじゃないかな? ……偶然ですけど」



「相変わらずやな〜君」

 サタンは苦笑を浮かべるが、その眼は愉快そうに光っていた。


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