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第32話 特撮ショー(2)

――文化祭2日目、午前の部。



 屋外ステージの観客席は、すでに人で埋め尽くされていた。


 立ち見すら出るほどの熱気。昨日のステージがSNSで話題になり、

「すごいらしいぞ」「映画レベルだって!」――そんな噂が学内外を駆け巡ったのだ。


 照明が落ちる。ざわめきが静まり返る。


「次のステージは――特撮部と映画研究会による、特撮ショーです!!!」

 司会の声がマイクを通して響いた瞬間、

 観客席にどよめきが走る。



 ステージ中央に、赤黒い照明が点滅する。



 暗闇を裂くようにスモークが立ち上がり――


 そこに立つのは、

 血を浴びたような暗赤の装甲と、青く脈打つラインを纏った“悪魔”サマエル。


 そして、黒い全身タイツの怪人たちが背後にずらりと並ぶ。



 ――ドガンッ!!


 爆音が鳴り響き、閃光がステージを照らす。


 サマエルが観客席を指差し、低く響く声で言い放つ。


「ふっふふ……今から、ここに“魔法少女”が来る。

 お前たちは――人質だ! 逆らうなよ!!」



 あまりのリアルさに、客席がざわつく。


 幼い子どもたちは泣き出し、親が慌ててなだめる。


 それでもステージから目を離せない。



 そこへ――


「待ちなさいっ!! あなたの好きにはさせない!!」



 まるで光が降り注ぐように、ステージ脇から登場したのは――


 子どもの姿の“りり”。ステッキを構え、ポーズを取ると、

 効果音が轟き、まばゆい光に包まれた。



「変身っ!!」


 光が弾ける。次の瞬間、そこに立っていたのは――


 黒いドレスに身を包んだ“大人のりり”。


「スゲェ……!」「どうなってんだ、これ!」


「高校生のレベルじゃねぇ!」


 観客が一斉にざわめき立つ。


「ふっふ……マジカルリリ、よく来たな。

 だが――お前が変な真似をすると、ここにいるやつらがどうなるかな?」


 黒タイツの怪人たちが、観客席の間に散って構える。


「くっ、なんて卑怯な……!」


「ふははははは! 死ねいッ!!」



 ドガァン――!!



 爆発音とともに、空から閃光が走った。


 降り立ったのは、轟音を立てて舞い降りる“パワードスーツ”。


 噴煙がステージを包み、客席にまで熱が伝わる。



 その仮面がカシャンと開く。


 中から現れたのは――伊空だった。


「来てくれたのね!! 魔装少女・パワーイゾルデ!!」



「任せて!!」


 伊空が手をかざすと、光弾が次々と放たれ、怪人たちが吹っ飛ぶ。


 観客が息を呑む中、りりがステッキを構える。


「これで、あんただけよ!!」


「ふん、かかってこい!」

 サマエルが挑発するように片手を突き出し、指を軽く曲げる。



「いくわよ!!」


 ――瞬間、りりの姿が消える。


 目にも留まらぬ速さでサマエルの懐に飛び込み、パンチとキックを連打!



 しかし、それを余裕で受け流し、逆に一撃のカウンター!


「くっ!」



 伊空のスーツが反応し、光弾を放つ――


 が、サマエルは軽やかに回避。


 両手から放たれる闇色の光弾が、ステージ全体を照らし出す。


 あまりの迫力に、観客の誰も声を出せなかった。


 そして、サマエルの拳がりりを捉える。



 ドガァンッ!!


 りりの身体が弾かれ、ステージを突き抜け、校庭の方へと吹っ飛ぶ。


 砂埃が舞い、彼女はそのまま倒れ込む――動かない。


「うそ……!」「やりすぎだろ……!」

 観客の間に、息を呑むような沈黙。



 ステージ上の伊空が、叫ぶ。


「しまった、エネルギーが……!! もう少しで切れる!!

 みんなっ! みんなの声援が、私たちの力になるの!! お願い、声を――!!」



 観客の一人が、立ち上がった。


「がんばれぇぇぇーーー!!」


 続いて、

「負けないでーーー!!」


「立ってぇぇ!!」

 波のように声が広がり、屋外ステージが震えるほどの歓声になる。



 スピーカーから、電子音――ピピピピピピピ――!



「みんな、ありがとう!! 復活できたよ!!」

 りりが光の中から立ち上がる。


 ステージへと舞い戻り、ステッキを構えた。


「ふふ、ボロボロの貴様に私が倒せるか!」


「ふん――私たちは負けない! これでも喰らいなさい!!」

 りりのステッキの先に光が集まる。



「マジカルビーーーーーム!!!」


 閃光が放たれ、サマエルの身体を貫く。


 一瞬の静寂――そして、ステージが光に包まれた。



「ぐわあああああっ――――!!」

 光の中に飲み込まれ、サマエルの姿が掻き消える。



「終わったわね……私は戻るから。」

 伊空のパワードスーツが空へと飛び立ち、消えていく。



「みんな、ありがとう!! みんなの声援で勝てたよ!! じゃあ――またねっ!」

 りりが笑顔で手を振り、光に包まれて消える。



 ――静寂。



 次の瞬間、屋外ステージが割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。


 観客が総立ちになり、スタンディングオベーションが鳴り止まない。

 

 こうして、特撮部と映画研究会の合同ショーは――


 文化祭伝説級の“奇跡のステージ”として幕を閉じた。


☆ここまで、読んでくださり、感謝いたします。


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