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Q-File  作者: HIroyuki4727
7/14

第7話:「三人目」

《第4観測対象:高木 駿》


Q-Fileのページにその名前が浮かんだとき、俺たちは言葉を失った。


「……駿って、あの駿だよな?」


「間違いない。高木 駿――俺たちのクラスメイトで、一番信頼してるやつだ」


陸にとっては、死に戻りが始まる前からの友人。

司にとっても、部活の帰り道によく一緒に話す仲だ。


その名前が“観測対象”になったということは――


「……次に死ぬのは、駿だってことか?」


Q-Fileの次の行が、すぐに現れた。


《イベント:体育倉庫崩落事故》

《死亡フラグ発生:明日 午後4時16分》

《状態:未感染》


「……まだ、本には触れてない」


「ってことは、“死ぬけど、戻ってこられない”ってことか」


放っておけば、**一回きりの“本当の死”**が訪れる。


でも、触れさせれば――“感染”する。

俺たちと同じ呪いを背負わせることになる。


「……どうする?」


司が問う。

俺も、言葉に詰まった。


放っておくことはできない。

けど、これまでの地獄を知っているからこそ、“巻き込みたくない”という気持ちもあった。


それに――


「なあ司、思ったんだけど」


「ん?」


「“観測対象”って、俺たちがQ-Fileに気づく前は、全部“死んだら終わり”だったよな」


「……そうだな」


「ってことはさ、誰かがQ-Fileに書いてるんじゃないか?

ただの自動記録じゃなくて、“今この世界を観測してる何者か”が、“観測対象”を決めてる」


司が黙った。


「たぶん、奴らは――駿が俺たちと接触し始めたことに“警戒”したんだ。

だから、次は“排除”対象になった」


「……怖いくらい筋が通ってるな」


「本当に、あいつに触らせるのか? それで、これ以上“見える人間”を増やしていいのか?」


「……じゃあ、守れるか? あいつを事故から助けて、何も知らないまま安全に生かせるか?」


「……」


俺たちは答えを持たないまま、翌日を迎えた。



午後4時10分。体育倉庫裏。


Q-Fileによれば、崩落事故は午後4時16分。

6分後に、駿は命を落とすはずだ。


司とふたり、倉庫の影で待機していた。


遠くから、駿の姿が見える。


ジャージ姿で、荷物を取りに来たらしい。


「……いま、声をかければ避けられる」


「けど、声をかけて、あいつが逃げるとは限らない」


そのとき、Q-Fileが勝手にページをめくった。


《対象がQ-Fileを視認》

《接触確率上昇》

《フラグ転移準備中》


「……おい、司、見られてるぞ。鞄から見えてる」


「……くそっ!」


次の瞬間――


「おーい、陸ー! 司もいたのか!」


駿が笑顔で近づいてくる。


「それ、昨日お前らが話してた本? 見せてくれよ」


「駿、だめだ、それに――」


言い終わる前に、駿が手を伸ばし、Q-Fileに触れた。


その瞬間、空気が変わる。


風が止まり、時間が一瞬だけ鈍くなるような違和感。


司が、俺の肩を掴んだ。


「……やっちまった」


駿は不思議そうな顔で本をめくっていたが、すぐに手を止めた。


「これ……なんか、見覚えあるな。……いや、違う、初めてのはずなのに、読んだことがある気がする」


Q-Fileのページが、新しく動いた。


《第4観測対象、接触完了》

《死に戻り適応準備中》

《イベント:キャンセル済み》

《新ルート構築中》


「……助かった、のか?」


「でも、もうあいつも……俺たちと同じになった」



駿はまだ“死に戻り”していない。

でも、時間の問題だろう。


俺たちは、またひとり、共犯者を増やしてしまった。


第8話「三人の誓い」

死を知った三人は、それぞれの信念を胸に、次なる“観測者”に立ち向かう。

だがその裏で、“別のQ-File”が動き出していた。

“書く者”は、もう一人いる――


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