第48話 パシフィック・リム(3)
「……そろそろ燃料限界です」
彩花の声が冷静に響く。
澪が歯噛みした。
「空中戦は燃料消費が桁違いだ……あれが《ブラッド・レイン》の唯一の弱点だな。」
指揮卓を叩き、次の命を下す。
「《ブラッド・レイン》、帰還せよ。燃料充填後、再出撃に備えろ!」
「了解。《ブラッド・レイン》帰還します!」
永遠の機神が旋回し、尾を引く光の中へと消える。
やがて、空が赤く染まっていった。
――ソウア山
火山の頂が鳴動した。
大地が呻き、空気が灼ける。
竜が――立ち上がる。
「グアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
その咆哮は、天を裂き、大地を軋ませ、雲を焼いた。
ニーズヘッグ。
黒き竜王。その身は岩のように重く、炎のように獰猛。
翼を広げた瞬間――
山全体が、影に飲まれた。
「……っ、でかすぎる……!」
アウレリアが息を呑む。
視界いっぱいに広がる黒い翼、
それは空そのものが裏返ったような、絶望の幕だった。
竜が首をひねり、喉奥に紅蓮の魔光を集める。
――同刻 司令室
「高エネルギー反応っ! ニーズヘッグの口腔部から――!!」
りりの声が響く。
澪が指揮卓を叩く。
「緊急回避だっ!」
「間に合いません!!」伊空の声が絶叫に近い。
「ブラッド・レインはまだか!?」
「エネルギー補充率10%、まだ再出撃は不可能です!」彩花が叫ぶ。
「くそっ……!!」
――ストライク・ハリケーン コックピット内
炎の奔流が、迫る。
真紅の奔流――逃げ場など、ない。
「やばいぞ、一人!」
「ブースター解除ッ!」
『背面ブースター、解除。エネルギーライン全開放。』
ドンッ!!
ストライク・ハリケーンの背面から、灼熱の光が噴き上がる。
機体が宙を蹴り、閃光の尾を引いて上昇――
炎の津波を、紙一重でかわした!
「今だッ、突っ込む!!」
「了解っ!!」
機体をひねりながら急降下。
鋼の巨体が、重力すら嘲笑う勢いで落ちる。
直撃――!
ニーズヘッグの胸に、轟音と共に叩きつけた。
黒き竜が、倒れる。
その巨体が地を揺らし、火山全体が悲鳴を上げた。
――決戦の咆哮
「スパイラル・アーム、起動!」
『スパイラル・アーム、起動。安全制御、解除。』
ストライク・ハリケーンの両腕が変形を始める。
内部の機構が螺旋状に展開し、光の粒子が軸を形成――
先端が、ドリル状に変わる!
「うおおおおおおおおおッ!!」
「喰らえぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ギュイイイイイイイイイイイイイン――!!
金属が悲鳴を上げ、ドリルが火花を撒き散らす。
☆ここまで、読んでくださり、感謝いたします。
評価ポイント、ブックマーク登録 していただければ、励みになります。
今後もよろしくお願いします!
 




