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第97話 コンセクエンス(2)

 亜紀は、ふっと笑った。


「死のう。うん、それがいい」


 立ち上がり、腕を広げる。


「……あんた殺して、私も死ぬ」



 空間が、再び裂ける。


 宙に、黒い穴が開き――


 そこから、一本の刀が現れる。


 亜紀は、それを掴んだ。



「おい」


 鬼の形相で、告げる。


「スパッとやるから、動くなよ」


 刀を抜く。



「これはね、“次元刀”」

 冷たく、無慈悲に。


「これなら、あんたを切れる」


 刃を構え。


「いい?

 動くと、変なとこ切って、逆に苦しいから」



「ちょ、ちょっと!!亜紀、落ち着――」


 りりの制止は、間に合わなかった。



 ――一閃。



 世界が、断ち切られる。




 その刹那――



「――戻ってきたぞーーーーーーーッ!!」


 鎖が断ち切られる音が、空間を震わせた。


 床に膝をついていた一人が、勢いよく立ち上がる。



 いや――



 サマエル。



 だが、視界に飛び込んできたのは、安堵とは真逆の光景だった。



 振り下ろされる――亜紀の次元刀。



「っ……!」


 反射だけで身体が動く。



 刃を、真剣白刃取り。



 火花が散る。


「はっ……はっ……はっ……」


 荒い息の合間に、苦笑が漏れた。


「……なんで戻った瞬間に、

 こんなハードモードなんだよ……

 誰か説明してくれ……」



 完全に、意識が切り替わっている。



“いつもの一人”ではない。


 サマエルとしての人格が前に出ていた。



「くっ……死ねっ!!」


 亜紀は容赦なく、再び斬りかかる。



「いやいやいや!

 ほんと待って、待って!!」


 サマエルは必死に距離を取り、後退する。



「聞いてくれ!

 アグラット――戻ったんだって!


 ほら、落ち着こう! 一回深呼吸しよう!」


 だが、壁際に追い詰められ、逃げ場はない。



「……うっ……うっ……」


 亜紀の腕が震える。



「だって……だって……

 あんた……トカゲと結婚するんだもん……


 なんで……なんでよぉ……」


「ポッ出もポッ出!!しかもサブヒロインですらないモブ!!」


「愛も恋も伏線もゼロのやつとー

 なんでそんな簡単に結ばれるのさぁ!!」



 涙と鼻水を垂らしながら、完全にメタな方向へ大爆発。


「 積み重ねたイベント!好感度!個別ルート!」


「全部なかったことにする気かぁぁ!!」


「今までのヒロインたちに謝れぇぇぇ!!」


「謝れよぉぉぉぉ!!」




 その言葉に、サマエルは目を瞬いた。


「……は?」


「なんの話だ…… また“一人”が何かやらかしたのか……?」



 助けを求めるように、りりを見る。



 すると――


「やっと戻ったね」


 りりはそう言って、

 何の躊躇もなく抱きついた。



「おかえり」


「……お前」


 サマエルは、そっと抱き返す。


「……リリス、だよな」



「うん」


 そのやり取りの横で、

 亜紀は、ただ泣いていた。



 次元刀を握ったまま、

 声を殺して。





 ――30分後。



 荒れていた空気はようやく落ち着きを取り戻し、

 亜紀はソファに深く腰を下ろして、長い息を吐いた。



「……まだ、完全には戻ってないよ」

 そう前置きしてから、亜紀は一人――いや、サマエルを見る。



「たぶん、また“こっちの一人”に戻ると思う」


「そうか」

 サマエルは肩をすくめ、苦笑した。



「まあ、俺と“元の一人”はリンクできたしな……。

 どうやら、相当いろいろあったみたいだ」


 その言葉に、りりが首を傾げる。


「ねえ、ところでさ」



 少しだけ間を置いて、無邪気に。

「別宇宙の“私”って、どんな娘なの?」



 一瞬、亜紀の動きが止まった。


「ああ〜……それ、聞く?」

 困ったように笑いながら、首を振る。


「やめといたほうがいいと思うけどなぁ……」


 サマエルも、無言でそれは言うなという顔をする。



 しかし――


 りりは期待に満ちた笑顔で待っている。



「うーん……」


 亜紀は観念したように俯いた。



「驚かないで聞いてほしいんだけど……」


「向こうのりりは、すっごく若くてね」


「若い?どれくらい?」


「……小学6年生…しかも婚約してるんだ…」



「えっ」


 りりはじりっと距離を取る。


「それ、完全にアウトなやつじゃない……?ロリコンなの?!」



「… 中学生の娘もいてさ…その娘 初めてなのに…ナース服着させられて、失神するまで…ごめん これ以上は言えない」と亜紀が額に手を添える



「うわぁ……もう犯罪者だよ…」


 りりは額に手を当てる。



「昔はさ、もっと硬派でさ」


「無口で、強くて、格好良かったじゃない……

 どうしてそんな風になっちゃったのよ……」


 今にも泣きそうだ。



「ち、違う!」


 サマエルが全力で否定する。


「それは俺じゃない!“一人”だ!」


 亜紀は深いため息をついた。



「とにかくね……」


「女癖が壊滅的になってるの 「毎晩のように寝室に別の女が忍び込むとか」」


「もう病気だと思う」


 亜紀はきっぱり言い切った。


 マンションに、再び重いため息が響く。




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