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第81話 三者三様

夜の静寂がまだ残る高層マンション。


 無機質な照明が、リビングのガラス机を冷たく照らしていた。


 ソファは3つ。


 そこに——三者三様の気配が向かい合う。


 エクソスーツのまま、永遠とわが脚を組み替える。


 その身じろぎひとつで、機械仕掛けの装甲が低く唸った。



 対して、みおとりりは落ち着かない。


 澪はソファの端で片膝を抱え、

 りりは革のツナギのまま背もたれに深く沈みながらも、落ち着きなく指を鳴らしている。



 空気がやけに薄い。


 呼吸一つで軋みそうなほどの緊張が場を縛っていた。


 沈黙を破ったのは澪だった。


「で、一人は……無事なんだよね?」

 声は冷静を装っていたが、目だけは逃げ場を探すように揺れる。



 永遠は唇を皮肉に歪めた。


「ええ。今は、“とあるところ”で快適に過ごしてるわ。」


「夜の国だろ。」

 りりが低く唸る。荒い口調とは裏腹に、目には焦りが滲んでいた。



 永遠は肩をすくめてみせる。


「さて、どうかしら?」



 その余裕が、澪とりりをさらに追い詰める。


 二人に比べ、永遠だけが異様に静かで、強気で、何より……自信に満ちていた。


 澪はとうとうソファの背にもたれ、深く息を吐く。


「……わかったよ。話は後回しにしない。

 もう本題に入ろうじゃないか。」



 永遠は細めた瞳で澪を見据える。


「そうね。じゃあひとつ——


 一人の“所有権”。私にも認めなさい。

 それで手打ちにするわ。」



 ピシッ。


 空気が割れた気がした。


 澪は苦々しげに眉を歪める。


「……だろうと思ったよ。」



 永遠は微笑むが、瞳だけは張り詰めていた。


「そうでもしないと、このまま彼は帰ってこないわよ?

 彼が生まれ変わるのを……のんびり待てるの?」


 りりが舌打ちする。


 永遠はさらに追い込むように、あっさりと言い放った。


「まあ、転生したところで……私が見つけてまた攫うけど。ふふ。」


 緊張の糸がさらに張る。


 澪とりりの表情が揃って固まった。



 やがて澪は両肘を膝に乗せ、深く考え込むように俯き——


 観念したように小さく息を吐いた。


「……うーん。仕方ないか〜。」

 肩を落としたりりは、しかしすぐに顔を上げる。


「でもね、マリッジライセンスは取り消さないよ。

 魔界では、私と一人は“夫婦”なんだから。」



 永遠は全く動じなかった。


「いいわよ。私は肩書になんか興味ないから。」



 澪の眉がピクリと跳ねる。

「認めたくないね、ほんと……」



 そして、じっと永遠を見返し——


 ひとつ、静かに言い放つ。


「でも。

 “誓約”は取り消さない。


 それに——゛約束゛を守るのは、僕だからね。」


 その瞬間、空気が変わった。


 睨み合う三者。


 張り詰めた緊張が、ひとつの火花のようにリビングで散った。


 永遠は、ソファの背にゆるく体を預けながら、

 鋭い眼差しでふたりを見渡した。



「好きにしなさい。


 でも——もう少ししたら“覚醒”するわよ。確実にね。

 そしたら、あなたたちのその誓約……無効になるんじゃない?」


 澪とりり、どちらの眉も一瞬ピクリと動いた。


 だが、揺れたのは本当に一瞬だけ。



 次に口を開いたのは澪だった。

「余計なお世話だよ、永遠。

 僕はね……大丈夫なのさ。」


 澪は片肘をソファに乗せ、気怠げに指先で髪をかきあげる。


「一人の性格から言って、僕を“捨てる”なんてできっこない。

むしろ——縋ってくるさ。」


 その自信は、愛というより確信。


 それも、彼を誰より知る者だけが持つ“揺るぎなさ”だった。



 りりも頬杖をつきながら、薄く笑った。


「同感だね。

あの記憶は“本物”だもの。


私への思いを断ち切れるようなら……

始めからあんなに執着はしてないよ。」


 その横顔はまるで賭けに勝つ未来をすでに見ているかのような、余裕たっぷりの笑みだった。



 そのふたりの表情を見て——


 永遠は、ゆっくりと目を細めた。

(ふん……甘いわね、どっちも。)



 胸の内でそっと笑う。


(あの時、彼が飲んだ赤いカプセル……

 あれの意味は“飲み込むこと”。


 本能で拒んだせいで、即時には戻らなかったけど……)



(でも、徐々に——確実に戻る。


 そしてその時、二つの記憶の狭間で……揺らぐ。苦しむ。

 そこで私は、手を差し伸べるのよ。)


 永遠の唇が、淡く妖しい曲線を描く。

(私こそが“救う者”。


 “本当の婚約者”として彼に選ばせるの。

 依存させるの。


 その瞬間まで……ふふ、待ってあげる。)



「じゃあ——」

 永遠は組んでいた脚を解き、前屈みになる。



「シェアの仕方だけど……」


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