第89.5話 Eye Hate U(2)
夜。
食後の“公開告白ショー”を終え、
ようやく布団へ倒れ込んだ一人。
(つ、疲れた……もう寝たい……)
澪はいつものように、当然のように隣に潜り込む。
同じ布団の中、距離が近い。
なのに空気が冷たい。
しばらく沈黙が続いたあと――
澪がぼそり、とつぶやいた。
「……トカゲの嫁にはさ。
あんなにハッスルするのにねぇ……」
(で、出た……!寝る前の黒いささやき……!)
澪は天井を見つめたまま、さらに続ける。
「僕のことが“いちばん”って言ってくれた
かわいいあの子……
今どうしてるんだろうね?」
その声は静かで、淡々としているのに、
妙に胸に刺さる。
「なんか…誓約した気がするんだよ。
“ずっとそばにいる”とか、“僕が一番”とか。
あれ……夢だったのかなぁ?
ねぇ、一人。君、知らない?
僕と添い遂げたいって言ってた“あの子”。」
さすがに耐えられず、一人は決意して澪を抱き寄せる。
「澪……本当に、ごめん。
僕は――」
だが。
澪はするっと体をひねり、
クッションみたいにふわっと距離を置いた。
「うーん……今日はねぇ。
君、トカゲ臭いから。」
「えっ」
「そんな気分になれないからさ。
明日にしてよ?」
そっけなく言い放つと、
ぱふっと枕に顔をうずめる。
しかし、沈黙は続かなかった。
しばらくして――
また澪のささやきが闇に落ちる。
「……僕のこと“一番”って言ってくれた
かわいいあの子はさ……
夜は――獣だったんだよ?」
一人の肩がびくっと震える。
「獣みたいに甘えてきて……
ぎゅーってして……
次の日も、その次の日も、
“澪がいちばん”って何回も言ってくれたんだ。」
ぐるりと目だけこちらに向けながら、
澪が問いかける。
「ねぇ、一人。
その子、どこ行ったの?
君、知らない?」
完全に尋問だった。
一人はもう、どう抱きつけばいいのか、
どう謝ればいいのか、
どう言えば地雷を踏まないのか、
まったくわからない。
(だって、抱きついたら避けられるし……
でも諦めて寝ようとすると、
また嫌味が飛んでくるし……
これもう詰んでない?)
「はぁ……はぁ……」
精神HPがレッドゾーンの一人。
澪は背中を向けたまま、
さらに追撃してくる。
「……あーあ。
あの“かわいい子”……
もう帰ってこないのかなぁ……」
(ギャーーーー!!重い!!
重すぎる!!寝られない!!!)
こうして――
一人の
“抱きつけば拒否され、離れればネチネチ攻められる”
地獄の一夜は、
深夜まで、延々続いたのだった。
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