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Q-File  作者: HIroyuki4727
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第6話:「スパイの条件」

司が死を経験し、そして“戻ってきた”。

これでもう、俺はひとりじゃない。


それだけで、世界の見え方が少し変わった気がした。


でも、その世界は――

やっぱりまだ、俺たちを見ている。



「なあ、司。お前、あの日……本に触れる前に誰かに“妙なこと”言われたって言ってたよな」


「ん。音楽の中村先生。“最近、本に触れたか?”って、唐突に聞かれた」


「明らかに知ってる感じだった?」


「うん。目が、笑ってなかった」


Q-Fileの記録には、はっきり書かれていた。


《第3観測対象:藤原 司》

《観測者:校内配置済(教師枠)》

《次回、対象Bとの接触は不要》


「教師“枠”?……ってことは、監視者はローテーションされてるってことか?」


「担当制ってこと?」


「そう。おそらく、俺たちみたいな“本に触れた者”を追ってる組織があって、定期的に“担当監視員”を校内に配置してる。教師、警察官、保健の先生……そういう“信じやすい立場”の人間に化けて」


「だから、“毎回スパイが違う”ってわけか」


司が腕を組んで考える。


「じゃあさ、逆に言えば“スパイになる条件”ってのがあるはずだよな。

何かしらのルールがある。全員が観測者にはなれない」


「……Q-Fileに書かれてないかな。監視者の選定基準とか」


ページをめくっていく。

しばらく無記述の空白が続いたあと、唐突に文字が浮かび上がる。


《観測者の条件》

・対象と一定距離で日常接触が可能であること

・対象から“信頼”されやすい立場にあること

・疑われにくい“仮面”を日常的に使用していること


「……マジで書いてあった」


「信頼されやすくて、疑われにくくて、日常で接触してる……」


「……担任、じゃん」


ふたりの声が重なった。



3年B組担任――白木先生。


温厚で話しやすく、生徒の人気も高い。

怒ると怖いが、基本的には「理想の教育者」として慕われていた。


でも、あれだけの死に戻りを繰り返してきて、

白木先生だけは、一度も事故に巻き込まれなかった。


「……観測者なら、“巻き込まれたら困る側”だもんな」


「試してみるか?」


「なにを?」


「“あえて、気づいてるそぶり”を見せて、先生の反応を見る」



放課後。職員室。


司がわざとらしくQ-Fileをカバンから取り出し、ちらつかせながら白木先生の前を通る。

案の定、白木先生が声をかけてくる。


「藤原くん、それは……新しい教科書かな?」


「いや、ただの古本ですよ。ちょっと、変な本ですけど」


「……ふーん。気をつけてね。変な本って、心までおかしくしちゃうこともあるから」


それだけ言って、ニコリと笑う白木先生。


でも、目は――全く笑ってなかった。


「確定、かもな」


俺が呟くと、司が頷いた。



その夜。Q-Fileに新しいページが出現する。


《観測者:白木 孝一》

《次回、対象AおよびBとの接触は抑制方向に変更》

《リスク評価:B→中/A→高》


「……俺たち、警戒され始めてる」


「ってことは、逆に言えば“あっちにとっても脅威”になり始めてるってことだな」


「Q-Fileの秘密に近づいてるからか……」


その時、ページの下部に、見覚えのない名前が現れた。


《第4観測対象:高木 駿》


「……駿!?」

第7話「三人目」

次に名前が記されたのは、高木 駿。

彼はまだ何も知らない。

本に触れれば“感染”する。

触れなければ、死ぬ。

陸と司は、次なる選択を迫られる。


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