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第91話 オールドルーキー 再び

 ある日――教室にて


 ――日常のはずだった――


 いつもの高校。


 いつもの校舎。


 いつもの、少し古びた教室。


 家成一人は、自分の席に座りながら、しみじみと天井を見上げていた。


(……戻ってきた)



 夜の国。


 人外に追われ、


 無理やり結婚させられ、


 種馬生活を送り、


 悪魔城での恐怖の結婚式。



 あの怒涛の日々が嘘のように――


「おはよー!」


「昨日さ〜彼氏がさ〜」


「やばっ、課題やってない!」


 教室は、いつもの騒がしさで満ちている。


(ああ……普通だ……)


(悪魔もいない、ドラゴンもいない……)


(人間だけの生活って、こんなに眩しいんだな……)


 一人は感極まって、目頭が熱くなった。



(もしかして……あれ全部、夢だったのかな?


 うん……そうだよな……)



 ――その時。


「……なに、感動してるの?」

 

 すぐ横から、涼やかな声。



 振り向くとそこには――


 黒髪の美少女・永遠。



 一人の視線に気づいた永遠は、

 にやりと口角を上げる。



(……あ、うん)


(現実だわ。これ)


 現実は、いつだって優しくない。


 しかも――追い打ちをかけるのが大好きだ。



 そして、その“追い打ち”は、

 HR開始と同時にやってきた。





「はい、皆さん。静かにしてください」

 担任教師が黒板の前に立ち、咳払いをする。



「今日は皆さんにお知らせがあります。

 転校生を紹介いたします」



(……やめて……)


(一瞬で嫌な予感がしたんだけど……)


 教室の扉が、ガラリと開く。



 そこに立っていたのは――


 プラチナブロンドのミドルヘア。


 赤いヘアバンドが映える、整った顔立ち。


 清楚で、柔らかくて、守ってあげたくなる笑顔。



 ……そして。


 どう見ても強調されすぎなEカップ。


 制服のシャツが、男子の視線を根こそぎ吸い寄せていた。


「今日から皆さんと一緒に学ぶことになりました。

 **馬原まはら 亜紀あき**さんです」



 ぱちぱちぱち、と拍手。


 男子はざわつき、

 女子は一瞬、静まり返る。



 ――そして。



 次の一言で、世界が終わった。


「はじめまして、馬原亜紀と申します」


 一礼。


「このクラスの……


 家成一人さんと、お付き合いしています。


 よろしくお願いします」



 ……。


 …………。


 ……………………。



 教室、フリーズ。


 女子たちが、ゆっくりと一人を見る。


「……え?」


「家成って……永遠の彼氏だよね?」


「え、なにそれ……修羅場?」


「最悪……」



 男子たちも、一人を凝視する。


「なんであんな陰キャが……」


「嘘だろ……」


「人生、理不尽すぎる……」



(えーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?)

 一人の心の叫びは、声にならなかった。



 だが、現実は容赦がない。


「じゃあ馬原さん、

 ちょうど家成君の横の席が空いてるから」


 教師、無慈悲。


「はいっ!」


 元気よく返事をして、

 亜紀は――迷いなく一人の隣に座った。




 修羅場、着席完了


「ふふっ、来ちゃった」


 にこやか。


 まるで遠距離恋愛中の彼女が、

 彼氏に会いに来たかのような声音。



 一人の机に、自分の机をぴったり寄せる。


「教科書、持ってないんだ。

 見せてもらってもいい?」


 上目遣い。


 破壊力、致死級。


「う、うん……いいよ……」


 つい頷いてしまう一人。



 ――その瞬間。



 ズギャアアアアアアアアアアアッ


 視線が、刺さった。


 いや、撃ち抜かれた。



 恐る恐る横を見ると――


 永遠。


 首が、**ギギギギギ……**と音を立てて回っている。


 目が、笑ってない。


 額には血管。


 唇からは、うっすら血。


 机の上で組んだ両手が――ミシミシと鳴る。


(あっ……)


(これ……今日、死ぬやつだ……)


 亜紀はそんな永遠に向かって、

 ウインク。



(こいつは、私のものだから♡)


 永遠は前を向いたまま、無視。


 ……だが、怒気は隠せていない。



「ねえ、ここなんだけど」


 亜紀はお構いなしに、

 一人の肩に、腕に、肘に――ボディタッチ。


 一人のHPは、秒で削られていく。


(胃が……)


(胃に穴が……)


(授業どころじゃない……!)


(た、たすけーーーーーーーーーーーー!!)



 心の中で叫ぶ一人。


 教室の空気を察したクラスメイトたちは、

 誰ともなく――



 合掌。


(南無……)


 こうして。


 家成一人の、平穏な学園生活は、

 完全に、音を立てて崩壊した。




☆ここまで、読んでくださり、感謝いたします。


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