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閑話休題 打ち上げ(3)

 店内は、穏やかなざわめきと笑い声に満たされていた。


 スナック《魔女の大鍋》――テーブルの上には料理と酒、

 みんなが「終わった!」という解放感を思い思いに楽しんでいる。



「ママ、焼酎ロックで」

 グラスを掲げた伊空そらの声に



「はいよ〜、伊空ちゃん」とママがボトルを傾ける。


「私も、芋をロックで」

 セラが続き、透明の液体が氷に当たって軽やかな音を立てた。



「あっ、ママ! ビールおかわり!」

 ご機嫌な亜紀が笑顔で手を上げ、泡の立つジョッキを受け取ると、

 そのまま勢いよく叫んだ。

「はい! 次回作は、私が監督したい!!」



「えっ!? 意外〜! あんた映画とか見るの?」と澪。



「うん、まあ、そこそこね。創作活動って興味あるし。舞台経験もあるんだよ?」



「へぇ〜、じゃあどんなの撮るの? 恋愛ものとか?」と一人。



 亜紀はニヤリと笑ってジョッキを置いた。

「それもいいけど……怪獣映画を撮りたいんだ!!」



「亜紀さん、それって――ゴジラですか!?」

 彩花が箸を落としそうになる。



「いいね、それ! 面白そう!

『タイタンの戦い』とか、ああいう神話ベースでもいいかも!」

 永遠が身を乗り出す。


「神話でも巨大な竜を倒す話ってあるもんね」

 と伊空がうんうんと頷く。



「じゃあ、私も撮りた〜い!」

 永遠が勢いよく手を上げると、即座に澪が制した。


「だめだ。お前が撮るとアダルトビデオになるだろ」



「んなことしないって〜!」と笑う永遠。


「タランティーノみたいな映画とか?」と一人が茶化すと、

 永遠の瞳が一気に輝きを増した。



いいね! 『フロム・ダスク・ティル・ドーン』とか、

『ナチュラル・ボーン・キラーズ』みたいなピカレスク映画も最高じゃない!


 でも、初作品ならヒーローものだね。


 『ゴーストライダー』とか 『コンスタンティン』みたいなやつ! 

『MIB』みたいなガジェットは欠かせない!」

 夢中で語る永遠に、周囲は思わず笑い声をこぼした。




 そのとき、サンドイッチを摘んでいた一人が、ふと顔を上げた。

「……そういえば、誰か忘れてるような……あっ!!」

(サマエル:やめろ。余計なこと言うなよ。ややこしくなるから。それに――俺の前に“現れない”って、約束したろ)

(……でもいいのかな〜 けっこう扱いひどいですよ)

(……黙れ)



 一人は肩をすくめ、パンの切れ端を口に放り込んだ。


 店内は引き続き盛り上がり、

“映画談義”と“酔っ払いの悪ノリ”と“魔法的な空気”が渦を巻く。



 やがて、ママが低く笑った。

「いいわねぇ、若いって。……でも、今夜の会話、覚えておくといいわよ」



「えっ? どういう意味?」と永遠が首を傾げる。


 ママはグラスを拭きながら、意味深に微笑んだ。

「な〜んでもない。飲みなさい、飲みなさい」


 

 笑いと音楽、氷の音。

 外では小雨が降り出し、看板のネオンが滲んでいた。


 このとき交わされた何気ない言葉が、

 後に思いもよらぬ“波紋”を呼ぶことになる――




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