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Q-File  作者: HIroyuki4727
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第1話:「Q-File」

たまたま時間を潰すために立ち寄った、見覚えのない古本屋。

そこで出会ったのは、都市伝説や陰謀論がびっしりと綴られた一冊の本――『Q-File』だった。


好奇心から読み進めると、本には“明日起きる事故”の予言が。


信じなかった俺は、そのとおりに死んだ。


そして気がつくと、事故の前日に戻っていた。


これは、死ぬたびに“陰謀”と“現実”が交差する世界で、

本の謎に迫りながら、生き延びる術を探す少年の物語。


本に触れた者は、見えてはいけない世界を見る。


そして――この呪いは、誰にでも伝染する。


俺の名前は――月島 つきしま・りく

ごく普通の高校二年生だ。

特別な才能があるわけでも、目立つ存在でもない。

ただ、どこにでもいるような学生。


強いて言えば、“ちょっとだけ空気を読むのが得意”なくらいかもしれない。

今日も学校が終わって、ただなんとなく、帰り道を外れて商店街をふらふら歩いていた。


ふと、今まで見たことのない古本屋の前で足を止める。


看板には、色あせた金文字で《Re:Leaf》と書かれている。

いや、書かれていた“気がする”と言ったほうが正確かもしれない。

通学路の途中に、こんな店あったか?


ドアには「営業中」とも「閉店」とも書かれていない。

けれど、吸い込まれるように俺はドアノブに手をかけた。


カラン……。

入った瞬間、風鈴のような音が鳴る。冷たい空気が肌に触れた。


中は思ったより広く、古びた棚に並ぶ本の匂いが鼻をくすぐる。

奥のカウンターに、白髪の老人が座っていた。


「ようこそ、迷い人。」


唐突にかけられた言葉に、思わず足を止める。


「……あの、この店……いつから?」


「ずっと昔からここにある。見える者には見えるし、見えない者には見えない。それだけですよ。」


意味がわからない。けれど、不思議とその言葉に嘘は感じなかった。


「何か、お探しですか?」


「いえ……ただ、時間を潰してただけです」


そう言って店内を見回すと、ひときわ埃をかぶった本が、目に留まった。

棚の端、まるで“待っていた”かのような位置に、それはあった。


黒いハードカバー。タイトルは銀文字で――『Q-File』。


手に取った瞬間、ひんやりとした感触が指先に伝わる。

表紙を開くと、そこにはびっしりと都市伝説や陰謀論の記述が並んでいた。


「ふーん、電波塔からの洗脳電波……」

「地下鉄の最深部には政府の実験施設……」

「学校の放送室が監視装置……」

どれも、くだらない噂話みたいな内容だ。そう思っていた――そのとき。


《明日午後5時12分 新町交差点 信号システム異常により車両多重衝突、死者1名》


俺の目が止まったのは、その一行だった。


新町交差点。

俺が明日、塾の帰りに通る予定の場所だ。


気味が悪くなり、本を棚に戻す。

しかし、なぜか手放せない感覚が残る。

何かに見られているような、あるいは……読まれているような。


「それは、選ばれた本ですよ」


不意に、店主が言った。


「……選ばれた?」


「持っていくといい。お代はいりません」


冗談のような話だが、俺はなぜか断れなかった。


帰り道、何度も本をカバンに入れ直した。

胸騒ぎが止まらなかった。


翌日。

塾の帰り。

新町交差点。

午後5時10分。


「……バカバカしい。都市伝説なんて――」


その瞬間だった。


信号が点滅し、クラクションが響き、光と音が弾けた。


視界が白く染まったあと、何もかもが――止まった。


……


……


目を覚ますと、そこはベッドの上だった。


カーテンの隙間から差し込む光がやけに眩しい。


カレンダーを見た。

今日の日付は――昨日だった。

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