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Q-File  作者: HIroyuki4727
8/21

第8話:「三人の誓い」

Q-Fileに触れたことで、高木 駿は死を回避した。


それは奇跡だった。

けれど――同時に、もう“戻れない”という意味でもあった。


「これが……お前らの見てた世界かよ」


屋上の柵に背を預けながら、駿がぽつりと呟いた。


「悪いな、巻き込んじまって」


陸が言うと、駿は笑った。


「バカ、感謝してんだよ。何も知らないまま死ぬより、よっぽどマシだろ」


彼は強かった。最初から。


そして、司もまた、真剣な顔で言う。


「駿、お前が来てくれて本当に助かった。これで、やっと“戦える”」


「……ああ、これからは、三人だ」


その日、俺たちは誓った。

誰かが死ぬ前に止める。

誰も犠牲にしない。

そして――この“書かれている世界”の正体を暴く。



翌朝。


Q-Fileには、新しい記述が追加されていた。


《次回観測対象:未選定》

《観測者、校内より一時離脱》

《沈黙期間突入》


「……一時的に、観測者がいなくなった?」


「たぶん、白木先生が学校から離れたからだな」


「好機かもしれない。いまのうちに、この本の“書き手”の正体に迫る」


「でも、どうやって?」


そのとき、駿が言った。


「なあ、お前ら。この本、変じゃないか?」


「変?」


「Q-Fileって、“書かれてる”じゃなくて、“浮かび上がってくる”んだよな。

つまりさ、どこかで“誰かが今、書いてる”ってことじゃね?」


その言葉に、背筋が凍る。


「……そうか。自動的に未来が記されてるわけじゃない。誰かが、今この瞬間も“入力してる”」


「じゃあ、そいつにたどり着ければ――」


「……止められる」


それは、これまでで最も具体的な“希望”だった。



その夜、陸の部屋でQ-Fileを広げたとき、突如ページが勝手に開かれた。


そこには、見覚えのないフォーマットで文字が並んでいた。


《Q-File B》

《現在、書き込み中:対象α/対象β/対象γ》

《ログ確認中:ファイルAへの干渉結果》

《観測維持者:不明》


「……“Q-File B”? ……もう1冊あるのかよ……!」


「つまり、俺たちが読んでたのは“ファイルA”で、**別の誰かが“ファイルB”を書いてる”**ってことか?」


「ってことは、俺たちが読んでるこの未来、**書いてるやつが“敵””じゃないのか?」


ざわり、と空気が変わる。


Q-Fileの中に、明らかに“別の存在”の手が加わっている。


しかもその“書き手”は――


「……もしかして、“敵もQ-Fileを持ってる”のか?」


ページの最後に、ひとつだけ赤文字で書かれた文が表示された。


《次に書かれるのは、お前だ》

第9話「書く者」

Q-Fileはひとつではなかった。

書かれた未来を読む者。

そして、未来を書き換える者。

その両者がぶつかるとき、“観測”は“選択”に変わる。

次に狙われるのは、三人の中の――誰?


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