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Q-File  作者: HIroyuki4727
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第4話:「本は、俺を見ている」

《次に死ぬのは、“月島 陸”ではない》


その一文を見たとき、俺の心臓は凍りついた。


じゃあ、誰が死ぬんだ?

家族? クラスメイト? それとも――


答えを求めて、Q-Fileの次のページをめくる。

だが、そこには一言も書かれていなかった。


真っ白なページ。

ただ、空白がじっと俺を見返しているような気がして、ページを閉じる。



教室に戻ると、何気ない日常が広がっていた。

笑い声、寝ているやつ、スマホをいじってるやつ。


だけど、俺にはもうそのどれもが薄く見えていた。

誰かが“本当の顔”を隠しているかもしれない――そう思うだけで、すべてが不気味に見える。


「……もしかして、**Q-Fileは俺の行動を“見て書いてる”んじゃないか?」」


ふと、そんな考えがよぎった。



その夜、俺は試してみることにした。

Q-Fileを開いた状態で、**“本には書かれていない行動”**をとってみる。


家を出て、ランダムに選んだ道を歩く。

人の少ない裏道、知らない公園、誰にも見られていない場所を意識して移動する。


30分ほど歩き回ってから、立ち止まってQ-Fileを開いた。


真っ白だったページに――文字が浮かび上がっていた。


《月島 陸、自宅を出て、ランダムに行動。現在、午後9時42分。対象は監視範囲内にある》


「……!」


手が震える。

これ、俺の“行動ログ”だ。


しかも、“対象”って……まるで、誰かがこの記録を“第三者として書いてる”みたいじゃないか。


もう一度、ページをめくる。

新たな行が浮かび始める。


《月島 陸、異常行動の自覚あり。観測は継続》

《状況次第では、対象Bとの接触を許容》

《対象B:藤原 司》


「……司、って……」


俺の、幼馴染の名前。

あいつは、昔から俺の一番近くにいた。


なぜ司の名前がここに?

彼は何も知らないはずだ。まだQ-Fileにも触れていない。

そもそも、今のループではまだ話してすらいない。


なのに――なぜ“接触を許容”なんて言い回しになる?


“観測者”って誰だ?

“対象”って何を基準に決まるんだ?

この本は、ただの“未来予測”じゃない。

俺の行動、思考、すべてが**“記録”され、誰かに見られている”。**



翌朝。

いつも通りの時間、いつも通りの風景。


だけど、俺の中には昨日までとは違う焦りがあった。


(司に、近づいていいのか……?)


話したら、巻き込んでしまうかもしれない。

けど、放っておけば、彼が“次の犠牲者”になるかもしれない。


目の前を、司が歩いていくのが見えた。

イヤホンで音楽を聴きながら、無防備に廊下を渡っていく。


その瞬間、Q-Fileのページが勝手に開かれ、文字が浮かび上がった。


《接触フラグ成立。対象Bとの関係再構築を推奨》


まるで……この本が、俺の未来を誘導しているみたいに。


「……おい、本当に……お前は、誰なんだよ……!」


俺はQ-Fileを閉じた。

それでも、背中には確かに“視線”を感じていた。


「再会と感染」


Q-Fileに浮かび上がった名前――藤原 司。

それは、月島 陸が唯一信じられる幼馴染の名前だった。


「本当に、誰にも話しちゃいけないのか?」


迷いながらも、司にQ-Fileの存在を明かしてしまった陸。

しかしその瞬間、司は“見えてはいけないもの”を見てしまう。


本に触れたことで、“死に戻りの呪い”は彼にも伝染する。

そして始まる、二人目のループ適応者の誕生。


だがその裏で、新たな監視者の影が動き出していた――


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