表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

243/263

第84話 わたしの幸せな結婚?!(1)

ドラゴニア帝国・国教会



 龍神を祀る、黄金の柱と巨大なステンドグラスが煌めく大聖堂。


 その最奥、一番上座には皇帝代理の皇太子、ドラゴニュート貴族たち、

 教会の司祭たちがズラリと並んでいた。



「いや、今日は本当にめでたいですな!」


「異種族との婚儀など数百年ぶりですぞ!」


「愛は種族の壁すら越えるのですねぇ」



 ざわざわ……


 めでたい空気だけが勝手に盛り上がっている。



 

 白いタキシードを着せられた一人は、

 緊張というより、魂が半分どこかに飛んでいる表情で立っていた。



 ――というか目が虚ろ。


 明らかに魔法か薬か、何かされてる。



 対する新婦――エマニュエル・アイリアノスは、

 純白のドレスに身を包み、花束を両手で抱えて輝いていた。



 司祭が厳かに宣言する。


「汝、龍神の誓いにより——

 エマニュエル・アイリアノスを妻とするか?」


「はい……」


 返事した自覚すら薄い。


 ほぼ自動音声。



 続いて新婦側。


「汝、龍神の誓いにより——

 家成一人を夫とするか?」


「……はいっ……!」

 新婦エマニュエルは目に涙すら浮かべ、

 幸福オーラを撒き散らす。



 司祭は満足げにうなずき、

 杖を鳴らす。


「では……誓いの口づけを」


 会場「おおおおお〜〜〜!」


 パァァァァァン!


 上座で爆竹が鳴り、花びらが舞い散る。



 エマニュエルはそっと背伸びし、

 一人に口づけた。



 そして——



 その瞬間。



 一人、正気に戻る。


「……あっ」

 一人の目に、光が戻った。



 そして目に飛び込むのは——



 皇太子、ドラゴニュート貴族、司祭、参列者、花びら、鐘の音……


 そして新婦の幸福に満ちた笑顔。



(………………)


(……………………)



(ちょ、待て。


 え?


 俺、今……結婚……した?


 式……終わってる……?


 え、相手……誰?


 てか、え?


 ええええええええええええええええ!?)




 心の叫びは、祝福の大合唱にかき消された。



「ご結婚おめでとう!」


「いやぁ実にめでたい!」


「人間とドラゴニュートの愛だ〜〜!」


(ぜんっぜんめでたくないーーーー!!)

 

 しかしもう、後戻りはできない。


 書類は提出済み。


 誓いは済んだ。


 結婚は完了した。



(なんで!!こんなことにーーーーーーーー!!)



 一人の心の叫びは、

 ドラゴニア教会の巨大な天井にむなしく吸い込まれていった——。




 ドラゴニア帝国・ドラゴニア邸 大広間



 天井まで届く巨大なシャンデリアが燦然と輝き、

 大広間にはドラゴニュートの貴族、皇族、新婦の親族までパンッパンに詰め込まれた大宴会が広がっていた。




 笑顔、拍手、豪華な料理、煌めく衣装の波——完全にお祝いムード100%。


 そして壇上には、新郎新婦、皇太子、大臣、名だたる大貴族たち。


 嫌でも逃げられない配置である。



 司会の開宴宣言


「本日は、2人のために、このように多くの方々がご臨席賜りまして、誠にありがとうございます!」



(なんでや……なんでこんな満員御礼やねん……

 俺いつの間にこんなVIP婚の主役になったん……?)


 新郎・家成一人は、すでに精神が半透明。



 笑顔を作れと言われた置物のような顔で立っていた。




 壇上に立つのは、仲人に指名された張本人・アウレリア・ドラゴニア。


 皇族の威圧感をまといながら、堂々と挨拶を始める。


「アウレリア・ドラゴニアと申します。本日はご多用の中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。


 本来なら主人が挨拶するところではございますが、新郎新婦よりどうしてもとのことで——」



(え、俺いつ頼んだ?

 頼んだ覚えないで!?完全に既成事実やん!?)



 アウレリアは続ける。


「さて、2人の馴れ初めですが……新郎が困っているところに、新婦の助力で困難を解決したことが始まりで、これをきっかけに電撃結婚となった次第ですわ」


 と、美談風の総仕上げを披露。



 新婦、エマニュエル・アイリアノスは、

 その話を聞きながらぽろぽろと涙をこぼしうなずいている。



(いや違うやん!!


 俺の記憶では“助力”と言うより“拉致に近い保護”やったし、

 “電撃結婚”に関しては電撃どころか落雷やったで!?)



 一人は、涙ぐむ新婦を横目に——冷や汗だらだら。


 完全にメンタルHP残り3。




「一人くん、おめでとう!」


「よかったねぇ、優しそうなお嫁さんで!」


「エマを頼むよ。一人くん、ほんとにありがとうねぇ」




 そして、新婦の両親は——


 号泣しながら一人の手を握っている。


「う、うちの娘を……どうか末永く……ぐすっ……」


「うん……うん……本当にいい方と巡り合えて……!」



(あ、あかん……これ完全に詰んだやつや……


 “年貢の納め時”ってこーゆー時に使うんや……


 いや、別に遊び歩いてたわけちゃうけど!?


 むしろ被害者側やけどーーー!?)



 現実逃避のためか、

 なぜか一人の思考は関西弁で定着し始めていた。



 豪華絢爛な料理が運ばれ、

 音楽隊が演奏を始め、

 祝杯の音が大広間に響き渡る。



 逃げ場は一切ない。



 家成一人の人生は、

 ドラゴニア帝国の盛大な祝福のもと、

 なすすべなく“新婚生活”へ放り込まれていくのであった。




☆ここまで、読んでくださり、感謝いたします。


評価ポイント、ブックマーク登録 していただければ、励みになります。


今後もよろしくお願いします!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ